日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Q&A

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FFT 分析において,過渡信号の分析を行う場合と連続信号の分析を行う場合で信号に適用する窓関数が異なりますが,具体的にはどの窓関数を選定すればよいでしょうか。(Vol.40 No.3)
Vol.40 No.3

(ブリュエル・ケアー・ジャパン 木村正輝)

FFT分析では,ブロック長2nの時刻暦データを高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform; FFT)することにより周波数スペクトルを求めますが,FFTの原理上,分析対象の時刻暦データは周期性があることが前提となりますため,信号の性質にあわせて時刻暦データに窓関数を適用し,信号に周期性を持たせる必要があります。

一般的に使用される窓関数として,図-1に示すような矩形窓 (Rectangular Window,Uniform Windowなど) ,ハニング窓 (Hanning Window) ,カイザー・ベッセル窓 (Keiser-Bessel Window),フラット・トップ窓 (Flat-Top Window)のほか,フォース窓 (Force Window,Transient Windowなど),指数窓 (Exponential Window)などがあります。

まず,過渡信号を分析する場合についてですが,一般的にはFFTの1ブロック内に観測信号が収まりますので,この場合は矩形窓を適用します。もし,インパクトハンマ加振のときの加振力信号のような,ブロック長に対して観測される過渡信号が非常に短い場合は過渡信号が観測されない区間のノイズの影響が軽減するためにフォース窓を適用します。また,インパクトハンマ加振時やバーストノイズ加振時において残響時間が長いことが原因で応答信号がFFTの1ブロックに収まらない場合は,信号が1ブロック内に収まるよう指数窓を適用します。なお,過渡信号がFFTのブロック長よりも十分長い場合は連続信号とみなして分析します。

次に,連続信号を分析する場合ですが,周期性を持たない一般的な連続信号に対してはハニング窓を適用します。擬似ランダムノイズ,バーストランダムノイズなど,加振信号がFFTのブロック長で1周期となるような加振試験では矩形窓を適用します。また,回転機械の測定において回転数に起因した高調波が観測される場合はカイザー・ベッセル窓を,センサーの校正時のように特定周波数の測定をする場合はフラット・トップ窓を適用します。

なお,ハニング窓を適用して複数回の平均処理をする場合,ハニング窓によりブロック両端でエネルギ損失が生じるため,FFT分析時のブロック間で66.7%以上オーバーラップさせて分析する必要がある点に注意してください。

              図-1 代表的な窓関数

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騒音測定において,マイクロホンを延長ケーブルで延長した場合,どのくらいの誤差を生じるものでしょうか。また,延長ケーブルの長さにも関係するのでしょうか。(Vol.35 No.7)
                                    (大学院生)

((株)小野測器 営業本部 星靖洋)

ご質問は,ケーブルの長さと誤差に関するものですが,一概に「延長ケーブルで○○m 延ばしたときの計測誤差は○○dB となる」と言い切ることは出来ません。理由は,各々の騒音計の電子回路が異なるため,ケーブル長による影響の度合いに違いがでるためです。

騒音計は,マイクロホン,プリアンプ,本体(演算表示部)の 3 つで構成されています。一般的にマイクロホンとプリアンプは一体となっており,延長ケーブルはプリアンプと本体の間に入ります。延長ケーブルによる計測信号の減衰量は,プリアンプの駆動方式や出力回路,ケーブルの電気特性,本体の入力回路により決まります。そのため,メーカごと,もしくは騒音計の型式ごとに,ケーブルの長さによる誤差の大きさには違いがでます。同じ電気特性の延長ケーブルを使っても異なる機種では誤差に違いがでたり,同じ騒音計でも延長ケーブルの電気特性が異なれば延長できる長さに差が生じることになります。

計量法に適合した騒音計の場合,メーカが指定している延長ケーブルを使用し,かつ検定対象の最大長までであれば,測定誤差は規定している精度内に入っていると言えます。また,各騒音計の取扱説明書(技術解説部)やメーカが出している技術ノート等に,特性に関する資料が記載されている場合がありますので,参照するのが良いでしょう。指定以外の延長ケーブルを使用すると,同じ長さでも大きな誤差が生じる場合があるので注意が必要です。

