日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Q&A

「 計測法 」の関連記事一覧

FFT 分析において,過渡信号の分析を行う場合と連続信号の分析を行う場合で信号に適用する窓関数が異なりますが,具体的にはどの窓関数を選定すればよいでしょうか。(Vol.40 No.3)
Vol.40 No.3

(ブリュエル・ケアー・ジャパン 木村正輝)

FFT分析では,ブロック長2nの時刻暦データを高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform; FFT)することにより周波数スペクトルを求めますが,FFTの原理上,分析対象の時刻暦データは周期性があることが前提となりますため,信号の性質にあわせて時刻暦データに窓関数を適用し,信号に周期性を持たせる必要があります。

一般的に使用される窓関数として,図-1に示すような矩形窓 (Rectangular Window,Uniform Windowなど) ,ハニング窓 (Hanning Window) ,カイザー・ベッセル窓 (Keiser-Bessel Window),フラット・トップ窓 (Flat-Top Window)のほか,フォース窓 (Force Window,Transient Windowなど),指数窓 (Exponential Window)などがあります。

まず,過渡信号を分析する場合についてですが,一般的にはFFTの1ブロック内に観測信号が収まりますので,この場合は矩形窓を適用します。もし,インパクトハンマ加振のときの加振力信号のような,ブロック長に対して観測される過渡信号が非常に短い場合は過渡信号が観測されない区間のノイズの影響が軽減するためにフォース窓を適用します。また,インパクトハンマ加振時やバーストノイズ加振時において残響時間が長いことが原因で応答信号がFFTの1ブロックに収まらない場合は,信号が1ブロック内に収まるよう指数窓を適用します。なお,過渡信号がFFTのブロック長よりも十分長い場合は連続信号とみなして分析します。

次に,連続信号を分析する場合ですが,周期性を持たない一般的な連続信号に対してはハニング窓を適用します。擬似ランダムノイズ,バーストランダムノイズなど,加振信号がFFTのブロック長で1周期となるような加振試験では矩形窓を適用します。また,回転機械の測定において回転数に起因した高調波が観測される場合はカイザー・ベッセル窓を,センサーの校正時のように特定周波数の測定をする場合はフラット・トップ窓を適用します。

なお,ハニング窓を適用して複数回の平均処理をする場合,ハニング窓によりブロック両端でエネルギ損失が生じるため,FFT分析時のブロック間で66.7%以上オーバーラップさせて分析する必要がある点に注意してください。

              図-1 代表的な窓関数

閉じる

Q(1) 残響室を使って測定した吸音率と音響管を使って測定した吸音率が異なる結果になるのはなぜですか?
Q(2) 残響室法吸音率が1 を超えることがあるのはなぜですか。(Vol.40 No.6)
Vol.40 No.10

(音環境技術研究所 小白井敏明)

A-(1)

残響室吸音率測定は、音響管に比べて現実に近い測定条件という事がいえます。そして吸音材(吸音体)の種類や構造に制限がありません。

さて、空の残響室(体積の残響時間T(1)Sabineの残響式によって空の残響室法吸音率が計算されます。残響時間はランダムノイズ音の遮断によって1/3オクターブバンドノイズ音圧レベルが60dB減衰する時間です。

次に吸音材(または吸音体)を使用状態と同じ方法で設置し、吸音材の立体的面には音波が様々な角度から入射します。残響室法吸音率は(2)Eyringの残響公式によって求まります。は試料の面積です。


(2)で得られた残響室吸音率は、吸音材への入射音の角度がランダム入射であるために、吸音体の表面積の応答差、残響時間の誤差が生じて、吸音率の数値の再現性、安定性に影響します。

