日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Q&A

「 ●か行 」の関連記事一覧

Q:騒音規制基準値の適用について下記のような場合どのように考えればよろしいでしょうか。考え方と事例等がありましたらご教示ください。
Q-1:公道を挟んで自社工場があります。公道の東側は夜間規制基準値55dB、西側は45dBです。この場合、被害者はいないのですが、工場の公道側境界(道路境界)で夫々、規制基準値を守らねばならないのでしょうか。
Q-2:規制基準が異なる境界騒音(例えばプラント設置エリアの規制基準値55dB、周辺地域45dBのような場合)、環境アセスメントの目標値はどのように考えれば良いでしょうか。
Q-3:ボイラ安全弁のように非常時しか動作しない機器発生音の敷地境界への影響は騒音規制法上、どのように考えれば良いのでしょうか。(Vol.43No.1)
Vol.43 No.1

(芝浦工業大学 門屋真希子)

A、A-1

 結論から申しますと,騒音規制法で規制される対象であったとしても,執行責任は地方自治体にあり,また条例による規制対象の可能性もあるので詳しくは市あるいは県にお問い合わせください。

一般論として考えますと,規制基準値が公道をはさんで違いがあるため,公道が用途地域の境界であり,工場西側の規制基準値が45 dB から考えても住居の多い地域であろうと推測できます。ご質問では公道面だけに着目されていますが,西側地域の公道に面さない境界には住居があると考えられるので,そのような場合は敷地境界で45 dB 以内に収める方が良いと思います。また現在規制基準を満たしていたとしても,今後設備の老朽化に伴う異音などにより苦情が発生する可能性がありますので注意が必要です。

一方,工場東側の用途地域は規制基準55 dB から考えて,工業地域など住居の多くない地域と推測できます。規制基準の遵守さえ確保できればよしとするなら,公道に面する敷地境界で55 dB 以下にする必要がありますが,公道の幅の分の距離減衰を考慮したとしても,基準値に10 dB 差がある西側の地域(工場西側地域の公道面以外の敷地境界に近い場所)から苦情が発生する可能性があります。騒音苦情は規制基準以下で発生している事例が多いので,工場東側の地域に関しても配慮されたほうが良いでしょう。

A-2

 環境影響評価は,法,条例によって手続きは多少異なりますが,事業による環境への影響を回避,低減,代償することを目的としています。このため事業者は基準値の遵守は当然の責務ですが,環境への負荷をどれだけ低減できるか検討することが求められます。

環境影響評価の手続き(法)では,事業による事業に関する情報(配慮書),事業により発生する環境負荷の程度を予想するための現況及び予測調査方法に関する情報(方法書),調査結果及び影響の程度,事後(評価書発行後)調査や対策内容(準備書)が提出されます。情報提供が行われる度に住民意見の聴取や市町村長や都道府県知事の意見,主務大臣の意見が示されます(環境大臣は配慮書と準備書のみ)。最終的には準備書の訂正や住民意見等を踏まえて環境影響評価書としてまとめられます。このとき環境影響の予測結果が基準以下であれば問題ないと解釈されることも多いのですが,手続きの中で住民等からの環境影響に対する意見が出されているならば,その意見に対して真摯に対応されることが望ましいでしょう。

環境影響評価の目標として規制基準値55 dB の遵守は当然のことですが,住民の意見や環境負荷への低減を十分検討する必要があります。

A-3

騒音規制法(実際の運用は当該市区及び都道府県)では,規制対象地域内にある特定設備を有する特定工場について,特定設備以外の騒音も含めて敷地境界における規制基準が定められています。安全弁のような不定期に稼働する設備から発生する騒音については,自治体によって考え方が異なる可能性があるので,当該市区及び都道府県にお問い合わせください。

なお,どのような判断においても突発的な騒音は,苦情になる可能性もありますので,付近住民に理解を促す説明を十分になされた方がよいでしょう。

また,特定施設を有しない法対象外施設(条例に該当するかもしれないが)についても,上記と同様に,住民に説明しておくほうが良いでしょう。

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超低周波音の問題に当っては被害者側の意見を尊重した対処が必要であるとよく耳にしますが,その具体的な考え方について教えて下さい。(Vol.42No.1)
Vol.42 No.1

(株式会社S・Ⅰ・T 岡田健)

超低周波音による心身への生理的影響は人間の感性に関連するので個人差が大きく現れる。同じ音環境に住む家族でも被害を受けない人と、生理的影響が発症する人が共存するのが普通である。この様な問題を取り扱うにはまず「被害者側の意見を尊重して聞くことから始めるのが順序である。圧迫感、肩こり、眼球疲労、耳鳴り、様々な多症状が現れ、病院へ行くと症状が消え、帰宅すると再発すると言う状況になり、その原因が解明できない事が多い。しかし、被害者の意見を聞かず安易な思い込みや知識で、被害者を説得しようとする方法は決して問題の解決にはならない。騒音対策的発想は通用しない。

