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公益社団法人 日本騒音制御工学会

Q&A

「 吸音率 」の関連記事一覧

Q(1) 残響室を使って測定した吸音率と音響管を使って測定した吸音率が異なる結果になるのはなぜですか?
Q(2) 残響室法吸音率が1 を超えることがあるのはなぜですか。(Vol.40 No.6)
Vol.40 No.10

(音環境技術研究所 小白井敏明)

A-(1)

残響室吸音率測定は、音響管に比べて現実に近い測定条件という事がいえます。そして吸音材(吸音体)の種類や構造に制限がありません。

さて、空の残響室(体積の残響時間T(1)Sabineの残響式によって空の残響室法吸音率が計算されます。残響時間はランダムノイズ音の遮断によって1/3オクターブバンドノイズ音圧レベルが60dB減衰する時間です。

次に吸音材(または吸音体)を使用状態と同じ方法で設置し、吸音材の立体的面には音波が様々な角度から入射します。残響室法吸音率は(2)Eyringの残響公式によって求まります。は試料の面積です。


(2)で得られた残響室吸音率は、吸音材への入射音の角度がランダム入射であるために、吸音体の表面積の応答差、残響時間の誤差が生じて、吸音率の数値の再現性、安定性に影響します。

音響管で測定できる吸音材は一般的には多孔質材と呼ばれ、単層、積層状の多孔質材が測定対象となります。吸音材の外径は音響管内径と同じになります。また吸音率は吸音材が剛壁の前面に密着設置された場合の数値です。吸音材に平面音波を入射すると、直接反射波、透過波が剛壁面で全反射して入射面に透過する波、吸音材内部の繰返し反射波が発生して、吸音材表面で再現性の高い干渉波を形成し、(3)で吸音率が計算されます。

Rは反射係数で(4)で計算されます。は吸音材表面から見た音響インピーダンス、ρcは空気抵抗です。

    

垂直入射吸音率の誤差要因は吸音材の設置の安定性です。また、この吸音率は垂直入射条件であるため外径サイズ(大きさ、厚さ)で決まる最大値を示し、再現性、安定性共に優れています。

残響室と音響管で求めた吸音率の違いは、一例として、図-1の多孔質材(孔が連通)の吸音率で示すことができます。この多孔質材は、残響室内では入射角度、入射音速、透過角度、透過音速間でスネルの法則が成立して、音波は吸音材の法線軸と接近した狭い角度範囲で進行します。この吸音率は「ISO 10534付属書Finformative)の局所作用吸音材の拡散音吸音率の決定」の計算式(F.1)で計算されます。

図-1 厚さ40mmのウレタン吸音材の垂直入射吸音率と拡散音場吸音率の違い

A-(2)

残響室法吸音率が1を超える原因は、吸音材の立体面への音波の入反射が複雑で実面積より大きめになる効果によって残響時間が小さくなり、吸音率が1より大きくなるためです。図2に例を示します。

図-2 コンクリート面に密着した厚さ50mmのロックウールの残響室法吸音率

(a)密度40kg/m3,12.7Rayl/cm(b)密度100kg/m3,22Ray/cm

(室内音響学(市ヶ谷出版局)P173より)

 

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多孔質材料の吸音特性は,どの周波数帯域においても,背後空気層の厚さが大きいほど吸音率は高くなるのでしょうか。それとも,これは,特定の周波数において観察される現象なのでしょうか。また,吸音材表面から躯体までの厚さと吸音材背後の空気層の厚さとどちらを波長に対してどのような比率にすればよいでしょうか。(Vol.38 No.6)
Vol.38 No.6

(鹿島技研 古賀貴士)

一般に,吸音性能は,吸音材料単体の特性だけではなく,背後の空気層や剛壁の有無を含めた吸音機構として考える必要があります。多孔質材の場合も背後に剛壁があることが,吸音機構として効果的に機能するための前提条件となります。