音響管で測定できる吸音材は一般的には多孔質材と呼ばれ、単層、積層状の多孔質材が測定対象となります。吸音材の外径は音響管内径と同じになります。また吸音率は吸音材が剛壁の前面に密着設置された場合の数値です。吸音材に平面音波を入射すると、直接反射波、透過波が剛壁面で全反射して入射面に透過する波、吸音材内部の繰返し反射波が発生して、吸音材表面で再現性の高い干渉波を形成し、(3)で吸音率が計算されます。

Rは反射係数で(4)で計算されます。は吸音材表面から見た音響インピーダンス、ρcは空気抵抗です。

    

垂直入射吸音率の誤差要因は吸音材の設置の安定性です。また、この吸音率は垂直入射条件であるため外径サイズ(大きさ、厚さ)で決まる最大値を示し、再現性、安定性共に優れています。

残響室と音響管で求めた吸音率の違いは、一例として、図-1の多孔質材(孔が連通)の吸音率で示すことができます。この多孔質材は、残響室内では入射角度、入射音速、透過角度、透過音速間でスネルの法則が成立して、音波は吸音材の法線軸と接近した狭い角度範囲で進行します。この吸音率は「ISO 10534付属書Finformative)の局所作用吸音材の拡散音吸音率の決定」の計算式(F.1)で計算されます。

図-1 厚さ40mmのウレタン吸音材の垂直入射吸音率と拡散音場吸音率の違い

A-(2)

残響室法吸音率が1を超える原因は、吸音材の立体面への音波の入反射が複雑で実面積より大きめになる効果によって残響時間が小さくなり、吸音率が1より大きくなるためです。図2に例を示します。

図-2 コンクリート面に密着した厚さ50mmのロックウールの残響室法吸音率

(a)密度40kg/m3,12.7Rayl/cm(b)密度100kg/m3,22Ray/cm

(室内音響学(市ヶ谷出版局)P173より)

 

閉じる

複数のマイクロホンを利用して音の到来方向がわかる技術があると聞きましたが、どのような原理に基づいて実現しているのでしょうか。また、実際の適用例があれば教えてください。(Vol.39 No.1)
Vol.39 No.1

(リオン株式会社 廻田恵司)

間隔(d)を持つ一対のマイクロホンを地面に垂直に設置した時,飛行する航空機が発する音波が仰角θ でマイクロホンに進入する場合(図−1),その音波が2 個のマイクロホン(M1, M2)に到達する時間差をτ とすれば,仰角θと時間差τ は音速をC と
して以下の式が成り立ちます。
この時,マイクロホンM1, M2 に入ってくる音圧波形には時間差τ に相当する差を持ってその音源による信号が含まれています。この二つの信号の相互相関を算出すると,時間差τ に相当する位置においてその音源に由来する極大値が現れます。この極大値の位置から時間差τ を求め,⑴式を用いると仰角θを得ることが出来ます。また,3 軸のマイクロホンペアを用いると3 次元での方向ベクトルを求めることができます。3 軸を利用して音速に影響されない仰角を得ることも出来ます。一定時間ごとに音圧波形を区切り相互相関を求め算出することで音の到来方向の時間変化を得ることが可能となります。3 軸を用いて音の到来方向を求めると,図−2 に示すように上空を通過する航空機の音の到来方向の時間変化を単位球面上にプロットした図を得ることも出来ます。

実際の適用例として,リオン製環境騒音観測装置NA-36, NA37 に実装されています。本機は航空機騒音の自動監視に音の到来方向を用いて,上方で移動する音源が存在するか否かを判定しています。

図 1 音の到来方向とマイクロホンM1,M2

          図 2 音の到来方向の時間変化

 

閉じる

騒音の測定には騒音計の周波数重み付け特性A 特性を用いることとなっていますが,他の周波数重み付け特性としてB∼D 特性が定義されていると聞きました。これらの周波数重み付け特性は何に用いられるものなのでしょうか。(Vol.39 No.5)
Vol.39 No.5

(千葉工業大学 矢野博夫)

