日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Q&A

「 吸音材 」の関連記事一覧

高性能な吸音材料は、遮音性能も良いと考えてもよいのですか。例えば、グラスウールは吸音材として高い性能を示しますが、遮音材料としても有効な材料なのでしょうか。
                                 (設計事務所社員)

(財団法人小林理学研究所 杉江 聡)

このような質問は,吸音という言葉のイメージから出てくるものだと思います。吸音と聞くと,あたかも冷蔵庫の中にある脱臭剤のようなものをイメージしてしまい,吸音材がそこにあるだけで,周りの音を吸い取ってしまうと考えがちです。

しかし,そうではありません。まずは,吸音率と透過率の定義を示します。Fig. 1に示すように,透過率はPt/Piで,吸音率は1-(Pr/Pi)2です。すなわち,吸音率は入射エネルギーに対する「反射しなかったエネルギー」となり,仮に材料内部で音が減衰していなくても,音波が材料を透過して返って来なければ,吸音率が高いことになります。(注: 一般的には,材料背後に剛壁を設けた状態での吸音率が示されます。)一方,透過率は高くなります(音響透過損失は小さくなります)。

グラスウール等の多孔質材料の吸音メカニズムは,材料内を音波が透過する際に,材料を構成する繊維と空気の摩擦によって音のエネルギーが熱エネルギーに変換されて消散されるというものです。そのため,高性能な吸音材料は,効率よく音波を材料内に取り込むことで,通気性が高くなるように工夫されています。このことは逆に音波を透過しやすくしていることになり,高い吸音率をもつ材料は,高い遮音性能を発揮できないということになります。その違いがわかる一例をFig.2に示します1)。軽量コンクリートブロックは通気性があり吸音性をある程度示します。しかし,ブロックの表面に塗装を施し通気性を低減すると吸音性は失われる一方,遮音性能は高くなることがわかります。

単体では高い遮音性能がない吸音材料でも,他の材料と組み合わせると高い遮音性能を発揮する場合があります。例えば,二重壁の中空に吸音材料を充填するという方法があります。2枚のせっこうボード(9.5 mm厚)で製作した二重壁の中空層内に,グラスウールを挿入した例をFig.3に示します2)。吸音材料がない場合に比べ,吸音材料が入ることにより,中高音域で遮音性能が増加していることがわかります。また,吸音材料の厚さの増加とともに遮音性能も増加することもわかります。

吸音材料は,単体では大きな遮音性能を示しませんが,他の遮音材料と併用することにより,その遮音性能を向上させることができます。


Fig. 1 吸音率と透過率


Fig. 2 通気性の有無による遮音性能の違い


Fig. 3 二重壁への吸音材料の挿入効果

参考文献

  • 1)騒音制御工学会編: 騒音制御ハンドブック[資料編](技報堂, 2001)
  • 2)杉江 他: 中空二重壁の音響透過損失に与える吸音材料の影響-小試験体による検討-, 日本音響学会講演論文集CD-ROM, (2005.9)

閉じる

既存道路の騒音対策を遮音壁、吸音処理によって行おうとする場合、費用はどのくらいかかりますか。また費用以外に注意すべき点はどのようなことでしょうか。(Vol.27 No.4)
                               (建設コンサルタント)

(日東紡績 三神 貴)

このようなご質問に「マイナス1dBあたり単価」のようなものが簡単に提示できれば便利だろうなあといつも思います。しかし、伝播経路対策である遮音壁では、そのように表現することには無理があります。

また、一口に道路といっても、土工部・高架部・掘割部など様々な道路構造が存在する事や、遮音壁であれば高さや形状(柱のサイズ、「忍び返し」、R付きなど)でも費用は左右されます。更に近年では、遮音壁や吸音板も音響的な機能以外に、意匠性、耐久性、リサイクル性などに付加価値を求めるなど、製品も多様化してきており、費用の面でも様々です。

前置きが(言い訳が)長くなりましたが、これでは回答になりませんので、具体的に条件を絞ってお話ししてみます。

  • ・遮音壁「JH統一板*1)を用いて、遮音壁を高さ3mで土工部に施工した場合」を例にとると、大凡で¥30,000/㎡(材工共、以下全て)程度です。これよりも単価が上昇する要素としては、「塗装を施す」、「支柱を隠すなど意匠に工夫する」、「勾配がある」、「透光性にする」、「防汚仕上げを施す」、「工事が夜間に限られるなど作業効率が悪い」などが挙げられるでしょう。因みに透光性(反射性)にした場合、同様の施工条件で、¥60,000~70,000/㎡程度(枠つきポリカーボネート透光板)、¥65,000~75,000/㎡(枠なしアクリル透光板)程度です。また、近年遮音壁頂部に「新型遮音壁」を施工する例も増加してきております。凡そ¥59,000~62,000/m程度と考えられますが、こちらも様々な製品がありますので、各メーカーに問い合わせたほうがよいでしょう。
  • ・吸音処理トンネルの内壁や掘割などの反射面に、後から吸音処理を施す場合、吸音材としてグラスウールを用いた一般的なタイプでは、¥35,000~40,000/㎡程度と思われます。耐候性に優れたセラミック吸音板を用いた場合は、¥50,000~55,000/㎡程度です。また、比較的特殊な施工箇所ですが、近年対策事例の多い高架道路の裏面に対する吸音板は大凡¥45,000~55,000/㎡程度です。

これら全ては、誠に大雑把な概算です。計画に際しては、必ず各々見積もりをとる事をお勧め致します。

また、費用以外に注意すべき点との事ですが、

様々多くの点があると思います。材料メーカーの立場から申し上げられる事は限られていますが、既存構造ならではの点であれば、現状耐力の照査、供用中道路の工事規制の問題等が具体的に挙げられると思います。何事においても新品を作るより修理の方が難しいという事があると思いますが、手を加えるための、現状の調査・把握・診断の重要性に集約されるのではないでしょうか。

  • *1)竹本恒行,”日本道路公団における金属製統一型吸音壁,”音響技術vol.6 no.3 53-60(1977)など

閉じる

分野

キーワード

フリーワード

PAGE TOP