超低周波領域の音による心身への生理的影響は存在しないとの意見もあるが安易に否定することは注意すべきで、丁寧に原因を調べると原因解明ができることが多い。

2000年以降の対策には、不十分な調査・評価と不完全な対策技術で適切な処理が行われず被害者が苦しみ続けている事例を多く見る。

問題解決は、

1)原因究明、特に、心身上の症状と音・振動の関係、

2)発生メカニズムの究明、

3)音源機器の対策(発生機構の改修)の手順で行う。

超低周波音は単に周波数が低い音で常に、何処にでも存在しており、特別な音ではない。しかし、超低周波域の特異な発生音・音波が、心身に影響を発症させた事例、かつ、対策を行い改善した事例を1975年頃から多く報告してきた。最近は対策事例の報告が少なく、被害者の声は参照値で被害が否定され、対策に至らないと云う声を聞く。超低周波音は“聞こえないので心身への生理的、心理的影響は発生しない”と主張している根拠は何か? もし、これを”真”とするならば、ここで超低周波音による心身への影響を論ずることは無意味であろう。

1992年Colebatch と Halmagyi両生理学者は音刺激による頸筋,胸鎖乳突筋に 球形嚢―下前庭神経系に由来する筋電位反応を見つけ、鼓膜から入射した音波が蝸牛ばかりでなく、前庭にも伝搬し、前庭神経を通じて運動ニューロンへ信号を送り込んでいることを明らかにした。

〇 心身への被害に対する対策

現社会で騒がれている超低周波音問題は超低周波領域だけではなく、その倍音の数百Hz領域まで広がっており、更に、固体音による低音圧レベルの“気になる音”まで含めた問題となっている。本問題を診断する技術者は、まず、問題を仕分ける事が対策の第一歩である。そのため苦情は“煩い”ではなく、“身体の不調の訴え”である。機器設備から発生する“音、音波、振動の発生状態”、“伝搬特性”、“特徴のある音”(例えば、卓越成分)により異常が発生する場合、卓越成分が存在するが、卓越成分が存在しても異常が発生するとは限らない。“特異な変化”(例えばビート)、“特異な音の響き”そのものが体調不良の原因である。振動と音の伝搬特性に関わる固体音は心理的影響を誘引する原因となっている。発生音を音楽に例えると、楽譜に示されるがごとく、音程の外れた“卓越音を修正”し、“楽譜を編曲”すること、そして非常に小さな固体音“雑音”を防止する事が対策の基本となる。本問題を診断し、対策が出来るのは、実際に対策を行い、症状を治めた経験がある者でなければ、難いであろう。

この問題は食物アレルギー症状に似ている。ある特定の人には重篤な症状を発症させるが、隣の人には全く関係がない。外的物理刺激(音・振動)の存在によって生じる現象で、外的物理刺激が取り除かれれば、症状は消えるのが特徴である。

〇 超低周波音問題の調査・評価を行う前に

本問題は被害者の意見が重要であるが、特に参照値で評価されると音源機器側の協力が得られなくなり、その被害を目の前にしても認めて貰うのが非常に難しくなる。注意が必要である。

1は織物工場に隣接する住宅屋内外の典型的超低周波音問題発生のスペクトルである。25 Hz成分が住民に被害をもたらしていることは確認されている。参照値との比較では心身への影響の有無は判断できないとの評価であったが、参照値はあくまで参考であり、苦情者のことばや低周波音の発生状態を適切に判断して,被害者の意見を尊重した対処を継続することが重要と考える。

図1織機からの超低周波音スペクトル

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航空機騒音のうち,エンジンテストなど地上から発生する騒音の低減方法,測定評価上の課題について教えてください。(Vol.42No.4)
Vol.42 No.4

(アイ・エヌ・シー・エンジニアリング 井上保雄)

航空機騒音に係る環境基準の改正(平成2541日 施行)により,航空機騒音の評価量がWECPNLからエネルギー積分を行うLdenに変わりました。また,これまで対象にしていた飛行騒音に地上音も含めた航空機関連騒音について総合的に評価することになりました。飛行騒音については空港毎に離発着時間の制限や騒音軽減の運行方式(飛行ルートや高度など)などについて検討,実施され,一定の効果を上げてきました。また,旅客機はその型式証明においてICAO1)の騒音基準に基づく騒音レベル以下であることが求められ,2017年以降(小型機は2020年)の新しい機体に要求される新基準Chapter143点の合計値がChapter3よりも,それぞれ10dB減,17dB減)に対応し着実に低騒音化が進んでいます。