騒音計の周波数重み付け特性は,現在では音響の測定機器のなかで音圧(レベル)や騒音レベルを測定する機器のJIS規格:JIS C1509(IEC61672)に規定されている.この規定にはA, C, Zの各特性があるが,かつてはこれらの特性の他にB, Dの特性があった.ここでは,まずこれらの特性がいつ頃提案され,規格類に採用されたのかについて過去の資料を調べてみた.その結果を表1に示す.また,ABCDの各特性の1/3oct.に毎の周波数におけるレスポンスを表2に示す.この表はANSI S1.42-1986より抜粋したものであるが,これらの特性は1次および2次のローパス,ハイパスフィルターの組合せで実現する事が出来る.

まず,最初に古くは1936年のアメリカ音響学会で検討された規格(ASA規格Z24.3-1936:暫定規格)でAおよびB特性が提案され,その後1944年にASA Z24.3-3C特性と共に規格化された.ここで表中のC(Z)は現在のC特性とは異なり,weightingをしない平坦な特性(F特性,Lin.特性などと呼ばれていた現在のZ特性)であったことから筆者が勝手にネーミングした表記である.このときのA特性はフレッチャー・マンソンの等ラウドネス曲線の40dBの曲線を,B特性は70dBの曲線の逆特性であるとされている.C特性については,当初は平坦特性として音圧レベルを測定するための特性/機器の試験にも用いられる特性として規定され,そのうちに等ラウドネス曲線のほぼ100dBの逆特性として用いられているようである.

A, B, C特性の違いはラウドネス曲線の違いを反映したものであるためその使用方法は,まずB特性で測定して60dB以下の場合にはA特性,85dB以上の場合にはC特性で測定するという煩雑な方法であった.このようにして測定した結果に使用した特性を付記して40dB(A)65dB(B)のような表記をしていた.その後,各種騒音のスペクトルから音の大きさのレベル(Stevensの方法)と各種の補正特性を比較してA特性音圧レベルが各種の騒音について複合音としての音の大きさと最も相関のよいことが検証された4ことに基づいてB特性は規格から削除され,C特性は音圧レベルの測定に用いられるようになった.3もちろんZ特性を持つ場合には,音圧レベル測定や周波数分析を行うには(現在の)C特性よりも優れていることは言うまでもない.

 D特性は,金属性の高音を含むジェット騒音が問題になった時,Kryterの提案によってPNdBという“Annoyance”を表す尺度が提案され,航空機騒音の評価に使用されていた.国内規格には制定されていないため国産の騒音計でD特性を備えた製品はなく,1960年代から1970年代のB&K社精密騒音計2204型~2209型に内蔵されていたと記憶している.(写真)

現在では,大半の法律・基準等でA特性を用いることになっているが,航空機騒音や砲撃音に対する教育施設等の防音助成の判定指標や,演習場周辺の民家の防音や移転の判定指標にはC特性による測定値が用いられている.

 参考文献:

(1) A. Marsh, 騒音計の歴史:1928年から2012年まで,中村千都世,山田一郎訳,航空環境研究 no.16p.59-752012

(2) H. Fletcher and W. A. Munson, :J.A.S.A., vol.5, pp.82-108, 1933.10

(3) 五十嵐寿一,小林理研ニュース, No.77 (2002)

(4) 守田栄,日本音響学会誌,vol.17, no.1, p.38-43 (1961)

(5) 守田栄,日本音響学会誌,vol.4, no.8, p.1-6 (1943)

(6) 広川愿二,日本音響学会誌,vol.8, no.3, p.117-122 (1952)

(7) 守田栄,日本音響学会誌,vol.13, no.3, p.273-280 (1957)

(8) 服部昭三,日本音響学会誌,vol.23, no.5, p.319-324 (1967)

              表1 規格と周波数重み付け特性の変遷

              表2 A, B, C, D特性のレスポンス

閉じる

振動レベル計のピックアップの設置について注意すべき点などを教えてください。
(Vol.38 No.1)
Vol.38 No.1

(一般財団法人小林理学研究所 平尾善裕)

