日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Q&A

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住宅地の近傍で道路工事を行うのですが、役所から「住宅地での騒音予測を行ってもらいたい。環境基準値と比較して、それをオーバーするようならば対策を講じてもらいたい。」という要請がありました。詳細な工事計画は全くないのですが、騒音予測はどうすればよいのでしょうか。
                           (建設コンサルタント 技術者)

(中央復建コンサルタンツ 松井敏彦)

工事騒音は騒音規制法の規制基準で評価するものであり、評価対象に含まれていない環境基準と比較する事には問題があります。ここでは、住宅地内の環境変化を知る一つの目安として環境基準と比べることと考えます。

ご質問のようなケースの場合は、「ユニット」を用いた予測がよいと思います。ユニットという考え方は、ここ2,3年にでてきた新しい考え方で、例えば、掘削工事ならば、バックホウとダンプトラックが1ユニットであり、掘削・積込・運搬という一連の作業の中で発生する騒音を1つの音源として取り扱おうというものです。これを用いると、作業モードの設定とか、ダンプトラックの走行路設定とかいう面倒な作業設定は一切不要です。これらの値は、全国の様々の工事現場での実測結果に基づいて算出されたものです。

詳細は「道路環境影響評価の技術手法」(平成12年11月、財団法人道路環境研究所)もしくは、「ダム事業における環境影響評価の考え方」(平成12年3月、財団法人ダム水源地環境整備センター)に記載されています。表1は筆者による設定例を示しました。

表1 ユニット別音源パワーレベルLwの設定例

(単位デシベル)

工種 適用したユニット LW
橋梁下部工 中掘工法 104
路盤土工(切土) 土砂掘削 104
路盤土工(盛土) 盛土(路体・路床) 108
路盤土工(擁壁) 現場打擁壁 110
舗装工 アスファルト舗装工 101

予測にあたっては、建設機械の稼動範囲の中心に点音源を置いて、通常の減衰式に当てはめればよいのですが、この結果は建設機械稼動時における等価騒音レベルであり、環境基準値と比べる場合は、昼間16時間の等価騒音レベルLAeq,16hに変換する必要があります。作業時間として通常は8時間を入れますが、実際の作業内容を考慮して実稼動時間を入れてもよいと思います。

LAeqP1=LW-20log(r)-8

LAeq,16hLAeqP1+10log10(T/16)

LAeqP1 : 建設機械稼動時の等価騒音レベル(dB)

LW : 音源のパワーレベル(表1の値)

r : 建設機械から予測地点P1までの距離(m)

LAeq,16h : 昼間16時間の等価騒音レベル(dB)

T : 作業時間(時間)

建設機械の稼動範囲については、筆者は工事計画の詳細が未定の場合、ユニットを構成する建設機械の大きさ・作業範囲を考慮して、直径15m~30mの円内を作業範囲と考えて、その中心に点音源を置いて計算を行っています。

注意点としては、予測は工種ごとの建設機械を理解した上、適切にユニットを設定する必要があります。例えば、橋梁工事(下部工)なら、掘削を対象とするなら「土砂掘削」を、杭打ちならば、例えば「中掘工法」を使用し、コンクリート打設に注目して予測を行いたいならば、使用する建設機械(コンクリートポンプ車、コンクリートミキサー車)から「現場打擁壁工」を準用するという工夫が必要です。ユニットは、施工内容を十分理解さえしておれば、面倒な設定が不要、かつ、精度の高いモデルと言えます。

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道路交通騒音の低減のために遮音壁を設置したときに、事前に予測により求めた対策効果よりも遮音壁設置前後の測定値から求めた対策効果の方が小さいことが多いのですが、どのような理由が考えられるのでしょうか。また、予測精度を上げるための方法があれば、教えていただきたい。
                          (建設コンサルタント 技術者)

(ニューズ環境設計 福島昭則)

大きく分けて3つのことに注意する必要があります。まず第1点は対策効果の測定方法です。 通常は遮音壁を設置する前後において遮音壁背後で騒音測定を行い、 設置前後の測定値(LAeq)の差を遮音壁の挿入損失(効果)とすることが多いでしょう。 そのときに対象道路以外の騒音(例えば側道車等)の影響は除外する必要があります。 通常は測定中のLA95や最小値を暗騒音と考えてLAeqを補正します.このときに設定した 暗騒音の音源を確認しておく必要があります.交通量が多い道路ではLA95や最小値もそ の道路からの騒音で決まっている場合もあります.そのような場合には道路から離れた 地点に暗騒音把握用の測定点を設置する方法もあります.