 一方,地上騒音についても,CO2削減などとも相まって取組が進められています。

主な航空機関連の地上騒音は下記の通りです。

・着陸直後のリバース騒音(旧環境基準でも考慮)

・地上走行(タクシーイング)騒音

・補助動力装置(APU2)の稼働騒音

・エンジン試運転時(エンジンテスト)の騒音

・その他の騒音(車輌等の騒音は含みません)

以下に主な地上騒音である航空機あるいはエンジン試運転時の騒音低減施設について説明します。

1. 施設に要求される性能

性質上,音響性能は基より,施設内でエンジンが正常に運転できる空力性能など細かい設計上の配慮が必要になります。

1.1 音響性能

・試運転時に発生する騒音が所定の位置で所定の騒音レベルを満たす。

1.2 空力性能

・エンジン前方で所定の気流条件を満たす。

1.3 その他の配慮事項

・機体あるいはエンジンに音響疲労等の影響を及ぼ

さない。

・空力的Recirculation(エンジン排気ガスを再び

吸込むこと)がない。

・グランドボルテックス等の渦がエンジンに吸い込

まれない。

・排気ガス温度が構成材料の許容温度以下になる。

FODForeign Object Damage)を発生しない。

・室内負圧が所定圧力に納まる。

・構造的に十分な強度を有する等。

2. 騒音低減施設の種類

2.1 航空機地上試運転騒音低減施設

航空機の点検,整備の一環としてジェットエンジンを機体に装着した状態 で試運転する時の騒音低減施設です。これは下記の種類に大別できます。

(1) フェンス(防音壁)型

機体の廻りを防音壁で囲うもの

(2)ダクト&フェンス型

ジェットエンジンの排気音低減のため,排気口に吸音ダクトを設置,エンジンとダクト間から漏れる音を低減するため防音壁を併用するもの

(3)セミハンガ型

機体の後方(ジェットエンジン排気側)のみを防音建屋に入れるもの

(4)ハンガ(ハッシュハウス)型

機体全体を防音建屋に入れるもの

このような施設が無い空港では,エプロン等で試運転が行われることもあります。

2.2 ジェットエンジン運転用騒音低減施設

オーバーホールの後,エンジン単体で性能確認運転する時の騒音低減施設です。通常,エンジンテストセルともいわれます。

 なお,戦闘機用エンジンの場合,高温の排気ジェットを冷却するため,空冷型と水冷型に分けられます。

 地上音の測定・評価上の課題として,タクシーイングを除き准定常騒音とみなされ,時間区分をまたがる,単発騒音等との重畳など評価量に及ぼす影響の処理に手間が掛かる,場合によっては音源の特定が難しい点などが挙げられます。

注釈1) ICAO : 国際民間航空機関

注釈2) APU : 小型ガスタービン補助動力装置

【参考文献】

1) 環境省 航空機騒音測定・評価マニュアル 平成2411

2) 航空機・ジェットエンジン試運転用騒音低減施設 IHI技報

   Vol.50 No.4 (2010)

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吸音材料として用いられる多孔質材料の吸音メカニズムと使用上の注意点について教えてください。(Vol.42No.5)
Vol.42 No.5

(エム・ワイ・アクーステク 山口道征)

多孔質材料とは,細かい気孔が無数にあいている材料で,多孔質を構成する素材は硬い物から軟らかい物まで多岐にわたり,構造も連通性から非連通性のものまで種々の材料があり,吸音・遮音材料として用いることができる。

◇多孔質材料の吸音要素
多孔質材料中の吸音要素は音波が細孔中を伝搬する際の粘性減衰,言わば,材料中の空気伝搬路における減衰,多孔質構造体の動的弾性挙動による振動減衰,言わば,固体伝搬路における減衰,空気音と固体音の相互作用,他に熱伝導,熱交換などに起因する減衰により音波は熱として消散され消滅する。
◇吸音性を表す量
通常の多孔質構造体においては,構造体自体も弾性体であるため,吸音性を表す量としては,固体振動要素を加味する必要があるが,吸音のメカニズムが複雑になるため,ここでは,構造体は剛であると仮定し,連通性の空気伝搬路における減衰のみに着目し説明を行う。
多孔質材料に音波が入射するとその表面で音波は入射方向に反射する波と材料中に浸入する波に分かれる。材料中に浸入した音波は減衰しつつ伝搬していくもので,伝搬定数γ および特性インピーダンスZcが材料中での音波の挙動を規定する基礎量となる。ここでは以下,論理的・実証的に扱いやすい条件である平面音波が材料に垂直に入射する場合を想定し話を進めることとする。
γ およびZcは下式で表すことができる。
γ=α+j・β 

γ : 伝搬定数

α : 減衰定数(nepers/m)
(1neper=8.686dB)
β : 位相定数=ω/C(radian/m)