JIS C 1510 に準拠した振動レベル計のピックアップは,コンクリートやアスファルトなどの地面,フローリング床などの硬い面に設置することを前提に作られたものがほとんどである。そのような硬い面では,できるだけ凸凹の無い平らな面を選び,ピックアップにガタツキが無いか,傾いていないか,あるいはコードに引っ張られて浮きが生じていないかなど,計測対象面にしっかりと設置されていることを確認する必要がある。
一方,表面が土や砂利敷きなどの地面,畳や絨毯敷などの床面では,設置共振と呼ばれる現象が生じる。設置共振とは,柔らかい土や畳,絨毯がばねとなり,ピックアップが質量となるほぼ 1 自由度の共振系が形成されることによる共振現象(振動増幅および減衰)である。

まず初めに,土の表面にピックアップを設置した時の鉛直方向の共振現象を図−1 に示す。何もせず,直にピックアップを設置した場合(A : 直置き)では,約 55 Hz に共振のピーク(共振点 : 約 17 dB)が見られる。仮に,55 Hz の正弦振動を直置きで計測すると実際よりも 17 dB 大きな値となる。JIS Z8735「振動レベルの測定方法」では,表面を十分に踏み固めることとしているが,設置共振の影響を完全に取り除けるとは限らない(B : 踏み固め)。そこで,地中に打ち込んだ長さ 30 cm の杭で固定された金属板にピックアップを設置する方法(D : 3 本杭E : 1 本杭)が提案されている。図−1 の実験条件では,80 Hz 以下の周波数範囲において,設置共振の影響を 2 dB 以下に抑えることが出来ている。現時点では,土の地面への設置においては,最も実用的な方法であると考える。

次に,畳による鉛直方向の設置共振を図−2 に示す。畳床の厚さと材質が異なる 6 種類の畳(一寸八分わら床,一寸八分わら床(12 年使用),二寸わら床,一寸八分むぎ床,一寸八分スタイル床,一寸八分ダイケン床)では,30 Hz から 50 Hz の間に共振点が見られる。10 dB から 18 dB の設置共振による振動増幅が生じている。

最後に,図−3 に示した 3 種類の絨毯(合成ゴムベースは全て 3 mm,① : 3 mm ループパイル,② :7 mm ループパイル,③ : 12 mm カットパイル)では,パイルが長い絨毯ほど共振点が低い周波数にあり,設置共振の影響も大きくなる傾向にある。また,水平方向では,20 Hz 以上の周波数範囲で振動を減衰する現象がみられる。例えば,②の絨毯の上で 50 Hz の正弦振動を計測すると実際よりも約 9dB 小さな値となる。

このように,畳や絨毯敷きの床面では,精度よく振動を計測することは,現状において困難に近い。一時的に畳や絨毯を取り除き,座板やモルタルなどの硬い表面にピックアップを設置する必要がある。

閉じる

風車騒音を測定する時など,風が強い場所で騒音測定する際に留意すべきことにはどんなことがあるでしょうか?また風雑音の影響を避ける方法はあるのでしょうか?(Vol.38 No.4)

((株)ニューズ環境設計 太田達也)

マイクロホンに風が当たると,胴の部分を空気が迂回するときに渦ができ,渦による風雑音が発生します。そのため,マイクロホンにウインドスクリーン(以下,WS)をつけて測定します。風雑音の影響は,WS の大きさ,風速や乱れ具合によって異なりますが,マイクロホンに付属のウレタン製 WS(直径 6 cm 程度)や全天候型 WS(直径 20 cm 程度)を着けても,低周波音領域(特に超低周波音領域)を対象とした測定では,風雑音の影響を防ぐことはできません。また,より強風時には,WS 自体に風があたることにより広帯域に風雑音が発生することがあります。