多孔質材料の吸音は,空気の振動が細かい繊維などとの間での摩擦や粘性抵抗などによって主として熱エネルギーに変換される現象です。摩擦にしても粘性抵抗にしても,その効果は,空気の振動の速度に比例します。すなわち,音波の粒子速度の大きい位置に多孔質材料を設置することで,吸音率を大きくすることができます。したがって,吸音性能は,波長に応じて変化するので,必ずしも,背後空気層の厚さが大きければどの周波数帯域においても吸音率が高くなるという訳ではありません。

まず,吸音材料が薄い場合に波長λの音波が部材に垂直に入射する場合を考えてみましょう。入射波と反射波の関係から,粒子速度は,剛壁からλ/4のところで最大になり,λ/2のところで最小となります。このとき,音響管内の管端(剛壁)から一定の距離となる位置に布を取り付けると,図-1に示すように,部材表面からの距離(この場合は異は後空気層と等しい)が,λ/4,3λ/4,…となる周波数で吸音率が大きくなることが確かめられています。この場合,部材表面からの距離は,ほぼ背後空気層と等しいわけですが,粒子速度の大きくなるλ/4,3λ/4,…となる位置に抵抗となるよう材料が存在しているため吸音率が大きくなっているのです。

次に,布よりも厚みのある多孔質材の場合ですが,背後空気層のない,厚い部材が剛壁に密着している場合を考えてみましょう。このとき,厳密には部材内の伝搬速度は空気中とわずかに異なるもののλ/4,3λ/4,…となる位置で粒子速度が大きくなります。剛壁から材料表面よりλ/4より波長の短い(高い)周波数に対しては,材料内部に粒子速度が大きくなる周波数が存在することになるので,吸音材料の効果が得られることになります。また,部材内の流動抵抗の影響で,剛壁から部材表面までの距離が大きくなるにつれて,材料表面での粒子速度が小さくなる周波数(λ/2周辺など)での吸音率の低下が目立たなくなります。流動抵抗が十分に大きい材料の場合には,λ/4となる周波数までは単調増加で,それ以上の周波数ではほぼ一定の吸音率が得られる可能性があります。

最後に,多孔質材と剛壁の間に空気層を設けた場合です。空気層を設けることで,剛壁まで多孔質材料が存在する場合と比べて,内部の材料が減った分だけ流動抵抗が減少するので,λ/2周辺などでは吸音率が低下しにくくなることになります。多孔質自体が,流動抵抗を十分に発揮するだけの厚さがあれば,背後空気層を設けた場合でも背後空気層の部分にまで吸音材料を設置した場合に近い吸音率を発現させる可能性があります。

参考文献][1]木村翔:建築音響と騒音防止計画,彰国社

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最近アクティブノイズコントロール(ANC)という言葉をよく聞きますが、どのような仕組みで音が小さくなっているのでしょうか? また、これを使って道路や鉄道などの騒音は制御できないのでしょうか。(Vol.36 No.1)
                                     (会社員)

(東海大学 森下達哉)

騒音の能動制御あるいは Active Noise Control(ANC)については,1930 年代にアメリカ合衆国で特許申請された記録が残っています。特許申請時の図には,元々存在している騒音に対して,同振幅・逆位相の波形をもつ音波を重ね合わせることによって,騒音を消去するという基本的考え方が示されています。その後,1980 年代以降のディジタル信号処理技術の発展に伴って,数多くの ANC システムが考案されてきました。最近では,ノイズキャンセリングヘッドホンや自動車キャビンの静穏化などで,ANC の実用システムに接することができます。

ANC は,騒音源(Primary Noise Source)が作る音場と同一の音場を騒音源周囲に配置した二次的な音源(Secondary Noise Source)で作ることができるという原理に基づいています。したがって,空間全体を静かにしなければならいような場合には,静かにしようとしている音の周波数にもよりますが,比較的多くの音源が必要になるとされています。