(ω : 角周波数(radian/s),C : 位相速度(m/s))

Zc=ρe・Ce 

Zc : 材料の特性インピーダンス(N・s/m3)

ρe : 実効(等価)複素密度(kg/m3)

Ce : 実効(等価)複素位相速度(m/s)

◇伝搬定数γ および特性インピーダンスZcの計測方法
γ, Zcは多孔質材料に関わる音波の挙動を規定する複素基礎量であるため,これらの未知量を正確に計測できれば,多孔質材料のエネルギー評価値(吸収率・吸音率・透過率・透過損失など)などを容易に求めることができる。その方法は音響管を用いた伝達関数法1)と称する計測方法である。
◇計測上の注意点2)
音響管で測定すべき材料は連通性の多孔質材料が基本となるが,骨格構造が剛でないグラスウールなどの繊維系材料や軟質ポリウレタンフォームのような一般の材料においては,測定結果の中に骨格構造の振動の影響が加味された結果となるため注意が必要となる。第一に注意すべき点は,試料を管内にセットした際の拘束条件の影響により生じる曲げ振動であり,これは不要共振として取り除くべきもので,測定結果に影響を与える。
二番目も振動の問題であり,これは不要振動ではないが大いに認識すべき点である。第一の場合と同様,剛でない骨格構造をもつ試料は,不要共振とは別に,嵩高構造体としての縦振動の影響が測定値に必然的に加味される。そのため,同種の試料であっても,試料厚,平面寸法の差異により縦弾性率が違うため,測定結果に違いが生じることがある。

 

参考文献

1 )H. Utsuno, T. Tanaka, T. Fujiwara : Transfer function
method for measuring characteristics impedance and
propagation constant of porous materials, J.A.S.A., vol.
86, pp. 637-643 (1989).
2 )山口道征,豊田政弘: 小特集「音響管による垂直入射
吸音率測定」にあたって,日本音響学会誌,vol. 68,
no. 9,pp. 461-462(2012).

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「特定工場に該当しない工場からの騒音や特定建設作業に該当しない建設作業からの騒音の苦情が増加しているとのことですが,規制の変更や特定施設や特定建設作業の追加を検討されていますでしょうか。もし,既に検討されているのであれば,今後の予定を教えて下さい。これらの工場や建設作業を規制の対象に加えることで行政指導がしやすくなると思います。また,このような場合にはどのように対応すればよろしいのでしょうか。」(地方公共団体職員)。(Vol.41 No.2)
Vol.41 No.2

(日本騒音制御工学会事務局 堀江侑史)

ご質問のように最近では,必ずしも騒音レベルが規制値を超えていない場合や騒音規制法の対象とならない施設や建設作業からの騒音についての苦情相談も増えています。このように法規制の対象となっていない工場等からの相談については,環境行政職員が発生源や苦情者への対応に苦慮している現状もあるようです。また環境省では現在,規制の変更や追加について具体的な作業は行われていないと聞いています。
この場合に対応する根拠の一つとして「公害紛争処理法」があります。「公害」は環境基本法により,事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる①大気の汚染,②水質の汚濁,③土壌の汚染,④騒音,⑤振動,⑥地盤の沈下及び⑦悪臭によって,人の健康又は生活環境に係る被害が生ずること,と定義されており,この①から⑦までの7種類は,“典型7 公害”と呼ばれています。これら典型7 公害に関係する紛争であれば,公害紛争処理法により発生源や苦情者に対して対応が可能と考えられます。また「相当範囲にわたる」については,ある程度の広がりがあれば,被害者が一人であっても対象となります。最近苦情が多くなってきた低周波音についても,騒音・振動に関係する事案としてとらえられる場合は,この制度の対象と考えられます。
苦情対応には,騒音,低周波音,振動などの測定が必要であり,先ずは当事者が自ら測定を行う事が求められますが,管轄の地方公共団体も,苦情が寄せられた場合には可能な限り騒音,低周波音,振動の測定を行う事が期待されています。事業活動に伴い機器から発生する継続的な騒音等についても同様に対応を行う必要があります。
建設工事等の際に発生する騒音や振動についての被害に伴う苦情は,その期間中に騒音や振動の測定を行う必要があります。一般的な建設工事等の際に発生する振動に伴う建物被害の場合には,一般的な建物の経年劣化によるものなのか,地震等による被害なのかを適切に評価/判断しなければならず,専門的な知識が必要となる事案も多々見られます。工事開始の前,工事後に双方で被害の状況を確認することが望ましいです。
以上のように騒音規制法(または振動規制法)で対応が難しい被害の苦情があった場合には,公害紛争処理法を適用して住民対応が可能であるので環境行政担当職員も,いろいろな面から住民の生活環境を守るための対応が求められています。