第2点目は,設置前後の交通量等の違いを補正する必要があります. 調査時の交通量・大型車類混入率・走行速度等は調査毎に異なるわけですから、 発生騒音は遮音壁の設置前後で異なります。このため、遮音壁の設置区間の前後で遮音 壁設置の影響を受けず、かつ遮音壁設置区間と同じ交通状況と考えられる地点に測定点 (基準点)を配置し遮音壁背後での騒音測定と同期させて測定します。遮音壁設置前後 の基準点での測定値の差を発生騒音の違いと考え、遮音壁背後での測定値の差に補正して 効果を算出します。基準点が設置できない場合には、LAeqと小型車換算交通量 (ASJ Model 1998では大型車1台の発生騒音は小型車4.47台に相当しますので大型車1台を 小型車4.47台として換算します)との対応を設置前後で整理し、設置前後の回帰式の差 から対策効果を把握することもあります。 なお、この場合には回帰式の信頼区間をできるだけ小さくするために交通量が最小となる 時間と最大となる時間を含むような測定が必要になります.通常は毎正時から10分間の測定 を24回することが多いです。また、スピーカを用いた伝搬実験で対策効果を把握することもあります。 いずれにしても、遮音壁設置前後の発生騒音の違いをいかにキャンセルするかが重要です。 また、遮音壁の遮蔽効果は一般には高い周波数ほど大きいため,設置前後の周波数特性を比較し、 その差が物理的に意味のあるものかを検討するのも良いでしょう。

第3点目としては、現実の騒音伝搬や発生騒音がどの程度まで予測に反映されているかです。一例としてあげれば、

  • 建物や地面等での反射音はどのように考慮されているか。
  • 遮音壁の透過音は問題とならない程度に小さいと考えられるか。
  • 高架道路であれば高架構造物音を考慮しているか。

などが考えられます。透過音や高架構造物音の影響があれば、当然のことながら見かけの対策効果は小さくなります。問い合わせのなかで「予測により求めた対策効果よりも測定で求めた対策効果の方が小さいことが多い」とありますが、実際の伝搬経路等が予測において充分反映されているでしょうか。また「予測精度を上げるための方法」についてですが、対策箇所が具体的に決まっていれば、最低限その場所の現在(遮音壁設置前)の騒音レベルと予測値の対応を検討しておく必要があります。また遮音壁設置後とよく似た場所があれば、その場所で測定値と予測値の対応を整理し、予測に用いたモデルが妥当であるかを検討するのも良いと思います。マニュアル的には片付かない問題点が浮かび上がってくることもあるでしょう。もちろん何もかも予測にとり込めば良いというものではありませんし、またどう予測してよいのかわからないものもあるでしょう。しかし騒音に影響を与えそうな項目があれば、何らかの方法で検討すべきです。下手をすると「多額の対策費を講じたにも係わらず、ほとんど効果がなかった」なんてことにもなりかねません。  最後に、問い合わせのような経験をお持ちの方は多数いらっしゃると思います。成功例・失敗例共に大変貴重なデータです。遮音壁を設置するにあたり検討したこと、あるいは実際に設置したときの効果等を本工学会の技術発表会等で発表されることで、今後の遮音壁の設計に役立つはずです。ぜひ発表してください。

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アセス業務に携わっておりますが、ある現場で道路交通騒音・建設機械騒音についてスピーカ等を用いて再生する調査を計画しています。どうしたらよいでしょう。
                            (建設コンサルタント技術者)

ご質問のような調査での目的は二つ考えられます。一つは、事業を行うにあたり周辺住民に事前に道路交通騒音・建設機械騒音(以下、表記騒音という)を体感してもらうこと、もう一つは表記騒音が環境保全対象地点で何dBになるかを調査することと思われます。