上記の様に,延長ケーブルの長さと誤差の関係は各々の騒音計ごとに異なりますが,主な誤差の要因について簡単にご紹介します。

1.ケーブルの電気抵抗による減衰

ケーブルは通常銅線を使用しており,およそ 17nΩm の電気抵抗率を持っています。これによる減衰は全周波数帯域の信号に対して発生します。誤差の大きさは,騒音計本体の入力回路設計により変わり,また長さと誤差は正比例関係にはありません。

2.ケーブルの静電容量による高周波数の減衰

通常使用される騒音計の延長ケーブルは静電容量(電気を貯める能力)を持っており,プリアンプの出力能力と静電容量値の関係で高い周波数の信号ほど大きく減衰します。例えば,X[m]のケーブルを使用したときに許容できる誤差内に入る最大周波数をY[Hz]とすると,ケーブル長を 2 倍の 2X[m]に延ばすと最大周波数は半分の Y/2[Hz]に下がってしまいます。逆に,静電容量値を半分にすれば,最大周波数は 2 倍になります。

3.ケーブルの静電容量による大信号の制限

ケーブルの静電容量が大きいと,プリアンプの出力能力により高周波数の大きな信号も伝送しにくくなります。図−1 は,120 dB と 130 dB の音圧に相当する信号入力時のケーブルの影響を示した一例です。この例では比較的小さな静電容量値のケーブルを採用していますが,120 dB の音圧では影響を受けない長さでも,130 dB になると減衰するのが分かります。

騒音計は,その機器が使われる用途に合わせて,電子回路や延長ケーブルを選定してあります。精度良く計測するためにも,各社が指定している延長ケーブルを,規定された長さ以下で使用することをお勧めいたします。

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道路交通騒音の面的評価において、高架・盛土道路等の平面道路ではない区間について、「評価マニュアルⅡ」に示されている簡易な予測手法(建物列上方のパスを考慮しない場合)を用いて良いのでしょうか?
                                 (コンサルタント)

(中央復建コンサルタンツ株式会社 八川 圭司)

「評価マニュアルⅡ」1)においては、建物・建物群による減衰補正量に関する予測手法は、詳細調査手法として、建物群上方の回折音を考慮した一般式、基本調査手法として、建物群上方の回折音を無視した簡易式が示されています。いずれの手法とも、遮音壁のない平面道路を対象としたモデル式であり、モデル式の適用条件を勘案すると、高架・盛土道路等の平面道路ではない区間については、基本的には適用できません。

高架・盛土道路等の平面道路ではない区間を対象として、建物・建物群による減衰補正量を予測計算する方法については、上坂ら2)が示したモデル式が適用可能であり、伝播パスの考え方は、図-1に示すとおりです。

ここで、道路交通騒音の面的評価では、数千戸あるいは数万戸の家屋等を対象として、騒音に係る環境基準値の超過状況を把握・評価するわけですが、これについては、家屋の立地状況等の年次更新も念頭に置き、効率的な予測システムが不可欠であると考えられます。

図-1 市街地のモデル化と伝播パスの考え方

上記の上坂らによる高架・盛土道路等も適用対象としたモデル式は、予測過程が複雑であり、道路交通騒音の面的評価に適用した場合、予測条件の整理に膨大な作業量を要する可能性があるものと思われます。

一方、高架・盛土道路等といった音源位置が受音点位置より高い場合は、建物群上方からの回折音の影響が比較的大きくなることが想定されますので、これらを反映していない「評価マニュアルⅡ」に示されている手法を適用することは過小な予測となります。

上記要件を勘案すると、実務レベルでは、高架・盛土道路等の平面道路ではない区間については、実測値に基づく検証・補正を行い、予測精度を補完するような措置を講じた上で、「評価マニュアルⅡ」に示されている手法を適用しても構わないのではないかと思います。この場合、モデル式の拡大適用を行っているわけですから、評価結果と併せて、モデル式の適用条件等を明示しておく必要があるものと考えられます。

なお、「評価マニュアルⅡ」に示されているモデル式については、評価高さを1階レベルで代表させる場合(基本調査)では、建物群上方の回折音を無視した簡易式を適用しても良いものと思われますが、沿道建物高さに対応した評価を行う場合(詳細調査)では、建物群上方の回折音を無視することは適切ではないものと考えられるため、建物群上方の回折音を考慮した一般式を適用する必要があります。

参考文献

  • 1)環境庁:騒音に係る環境基準の評価マニュアル Ⅱ.地域評価編(道路に面する地域)(平成10年5月)p37
  • 2)上坂克己、大西博文、千葉 隆、高木興一:幹線道路に面した市街地における騒音レベルの計算方法、((社)日本音響学会騒音振動研究会資料N98-67(平成10年12月)