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騒音規制法第17 条に定められている,自動車騒音の測定に基づく要請及び意見と同法第18 条の常時監視の違いについて教えてください。(Vol.41 No.5)
Vol.41 No.5

(千葉県環境研究センター 石橋雅之)

両方とも自動車騒音の測定に係るものですが,以下のとおり測定目的や測定方法が異なっています。

1「自動車騒音の測定に基づく要請及び意見」

騒音規制法(以下,「法」という)第17条第1項では,市町村長が指定地域内で自動車騒音を測定した場合において,同地域内の自動車騒音が環境省令で定める限度(要請限度)を超えており,道路周辺の生活環境が著しく損なわれていると認めるときは,都道府県公安委員会に対して,道路交通法の規定による措置をとるよう要請するものとされています。

措置としては,信号機又は道路標識等の設置及び管理による自動車通行禁止等の交通規制,最高速度制限等があげられます1)。

また,法第17 条第3項では,市町村長が指定地域内で自動車騒音を測定し必要があると認めるときは,道路管理者又は関係行政機関の長に対して自動車騒音の減少のために必要な意見を述べることができるものとされています。トンネルの出入口,適切な舗装のない区間,高架道路,立体交差等,交通規制だけでは騒音対策が難しい箇所における騒音防止のために,道路構造・舗装の改良,遮音壁の設置等について意見を述べることができます1)。

要請限度の測定は,沿道住民から苦情が市町村に寄せられた場合に,その道路の自動車騒音が要請限度を超えているかを判断するために必要な測定です。測定においては,連続する7日間のうち当該自動車騒音の状況を代表すると認められる3日を選定します。なお,環境省水・大気環境局大気生活環境室の公表資料2)によると,騒音規制法の指定地域内における平成27年度の自動車騒音の苦情は293 件であり,そのうち66 件で騒音の測定が行われ,その結果要請限度を超えていたものは11 件でした。また,都道府県公安委員会に対する交通規制等の要請は0件,道路管理者に対する道路の構造等の意見陳述が1件となっています。

2「自動車騒音の常時監視」

国が,環境基準の達成状況を把握し,自動車単体規制の強化等の自動車騒音対策を進めるための基礎資料を得ることが必要であることから,法第18 条第1項で都道府県知事(市の区域は市長)は,自動車騒音の状況を常時監視しなければならないこととされています。

監視地域は,未供用の道路を除き,原則として2車線以上の車線を有する道路(市町村道は,特別区道を含むものとし,原則4車線以上)に面する住居等が存在する地域とされており,道路端から50メートルの範囲が評価対象です。道路端で等価騒音レベルを測定した結果を用いて,監視地域内の全ての住居の騒音レベルをシミュレーションし,環境基準を超過している戸数及び超過する割合を算出します。測定は平日の1日間(原則として連続24時間)行います。

なお.環境省水・大気環境局自動車環境対策課の公表資料3)によると,平成27年度は,全国837地方公共団体において環境基準の達成状況の評価が実施され,評価対象818 万5,300 戸の住居等(道路に面する地域の延長58,033km)のうち昼間・夜間のいずれか又は両方で環境基準を超過していたのは,52万2,700戸6.4%)であり,そのうち昼夜間とも環境基準を超過していたのは24 万7,900 戸(3.0%)となっています。

このように,法第17条が,自動車騒音が要請限度を超えた場合の改善措置の要請を規定しているのに対して,法第18 条は自動車騒音の面的評価を目的とした規定という違いがあります。

参考文献

1 )(社)日本騒音制御工学会編: 騒音規制の手引き[第2版](技報堂出版,2007),pp. 106-111.

2)環境省水・大気環境局大気生活環境室: 平成27 年度騒音規制法等施行状況調査の結果について(平成29年1月31日).

3)環境省水・大気環境局自動車環境対策課: 平成27 年度自動車交通騒音の状況(平成29年2月17日).

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「騒音・振動」について理解するための入門書としてどのようなものが出版されているでしょうか。(公立大学大学院生)(Vol.40 No.2)
Vol.40 No.2

(一般財団法人小林理学研究所 廣江正明)