一般的な環境騒音測定では,このような強風が見込まれる日を避け,風の弱い日を選びますが,質問にあるような風車騒音を対象とした測定の場合は,風車が定格回転しているような風が強い日に測定する必要があります。また,風車騒音は,低周波音成分を含む広帯域な騒音であるといわれており,広い周波数範囲にわたって風雑音を低減する手法が必要です。

よく使われる風雑音の低減方法として,マイクロホン自体を地表面付近まで下げて設置し測定を行います。筆者らが,草地において高さ別の風速を調査したところ,地表面付近では,高さ 1.2 m と比べて 7割程度まで風が弱くなることから,風雑音は低減します。風車騒音のパワーレベルの測定方法として,地表面上に設置した円板の中心に全天候型 WS を装着したマイクロホンを設置し測定する方法があります。IEC 61400-11(JIS C 1400-11)で規格化されています。また地上付近まで下げることで,風によるマイクロホンの転倒防止にも役立ちます。

地表面付近に設置しても風雑音の影響が避けられないくらい強風の場合は,マイクロホンに取り付けるウレタン製 WS を一次 WS とし,さらにそれを覆うように二次 WS を被せる方法が有用です。ただし二次 WS を作成する必要があります。

この二次 WS については,さまざまな検討が行われており,落合らは,低周波騒音測定の常時監視を目的として,ウレタン製シートや農業用ネットを二次 WS とする方法を報告1)しています。また,H23∼H25 年度に実施された環境省の風車騒音調査では,超低周波音領域から騒音領域までを一つのマイクロホンで測定するための二次 WS の開発2)を行っています。こちらは暴露側の調査であり,運用面を考慮しできるだけ小型になるように設計しています。雨天時の測定を考えて一次 WS には全天候型WS を用いています。また,二次 WS は一次 WS との間に 10 数 cm 程度の間隔を空けて取り付けることで,風をより低減する効果があります。二次 WSの素材や開口率,伸縮性により防風性能が多少変化します。測定対象とする騒音や低周波音の特性,設置場所,運用面などを考慮し,目的に応じた WS を作成する必要があります。なお,特に高周波数領域では WS による減衰が考えられるため,現地で測定する前に実験により WS の挿入損失を把握しておく必要があります。

  • 1 )
    落合他 : 低周波騒音計測用防風スクリーンの開発,騒音制御,vol. 30,no. 5,pp. 408-417(2006).
  • 2 )
    太田他 : 低周波音領域を含む環境騒音測定のための防風スクリーンの試作,音講論(春),pp. 1195-1196

閉じる

低周波音が原因で家屋や窓が振動することはあるでしょうか。そのような場合は,因果関係はどのように調査・解明したらよろしいでしょうか。(Vol.37 No.2)

(一般財団法人小林理学研究所 落合博明)

上空を大型のヘリコプターが通過する際,窓や戸がカタカタと音をたてることがあります。これは上空で発生した音波が地上まで伝わり,窓や戸などの建具を振動させているのです。低周波音による建具の振動は,低周波音の主要な周波数と建具自体が持っている共振周波数と合致した場合に発生します。したがって,同じ家屋内でも,振動する窓と振動しない窓があるといった現象が起こります。建具の他にも,人形ケースのガラス面や食器戸棚のガラス戸,蛍光灯のカバーなどが振動することもあります。発破や爆発などのように低周波音の音圧レベルが非常に大きい場合には,床が振動するのを感じられることもあります。

建具等のがたつきを生じさせる可能性がある低周波音発生源として,工場の大型施設,道路高架橋,高速列車のトンネル突入,ヘリコプター,堰の放流,発破・爆発などがあります。

因果関係を調べるには,はじめに,発生状況の把握を行います。その現象が発生し始めた時期,発生する季節,時刻,発生性状(連続的か,間欠的か,単発的か)などを調べます。ある時期から突然建具の振動が発生したような場合には,施設の新設や移設,稼動状況の変更や不具合の発生した時期と関係があると思われます。また,近くに低周波音の発生源がないか確認します。