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団地内駐車場から発生する団地内、団地外への騒音問題はどのように考えるべきですか。平面駐車場の騒音問題の場合、土地所有者、管理会社あるいは車の所有者のうち、誰に対して指導を行うべきか、また、効果的な対策法はありますか。
                                   (自治体職員)

(神奈川県県央地区行政センター 堀江侑史)

団地内駐車場、平面駐車場についての扱いは、一般的にそれを管理している者に対して行政的な対応を行うこととなります。

管理者は、団地駐車場の場合は、団地の管理組合または管理会社などが考えられます。従って団地内からの苦情については、(管理会社が管理する場合であっても)管理組合自身で苦情に対応することになるでしょう。

団地外からの苦情については、管理組合または管理会社に対し、対策について対応することになります。平面駐車場についても同様に、管理者に対策を行うよう指導することになります。

駐車場は事業所と違って一般的に、開放的な場所であることから、効果的な対策法はなく、どこの自治体でも対応に苦慮しているところです。

駐車場の騒音問題は、団地に限らず深夜営業の店舗に付属する駐車場でも大きな社会問題となっています。神奈川県では一定規模以上の深夜営業物販店周辺の騒音問題を解決するための方策の一つとして、騒音暴露量を基に規制を行うための条例改正について検討を行っており、平成13年4月からこの方法による規制を導入する予定です。

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自動車騒音の防止に関して、排水性舗装が有効だと聞いておりますが、その原理、路面下への影響、空隙の詰まりなどに対するメンテナンスの問題についてお教え下さい。
                                      (匿名)

(国土交通省国土技術政策総合研究所 大西博文)

排水性舗装は空隙を有しており雨水が路面に溜まらないため、もともとは交通安全に資するものとして用いられていました。ところが、自動車走行騒音の低減効果があるということで近年では騒音対策としても用いられています。現在よく用いられている排水性舗装は、骨材粒径が5~13mmの6号砕石を使い、厚さが4~5cm、空隙率が約20%のものです。

排水性舗装は自動車騒音の中でも特にタイヤ路面騒音を低減させるもので、その騒音低減の原理には次の三つの要因が挙げられます。

  • (1)路面とタイヤのトレッドパターンの溝に挟まれた空気が、タイヤが転動するときに圧縮・膨張することにより生じるエアポンピング音の発生を排水性舗装の空隙が抑制する。
  • (2)路面と車体下面の間においてタイヤ路面騒音やエンジン騒音等が多重反射するときに、空隙がある排水性舗装の路面が吸音する。
  • (3)多孔質で吸音性のある排水性舗装面上を自動車走行騒音が伝搬するときに、超過減衰が生じる。

これらのうち、(1)の要因が最も大きな騒音低減効果をもっているとする報告があります。

前述のとおり排水性舗装は空隙があるため、雨水は空隙を伝って下りてきますが、排水性舗装では表層だけに空隙がありその下の基層はふつう密粒度アスファルト混合物でできておりほとんど空隙はないので、雨水は表層と基層の境界上を流れ車道の側方にある側溝に排水されます。従って、路面の下に浸透するわけではなく、路面下の地質に影響を及ぼすものではありません。

また、排水性舗装の空隙は塵埃等により詰まってくるため、その騒音低減効果は徐々に低下します。そこで、この空隙詰まりを回復するため排水性舗装洗浄機械が製作されていますが、現在空隙の効率的な維持管理のために洗浄の時期、頻度、洗浄方法等の洗浄機械の運用方法が検討されています。

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FFT分析ではアベレージングと時間窓関数に数タイプがありますが、 どのような音にどんなタイプを選択すればよいのでしょうか。
                                      (匿名)

((株)荏原総合研究所 丸田芳幸)

一般的なFFT分析器にはアベレージング(平均化)機能として、 「時間領域での平均」「周波数領域での平均」「MAX(またはピーク)平均」 「トリガ平均」「指数平均」があります。また、 時間窓関数としては「レクタンギュラー(方形)」「ハニング」 「ハミング」が一般的です。

