日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Q&A

「 健康被害 」の関連記事一覧

超低周波音の問題に当っては被害者側の意見を尊重した対処が必要であるとよく耳にしますが,その具体的な考え方について教えて下さい。(Vol.42No.1)
Vol.42 No.1

(株式会社S・Ⅰ・T 岡田健)

超低周波音による心身への生理的影響は人間の感性に関連するので個人差が大きく現れる。同じ音環境に住む家族でも被害を受けない人と、生理的影響が発症する人が共存するのが普通である。この様な問題を取り扱うにはまず「被害者側の意見を尊重して聞くことから始めるのが順序である。圧迫感、肩こり、眼球疲労、耳鳴り、様々な多症状が現れ、病院へ行くと症状が消え、帰宅すると再発すると言う状況になり、その原因が解明できない事が多い。しかし、被害者の意見を聞かず安易な思い込みや知識で、被害者を説得しようとする方法は決して問題の解決にはならない。騒音対策的発想は通用しない。

超低周波領域の音による心身への生理的影響は存在しないとの意見もあるが安易に否定することは注意すべきで、丁寧に原因を調べると原因解明ができることが多い。

2000年以降の対策には、不十分な調査・評価と不完全な対策技術で適切な処理が行われず被害者が苦しみ続けている事例を多く見る。

問題解決は、

1)原因究明、特に、心身上の症状と音・振動の関係、

2)発生メカニズムの究明、

3)音源機器の対策(発生機構の改修)の手順で行う。

超低周波音は単に周波数が低い音で常に、何処にでも存在しており、特別な音ではない。しかし、超低周波域の特異な発生音・音波が、心身に影響を発症させた事例、かつ、対策を行い改善した事例を1975年頃から多く報告してきた。最近は対策事例の報告が少なく、被害者の声は参照値で被害が否定され、対策に至らないと云う声を聞く。超低周波音は“聞こえないので心身への生理的、心理的影響は発生しない”と主張している根拠は何か? もし、これを”真”とするならば、ここで超低周波音による心身への影響を論ずることは無意味であろう。

1992年Colebatch と Halmagyi両生理学者は音刺激による頸筋,胸鎖乳突筋に 球形嚢―下前庭神経系に由来する筋電位反応を見つけ、鼓膜から入射した音波が蝸牛ばかりでなく、前庭にも伝搬し、前庭神経を通じて運動ニューロンへ信号を送り込んでいることを明らかにした。

〇 心身への被害に対する対策

現社会で騒がれている超低周波音問題は超低周波領域だけではなく、その倍音の数百Hz領域まで広がっており、更に、固体音による低音圧レベルの“気になる音”まで含めた問題となっている。本問題を診断する技術者は、まず、問題を仕分ける事が対策の第一歩である。そのため苦情は“煩い”ではなく、“身体の不調の訴え”である。機器設備から発生する“音、音波、振動の発生状態”、“伝搬特性”、“特徴のある音”(例えば、卓越成分)により異常が発生する場合、卓越成分が存在するが、卓越成分が存在しても異常が発生するとは限らない。“特異な変化”(例えばビート)、“特異な音の響き”そのものが体調不良の原因である。振動と音の伝搬特性に関わる固体音は心理的影響を誘引する原因となっている。発生音を音楽に例えると、楽譜に示されるがごとく、音程の外れた“卓越音を修正”し、“楽譜を編曲”すること、そして非常に小さな固体音“雑音”を防止する事が対策の基本となる。本問題を診断し、対策が出来るのは、実際に対策を行い、症状を治めた経験がある者でなければ、難いであろう。

この問題は食物アレルギー症状に似ている。ある特定の人には重篤な症状を発症させるが、隣の人には全く関係がない。外的物理刺激(音・振動)の存在によって生じる現象で、外的物理刺激が取り除かれれば、症状は消えるのが特徴である。

〇 超低周波音問題の調査・評価を行う前に

本問題は被害者の意見が重要であるが、特に参照値で評価されると音源機器側の協力が得られなくなり、その被害を目の前にしても認めて貰うのが非常に難しくなる。注意が必要である。

1は織物工場に隣接する住宅屋内外の典型的超低周波音問題発生のスペクトルである。25 Hz成分が住民に被害をもたらしていることは確認されている。参照値との比較では心身への影響の有無は判断できないとの評価であったが、参照値はあくまで参考であり、苦情者のことばや低周波音の発生状態を適切に判断して,被害者の意見を尊重した対処を継続することが重要と考える。

図1織機からの超低周波音スペクトル

閉じる

分野

キーワード

フリーワード

PAGE TOP