次に,推定される発生源の稼動状況と振動の発生状況の対応関係を確認します。移動発生源や発破・爆発などは対応関係が比較的わかりやすいと思われます。道路高架橋では大型車の通行時,高速鉄道トンネルでは列車のトンネル突入時,ヘリコプターでは上空通過時,発破・爆発では作業時との対応を調べます。堰の放流については水膜が薄い条件で大きな音圧レベルの低周波音が発生することがあるので,放流状況を確認します。

工場の大型施設が発生源である場合には,施設の稼動時間や稼動状況と関係があるはずです。可能であれば,施設を稼動・停止させて振動の発生との対応を調べるとよいでしょう。

測定により因果関係を調べる場合には,周波数分析機能の付いた低周波音レベル計を用います。発生源近傍(難しければ敷地境界)と,振動が発生している家屋(建具)の屋外で,低周波音を同時に測定します。その際,音圧レベルの変動が少ない場合はパワー平均値を,大きく変動する場合や間欠的・衝撃的な低周波音の場合は発生時の最大値を測定します。発生源側と家屋側で測定された低周波音の周波数特性を比較し,家屋側と対応する卓越周波数成分を調べます。

工場のように施設がたくさんある場合には,メッシュ状に測定点を設けて測定し,家屋側で観測された低周波音の卓越周波数と同じ卓越周波数をもつ測定結果を手がかりに発生源を絞り込んでゆくとよいでしょう。

対応関係が確認された場合,建具の振動に寄与する周波数を調べるには,家屋屋外で得られた測定結果を「建具のがたつき閾値」(下表)1)と比較します。この値を上回っている卓越周波数成分があれば,その周波数の低周波音が振動の原因である可能性があります。

周波数(Hz) 5 6.3 8 10 12.5 16 20 25 31.5 40 50
建具のがたつき閾値(dB) 70 71 72 73 75 77 80 83 87 92.5 99

なお,家屋全体または部屋全体が振動している場合には,地面振動が原因である可能性も考えられます。調査にあたっては,鉛直方向と水平方向の 3 方向が測定できる振動レベル計も併せて持って行かれることをお薦めします。

低周波音の測定,評価,苦情対応,事例等については,以下に示す環境省のホームページもご参照下さい。(何れのページも,2013 年 3 月時点確認)

文献

  • 1 )環境庁 : 昭和 52 年度低周波空気振動等実態調査(低周波空気振動の家屋等に及ぼす影響の研究)報告書(1978. 3).

閉じる

時間帯補正等価騒音レベル(Ldn,Lden)は,騒音レベルに夕方の時間帯は+5dB,夜間の時間帯は+10dB の重みを付けて,1日の等価騒音レベルを算出して求めますが,これらの補正の根拠はあるのでしょうか。(Vol.37 No.4)

(横浜国立大学名誉教授 田村明弘)

アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)は,1972 年騒音規制法に則り連邦議会から要請された 2 つの相互に関連ある責務を,1973 年に「騒音に関する公衆の健康と福祉クライテリア1)」,1974 年に「公衆の健康と福祉を十分な安全幅で保護するのに必要な環境騒音レベルに関する情報2)」の公表により果たした。

この中で EPA は 7 つの判断基準を設定し,A 特性等価騒音レベルが環境騒音の大きさの最良の物差しであると判断した。その上で,住居など長時間にわたり人々が環境騒音に曝される地域や状況下で,会話,睡眠その他の日常活動妨害による慢性的なうるささと関連づけるために,夜間の睡眠時に 10 dB の重みを付けた 1 日 24 時間の等価騒音レベルであるLdnを採用した。1 日を昼,夕,夜に 3 分して夕方 5dB,夜間 10 dB の重みを付ける Ldenについても検討しているが,2 分法と 3 分法で得られる数値の差が極めて小さいことから簡便な Ldnを選択した。