まず窓関数に関して、例えば城戸著「FFTアナライザ活用マニュアル」 (日本プラントメンテナンス協会発行)から説明図を引用します。 正弦波及び第10高調波までを含む複合波信号を方形窓で分析すると、 信号の基本周期の整数倍が時間窓と等しければ正確に分析でき、 図1の(a)を得ます。しかし非整数倍の時間窓では(b)のように、 各成分の周波数とそのピーク値は(a)と等しいのですが、 本来存在しない周波数成分が大きな値として分析結果に現れます。 時間窓が基本周期の非整数倍であることが騒音分析の一般的な条件ですから、 ピーク成分以外に存在する成分もFFT分析で理解しようとすると、 方形窓では不十分になります。

そこで非整数倍の時間窓でも正確な分析を期待して、 信号を周期関数に近づけるハニング関数やハミング関数の時間窓を用います。 上記複合波信号をハニング窓とハミング窓で分析すると、各々(c)、 (d)となります。どちらもピーク周波数は方形窓による分析と同じですが、 ピーク成分の値は方形窓の結果より小さくなります。 ハニング窓とハミング窓の違いはピークの形状とピーク以外成分の値に現れます。 ピーク成分以外の成分を重視するならハニング窓が、 ピーク成分の尖鋭度を重視するならハミング窓が適しています。

しかし、これらの機能を使いこなすためには経験によるノウハウが必要です。 回答者は上記のような解説書に基づいて次のように使い分けています。

時系列波形を観察したり伝達関数や相関関数解析を行う場合は、 方形窓で時間領域平均かトリガ平均を用います。

スペクトル分析では周波数領域の平均を用いますが、 騒音波形は一般的に周期関数ではありませんので、 適当な時間窓を次のように選定しています。

  • 方形窓支配的な周波数成分が明確であって、そのピークレベルの正確さを希望する分析。設定した周波数範囲内で高周波数成分が多い騒音を分析する場合。
  • ハニング窓空調設備の音のように低周波音が支配的だが高周波数成分まで分析する場合。 また風切り音のようにピーク成分が不明で広帯域周波数の場合。
  • ハミング窓エンジン音のように複数のピーク成分が予想され、 スペクトルの裾の部分の形状よりもピークの値に精度を求める場合。

以上のような騒音では連続的な平均化を行いますが、 プレス機械のような間欠騒音ではトリガ平均で方形窓を、 また噴流音のように広帯域周波数音が支配的でその周波数の変化を 観察する場合にはハニング窓と指数平均を、 さらにある時間内の最大値成分を知りたい場合や瞬時現象の分析には MAX平均を用いています。

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防音壁による回折減衰に関して、 前川曲線と日本音響学会の道路交通騒音予測式のαd との違いについてその理由を教えて下さい。
                             (計量証明事業会社 社員)

((財)小林理学研究所 松本敏雄)

防音壁の回折減衰については、実験を基に作成された簡易図表から回折理論 に基づいてより精密な計算を行う方法まで、いろいろな条件に対して多くの計 算方法がこれまでに提案されています。

この中でも前川チャート(前川曲線)は、厳密な計算をしなくても回折効果 を容易に求められるという簡便性と特定の条件を除いて実験値によく合うとい う信頼性から、環境アセスメントを始め、種々の騒音防止設計に広く利用され ています。このチャートは前川が自由空間において、無指向性の点音源から放 射される音に対して厚みのない半無限に広がった障壁を想定して実験的に求め たもので、減音量を一本の直線で表現しています。このチャートの縦軸は減音 量で、障壁の有無による音圧レベルの差を表し、横軸はフレネル数という障壁 の有無による伝搬経路の差(行路差)を音の半波長で割った数で表されていま す。

一方、昭和50年に発表された日本音響学会の道路交通騒音予測式、いわゆる 音響学会式における回折補正値αdのチャートは、道路交通騒音に対する回折 による補正値を求めるための計算図表です。このチャートは、山下らが、自由 空間において、非干渉性の線音源から放射される音に対して厚みのない半無限 に広がった障壁を想定して実験的に求めた道路交通騒音に対する回折による補 正量です。このチャートの縦軸は回折補正量で、横軸は行路差です。

以上のように、前川チャートと音響学会式のαdのチャートは、ともに防音 壁の回折による減音量を求めるための計算図表ですが、前者は点音源を前提と して、入力には周波数と行路差が情報として必要となります。後者は道路交通 騒音を対象とした線音源を前提として、交通量と速度が予測式の適用範囲内の 場合において、行路差のみで回折による減音量を求めることができます。この ように、両者は対象とする音源の性状により使い分ける必要があります。

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