前者の目的には、どのように標準的なデータを収録するかが問題になります。収録する地点とパワーレベルの設定方法です。建設機械の騒音レベル測定方法(日本建設機械化協会規格)やJIS Z 8733(一般の音場における音響パワーレベル測定方法)では多数の測定点を設けており、1点で代表する方法は記述しておりません。目的が表記騒音の体感ということですので、遮蔽されない地点で測定・録音したらどうでしょうか。録音したテープは時間的な問題等でそのまま使用できないでしょうから編集することになります。そのときアセスで設定したパワーレベルになるようスピーカのアンプを調整します。

他に、保全対象地点までの伝搬条件を計算し音源テープをイコライザで調整し聞いてもらう方法もあります。パソコンを使用すると、騒音対策時の騒音もシミュレートできます。この他にもいい方法があるかもしれません。

後者の目的にも、表記騒音の録音テープを再生させ調査することは可能です。しかし、レベルが変動するため、環境保全地点での騒音レベルを正確に測定することは暗騒音の影響もあり困難なことが多いように思われます。この場合には、音源にピンクノイズ等を使われるとよいでしょう。

先ず、スピーカからピンクノイズ等を発生させ、各測定点位置でバンド別(1/1または1/3オクターブバンド)の音圧レベルを測定し、基準点(例えば音源から1m)からの伝搬減衰量を求めます。このバンド別減衰量がわかれば対象とする任意の騒音源のパワースペクトルから基準点までの幾何減衰を含めたバンド別減衰量を差し引き、A特性補正を加えて求められる各バンド音圧レベルを全バンドについて合成することにより、伝搬音の騒音レベル(A特性オールパス値)を推定することができます。

(綜合技術C 三宅龍雄、ゼット音響 北川 保)

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「騒音に係る環境基準の評価マニュアル Ⅱ.地域評価編(道路に面する地域)」(平成12年4月環境庁)において単発騒音曝露レベルLAEから等価騒音レベルLAeq測定(推定)方法が記載されております。この方法を交通量が少なくかつ除外音が1観測時間中ほとんど占める場合にも当てはめることはできるでしょうか。
                                      (匿名)

(綜合技術C 三宅龍雄、ゼット音響 北川 保)

結論から申しますと、できます。

道路交通騒音予測モデルASJ Model 1998の基本的な考え方が、「道路上を1台の自動車が走行したときの予測地点における騒音の時刻変化(ユニットパターン)及びその時間積分値を求めることが基本になる。」1)と書かれているように時間積分値すなわち単発騒音曝露レベルLAEを基本とし、LAEより等価騒音レベルLAeqを計算するようになっています。

環境基準の評価マニュアルⅡの「3.4 観測時間と実測時間 (4)観測時間に区分して間欠的に測定を行う場合の実測時間」の項目では「交通量が少なく間欠的となる場合は、①実測時間を長くする、②連続測定とする、③残留騒音と基準時間帯内の車種別単発騒音曝露レベルを測定し、これと測定または推計より求めた基準時間帯交通量より基準時間帯のLAeqを算定する方法のいずれかによるものとする。」とあります。

測定方法は、同「3.6 騒音測定方法 (4)単発騒音曝露レベルから等価騒音レベルを算定する方法」の項目では「基準時間帯内の(中略)時間に、車種別に少なくとも10台以上観測する。(以下略)」等の詳細な規定があります。これに則り測定されるのがよいでしょう。

実際に現場でLAEからLAeqを推計した場合の精度については谷川ら2)が発表しています。夜間交通量が1,200~1,600台の道路で夜間のLAEを10台程度測定した場合には連続測定によるLAeqと比較すると1dB以内で推計されています。なお、この論文では西宮3)の考えを参考にL95を残留騒音としています。

参考文献

  • 1)日本音響学会道路交通騒音調査研究委員会報告、”道路交通騒音予測モデル”ASJ Model 1998″”、日本音響学会誌55巻4号(1999),p283
  • 2)谷川ら、”現地測定のLAEからLAeqへの推定精度について”、日本音響学会講演論文集(2000年9月),pp641-642
  • 3)西宮元、”任意の環境騒音におけるワイブル分布のあてはめによるLeqの推定”、日本音響学会誌35巻(1979),p563

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