「騒音・振動」 と言っても取り扱う問題は幅広い。現象の理解から始まり,計測機器や測定方法にその評価, 低減対策までを詳細に扱った書籍はすでに入門書の域を超えています。 そんなものを選んでも本棚を彩るだけで読まれないでしょう (実際, そんな本棚が私の横にもあります)。
という訳で, ここでは, ①基礎からしっかり知りたい方の為の本, ②広範囲を網羅したい方の為の本, ③特定範囲又は少し異なる視点で見たい方の為の本の3つに分け, それぞれに適した専門書や専門雑誌の記事等を紹介しましょう。
① 基礎からしっかり知りたい方の為の入門書:
「音と音波」(小橋豊著:裳華房)は学生時代に音響学の基礎を学んだ時の教科書で, 音の定義から,振動と音,放射・伝搬,音場,聴覚・音声,音楽・楽器,超音波まで幅広く書かれています。音や振動の方程式など少し難解な数式も出てきますが, 図表や写真も多く, 全体で200頁程度なので, 初めて読む入門書と してはお勧めです。
「振動・波動」(有山正孝著:裳華房)は,「音と音波」と同じ「基礎物理学選書」の一つですが,振動や音波に関する方程式が山のように出てくる上に,ボリュームも280頁で, かなり読み応えがあります。 やる気と時間のある方にはお勧めですが, 十分な余裕がない方や, 数式に拒否反応をお持ちの方は避けた方が無難かもしれません。

「音響工学原論(上巻・下巻)」(伊藤毅著:コロナ社)は, もともと新制大学で電気通信工学を専攻する学生のために書かれた音響工学の教科書で, (上巻)理論音響学と (下巻)応用音響学の二編に分かれています。入門書としてはかなり重い一冊(実際は二冊) ですが, 理論式で使用する量記号とその単位がきちんと整理されていて, 物理的な意味を理解する上でとても役立ちます (既に絶版ですが, 早大音響情報処理研究室HPに電子版が公開中です)。

② 広範囲を網羅したい方の為の入門書:
「騒音工学」(五十嵐寿一・山下充康共著:コロナ社は,専門外の方々が騒音の測定・評価,対策に従事されることを前提に,音響の概論,測定・影響と評価, 防止技術などについて,難解な数式を使うことなく,分かり易く説明した一冊です。すべての分野を網羅していませんが (主に交通騒音, 工場音),200頁程度で読破し易い分量になっています。

「環境・建築音響学」(前川純一・森本政之・阪上公博著:共立出版)が取り扱っている分野は,音と聴覚,騒音・振動の測定・評価,室内音響,吸音材料,騒音の屋外伝搬と防止,空気伝搬音・固体伝搬音等で, 大変幅広い。 初めて音響学に接する学生や技術者を対象とした入門書の役割も果たせるように考えられた一冊です。 ボリュームは250頁程度で少し多いように感じますが,分野数の割にコンパクトにまとめられています。

③ 特定範囲又は少し異なる視点から見たい方の為の入門書:

会誌「騒音制御」は(教科書ではありませんが),本学会が隔月で発刊している学会誌で, 毎回, 騒音・振動に係る5∼10編の特集記事が掲載されています。 同じ分野でも扱うテーマによって記事の内容が異なるのが特徴です。 例えば, 少し古い記事になりますが,環境振動の基礎知識(35巻2号,2011年4月発刊) は当該分野を理解する上では教科書以上に参考になると思います。他にも様々な特集がありますので,本学会HPの学会誌/出版物→学会誌「騒音制御」 の特集題目一覧で探してみて下さい。

「騒音の歴史」(マイク・ゴールドスミス著,泉流星・府川由美恵訳:東京書店)は一風変わった本で,一般的な技術書ではなく, 様々な種類の騒音についてまとめられた歴史書です。著者は英国の著名な研究機関であるNPL (National Physical Laboratory)で室長を務めた経験をもつ科学者で, 騒音をめぐる物語を紡ぐことに主眼を置いてこの本を執筆したそうです。 ですので, 理論的アプローチとは違った,まったく別の見方で騒音問題を眺めている,(ある意味…) マニア向けの一冊です。

「音響キーワードブック」 (日本音響学会編:コロナ社)は, 音のもつ様々な側面を表すキーワードを厳選し, 日本音響学会が編集した解説集で, 先月末に発行されたばかりの最新書籍です。 キーワードには「騒音・振動」分野以外のものも含まれますが,2頁単位でまとめられた各解説記事は分かり易く,内容も充実しています。現在, 取り組み中の 「騒音・振動」の研究に関連する最新情報や今後の課題などを知ることができるので, とても便利な一冊ではないでしょうか。

以上, ここに挙げた書籍は「騒音・振動」に係る入門書の一部に過ぎませんが, 参考にして頂ければ幸いです。

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Q-1:騒音の国際規格はどのようにして作られるのですか。
Q-2:TC43(音響)の国際標準化活動の枠組みを教えてください。
Q-3:日本はどのような体制でISO/TC43の審議に参加していますか?
Q-4:国際規格にはどんな種類がありますか?
Q-5:規格作成の手順を教えてください。(Vol.40 No.5)
Vol.40 No.5

(空港環境整備協会 山田一郎)

A-1

音響分野の国際規格は、国際標準化機構(ISO)の第43番目の専門委員会TC43(音響)が作成の責務を担い、音響現象の発生・伝搬・受音、それが人や人の生活環境に及ぼす影響のあらゆる側面の測定法を対象にして通則的、基盤的な国際規格を作成しています。ただし、音響測定器の電気音響特性の規格化はIEC、音声符号化等の通信放送関連の規格化はITUが行っています。