一方,細長い管状の空間を伝わる音波については,管の断面寸法よりも波長が十分に長ければ,管の長さ方向への波の伝わり方だけを考えれば良いので,制御方法も簡単になります。そのため,ANCの研究が盛んになり始めた 1980 年代には,ダクト内を伝わる騒音を対象とした研究が盛んに行われていました。詳しくは文献 1)をご参照下さい。

ANC の制御方法としては,フィードフォワード(FF)制御とフィードバック(FB)制御に大別できます。説明を簡単にするため,ダクト内 ANC を例にとります。図−1(a)に示す FF 制御では,まず参照用センサで事前に騒音の情報を検出します。その騒音が音の重ね合わせ点に到達するまでに制御器で処理を行い二次音源から制御用音波を生成させ重ね合わせ点に到達させます。図−1(b)はブロック図と呼ばれますが,制御器を通る信号が信号 x と同様前向きに送られているため,FF 制御と呼ばれます。

一方図−2(a)に示す FB 制御では,参照用信号を使わずに,制御結果(誤差信号)を制御器で処理し,二次音源によって制御用音波を生成させます。図−2(b)のブロック図において,制御器を通る信号が信号 x と反対の後ろ向きに送られているため,FB 制御と呼ばれます。前述のノイズキャンセリングヘッドホンでは,基本的に FB 制御が用いられますが,FF と FB の両者を組み合わせた制御システムも存在します。

ANC の道路騒音や鉄道騒音への適用については,受動的デバイスとの協調動作という意味では,遮音壁と ANC の組み合わせがあります。このシステムは,遮音壁エッジ部の音場を適切に制御することで遮音壁の騒音抑制効果を向上させることを目的としたシステムです。国道 43 号線での試験運用の報告があります2)。

移動する音源に対する ANC の検討としては,広い空間における制御システムの構成法の検討3)や適応アルゴリズムの動作特性の検討4)などが行われています。当然海外でも研究例があります。原理から考えると,移動する音源に対して広い空間に渡って減音領域を生成することは大変難しい問題であることは間違いないでしょう。しかし,騒音制御のために大きな構造物を付加できない場合には,上記のような ANC システムが唯一の騒音対策手段になると考えられるため,移動音源に対する ANC のさらなる検討が望まれます。

  • 1 )西村他,アクティブノイズコントロール(コロナ社,東京都,2006).
  • 2 )ASE 試験導入に関わる騒音調査結果,兵庫県国道事務所,http://www.kkr.mlit.go.jp/hyogo/oshirase/2006/2006-10-30-01.html
  • 3 )大西他,日本音響学会誌,vol. 64, no. 3, pp. 131-141(2008).
  • 4 )A. Omoto et al, Acoust. Sci.&Tech., vol. 23, no. 2, pp.84-89 (2002).

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道路交通騒音対策効果を計算する際、高架裏面の吸音率等はどのように決めればよいのでしょうか。(Vol.27 No.3)
                               (建設コンサルタント)

(ゼット音響 北川 保)

特にこうしなければならない、というものはありません。ただ、参考にする吸音率の値としては平成7年の旧建設省告示第1860号における開発目標があります。これは「種々の道路箇所等において、新技術を応用した吸音板を設置することにより、反射音が沿道騒音に与える影響を大きく低減できる効果を有する」ことを開発目標に平均斜入射吸音率を評価項目として設定されています。

以下、道路箇所と平均斜入射吸音率の評価基準を列挙します。

高架道路の裏面 0.90以上
掘割壁面 0.85以上
トンネル内壁面 0.70以上
沿道建物の外壁面 0.75以上
橋脚 0.70以上
植栽枡の外壁面 0.70以上

技術目標の評価項目には平均斜入射吸音率の他、強度、安全性、重量、景観性、設置作業の容易性、維持管理の容易性があります。

なお、騒音対策等に具体的な製品があればその製品の吸音率データを用いる方が精度が高くなることはいうまでもありません。

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