A-2

TC43には本体の他、3つの分科委員会SC1(騒音),SC2(建築音響),SC3(水中音響)があり、分かれて活動しています。本体は音響の基礎と聴覚特性に関する規格、SC1は様々な環境における様々な音源が発生する騒音の測定方法や音が人に及ぼす影響を評価する方法を含む騒音分野のあらゆる側面の規格、SC2は建築音響学、建築材料・建設の音響特性、建物内の音響伝搬を含む建築音響分野の規格、SC3は自然・生物・人為のすべての活動に伴って発生する水中の音を対象にその発生・伝搬・受音、および海底・海面・水生生物を含む水中環境による音の反射と散乱、さらに水中環境、人そして水中生活への水中音の影響に関わる水中音響分野の規格を作っています。TC43が作成した規格は200件に及び、およそ75件の新規作成または改訂に関わる審議が進行中です。活動中の作業項目の比率は、本体12%、SC1が50%、SC2が27%、SC3が11%です。TC43の活動主体は、各国の試験機関、研究所、大学、健康や安全に係る組織、コンサルタント、自動車・測定器のメーカーです。TC43の作業グループWGに参加する専門家は、約450名、欧州71%、北米14%、アジア8%です。TC43の規格は音の肯定的側面から否定的側面まで及び、貿易や仕事、製造を通じて経済と深く結びつき政府や製造業界、消費者、労働者、国民全体に影響します。

A-3

日本工業標準調査会(JISC)がISO加盟団体となりISO規格の審議に参加していますが、音響分野の専門性により、日本音響学会に審議団体を務めることが委ねられています。

A-4

ISOが作成する要素成果物(deliverable)は、ISO規格 IS、一般公開仕様 PAS、技術仕様 TS、技術報告 TR、ISOガイドおよび国際集会合意IWAの6種類あります。ISは共通かつ繰返し活用を前提に活動や活動結果に関する規則、指針、特性を提供するもので加盟国が合意承認した文書、PASは緊急を要する市場のニーズに答え、外部機関またはWG専門家の合意した事項を記した文書、TSは国際規格を目指すが支持が十分でないもの、合意に疑義あるもの、技術的に開発途上のもの、TRは収集したデータを有する文書、ガイドは規定ではない事項について方向付けやアドバイスを与えるものです。

A-5

TC43は、概ね一年半ごとに総会を開き、作成する規格や審議の進め方について討議し議決して活動しています。加盟国等から提案される新たな規格の作成または既存規格改訂の作業項目が総会で承認されると、主査と専門家で構成するWGが構築され、準備段階を経てWGおよびTCの規格案文書(作業グループ案WDおよび専門委員会案CD)が作られ、合意に達するまで作業が続けられます。その後、文書は国際規格案DISとなってISOの全加盟国の投票に掛けられ、議決権を有するPメンバーの2/3が賛成し、反対が全体の1/4以下ならISO規格として承認されます。加盟国の意見を考慮し、最終国際規格案FDISを作成し、投票にかける時もあります。承認されれば、ISOの中央事務局CSが最終チェックし、国際規格として出版します。標準的な開発期間は36カ月です。

 

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Q(1) 残響室を使って測定した吸音率と音響管を使って測定した吸音率が異なる結果になるのはなぜですか?
Q(2) 残響室法吸音率が1 を超えることがあるのはなぜですか。(Vol.40 No.6)
Vol.40 No.10

(音環境技術研究所 小白井敏明)

A-(1)

残響室吸音率測定は、音響管に比べて現実に近い測定条件という事がいえます。そして吸音材(吸音体)の種類や構造に制限がありません。

さて、空の残響室(体積の残響時間T(1)Sabineの残響式によって空の残響室法吸音率が計算されます。残響時間はランダムノイズ音の遮断によって1/3オクターブバンドノイズ音圧レベルが60dB減衰する時間です。

次に吸音材(または吸音体)を使用状態と同じ方法で設置し、吸音材の立体的面には音波が様々な角度から入射します。残響室法吸音率は(2)Eyringの残響公式によって求まります。は試料の面積です。


(2)で得られた残響室吸音率は、吸音材への入射音の角度がランダム入射であるために、吸音体の表面積の応答差、残響時間の誤差が生じて、吸音率の数値の再現性、安定性に影響します。

音響管で測定できる吸音材は一般的には多孔質材と呼ばれ、単層、積層状の多孔質材が測定対象となります。吸音材の外径は音響管内径と同じになります。また吸音率は吸音材が剛壁の前面に密着設置された場合の数値です。吸音材に平面音波を入射すると、直接反射波、透過波が剛壁面で全反射して入射面に透過する波、吸音材内部の繰返し反射波が発生して、吸音材表面で再現性の高い干渉波を形成し、(3)で吸音率が計算されます。

Rは反射係数で(4)で計算されます。は吸音材表面から見た音響インピーダンス、ρcは空気抵抗です。

    

垂直入射吸音率の誤差要因は吸音材の設置の安定性です。また、この吸音率は垂直入射条件であるため外径サイズ(大きさ、厚さ)で決まる最大値を示し、再現性、安定性共に優れています。

残響室と音響管で求めた吸音率の違いは、一例として、図-1の多孔質材(孔が連通)の吸音率で示すことができます。この多孔質材は、残響室内では入射角度、入射音速、透過角度、透過音速間でスネルの法則が成立して、音波は吸音材の法線軸と接近した狭い角度範囲で進行します。この吸音率は「ISO 10534付属書Finformative)の局所作用吸音材の拡散音吸音率の決定」の計算式(F.1)で計算されます。

図-1 厚さ40mmのウレタン吸音材の垂直入射吸音率と拡散音場吸音率の違い

A-(2)

残響室法吸音率が1を超える原因は、吸音材の立体面への音波の入反射が複雑で実面積より大きめになる効果によって残響時間が小さくなり、吸音率が1より大きくなるためです。図2に例を示します。

図-2 コンクリート面に密着した厚さ50mmのロックウールの残響室法吸音率

(a)密度40kg/m3,12.7Rayl/cm(b)密度100kg/m3,22Ray/cm

(室内音響学(市ヶ谷出版局)P173より)

 

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自動車騒音の予測計算はASJモデルが使われていますが、航空機騒音にも予測計算の方法があるのでしょうか。(Vol.39 No.2)
Vol.39 No.2

(成田空港振興協会 川瀬康彰)

航空機騒音の予測は, 1機の航空機が飛行した際の任意点における騒音レベルの変動を計算することでも可能ですが, 機種が同じでも目的地によって飛び方は異なりますし(目的地までの距離により搭載する燃料の量が異なるなど), またそれらが同じであっても飛行経路にばらつきが生じるため, 計算にそれらを考慮に入れると莫大な時間と手間がかかり現実的ではありません。

そこで,多くの計算モデルでは次に示すデータベース (基礎データ) を機種や飛行形態などの別に作成し, それらを用いて様々な飛行パターンによる航空機騒音の総暴露量を計算する方法が採られます。

・航空機1機ごとの飛行時に観測される最大騒音レベルまたは単発暴露騒音レベルと計算点までの距離との関係

・滑走路端からの航空機の進出距離に対する高度,速度,推力の関係

我が国では, その方法に基づいた航空機騒音予測計算モデルとして, 民間空港向けに国土交通省航空局が, 自衛隊基地向けに防衛省がそれぞれ開発したものがあります。 だたし, それらは行政的な施策の検討に用いられるのにとどまっており, プログラムやデータベースは公開されていないため誰もが使えるものにはなっていません。

世界に目を向ければ公表されている予測計算モデルはいくつかありますが,FAA(米国連邦航空局)が開発したINM(Integrated Noise Model)1)や米国空軍が開発した NOISEMAP2)が比較的容易に入手できます。そのうちINMは,1978年に公表されて以来バージョンアップを重ねているもので(最新版は2013年に出されたバージョン7.0d), 長きに渡り種々の改良が為されていることに加えて, 予測精度に関する調査例がいくつかあることもあり,世界で広く使われているようです。

航空機騒音の予測計算方法のガイドラインについては, 1980年代後半に相次いで発行・公開されたものがあります3)-5)。それらに基づいた予測計算モデルもいくつか開発されましたが, 一般に入手できるものは無いようです。INMや我が国の予測計算モデルはそれらのガイドラインが発行される前からありますが, ともに改訂を経た現在ではそれらと整合したものになっています。 なお, 基礎データなど予測計算に必要となるデータベースは公開されているものがあります6)。

1) https://www.faa.gov/about/office_org/headquarters_
offices/apl/research/models/inm_model/

2)http://wasmerconsulting.com/baseops.htm

3)“Recommended Method For Computing Noise Con-
tours Around Airports”,ICAO Circular205,Inter-
national Civil Aviation Organization(ICAO),1987.

4)“Aerospace Information Report1845:Procedure For
the Calculation of Airplane Noise in the Vicinity of
Airports”,SAE AIR1845,Society ofAutomotive Engi-
neers(SAE),1986.

5)“Standard Method of Computing Noise Contours
around Civil Airports”,ECAC.Doc.29,European Civil
Aviation Conference(ECAC),1986(3rd Edition2005).

6)http://www.aircraftnoisemodel.org/

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