この Ldnは,Von Gierke らが EPA の依頼により蓄積する騒音暴露を適切でかつ簡潔に定義し測定する手法として開発した成果である。夜間 10 dB の加重は,世界中の多数の騒音評価法3)に取り入れられていた実績を考慮したことと,Ldn,Ld,Lnからなる 63 組の環境騒音の調査結果に基づくものである。Ldnが 55 dB 未満の低騒音レベル地域では Lnの自然低下は約 10 dB であるため,Ldと Lnは同等に Ldnに寄与する。しかし騒音レベルが高い地域では Lnの低下は僅かであり,LnがLdnを支配する。このため騒音基準を順守しようとすれば,夜間の加重が 1 日 24 時間にわたって騒音レベルを引き下げるように圧力をかけることになる。

更に,EPA は 55 の地域社会での騒音測定結果と苦情や訴訟との関連を解析した報告を基に,「10 dB程度の夜間加重を正当なものと実証できる。10 dB加重時に比べ夜間加重を全く適用しないときは関連性が悪化した。しかし,夜間加重が 8 dB から 12 dBの間では差異は認められず,これ以上細かく夜間加重を決定できるものではない。」と指摘している。わが国の初期の騒音防止条例4)でも夜間は睡眠を妨げない程度の小音とする,他の時間も付近の暗騒音より 10 dB をこえてはならないとするなど,夜間重視,暗騒音との相対性の考えが散見される。

B. Berglund と T. Lindvall が編集し WHO に向けて用意した 1995 年文書「生活騒音」5)は,発生時間重みについて,「同様の騒音環境でも,昼間より夕方又は夜間には住宅地域により煩わしさをもたらすとしばしば仮定される。夜間に重みを加えることは,したがってLdnのようないくつかの騒音指標に含まれている。合計 22000 人の回答者からなる 10 の研究の分析は,夕方及び夜間騒音が煩わしさに多少大きな影響を及ぼすかもしれないというある証拠を見いだした。(Fields, 1985,1986)

しかし,この違いの大きさの有意性は示されることはできていない。Ldnや騒音暴露予測(NEF)のように多くの累積的な騒音指標では,昼間の騒音に比べ夜間の騒音に 10 dB の重みが加えられる。夕方時(通常午後 7 時と 10 時の間)の煩わしさをさらに取りいれている騒音指標は,測定した騒音レベルに5 dB を加えている。
Ldnが導入されたとき,夜間の騒音に重みを付けるために次の 3 つの理由が主張された。

  • 1)生活騒音は,昼間より夜間において,より煩わしいと知覚される。
  • 2)夜の睡眠のための低い騒音レベルの要求は,暗騒音が通常夜間に減少しているために,より一層の騒音低減を動機づける。
  • 3)夜中の屋内での活動が低くなればそれだけ,より低い騒音レベルであることにつながる。

多くの研究が上記理由 2),3)を確認する。すなわち,低レベルの暗騒音下では,騒音源からの煩わしさが増大する。昼間の騒音暴露と夜間の睡眠の質との関係が示唆された(Blois, Debilly & Mouret,1980)が,夜間の騒音がどの程度昼間の騒音に関連して重み付けされなければならないのか経験的に示すことはできなかった。オーストラリアの飛行場近くでの社会学的研究(Bullen, Hede, 1983)は,騒音の非妨害への要求は午後 6 時から 9 時の間で最も重要であることを見いだした。」と報告している。

以上をまとめてみると,Ldn,Ldenは

  • a)24 時間の累積騒音暴露をエネルギーベースで評価している。
  • b)長時間にわたる日常活動への妨害による慢性的なうるささに関連する。
  • c)夜間(加えて夕方)の騒音源からの煩わしさ増大を夜間 10 dB(加えて夕方 5 dB)と見込んでいる。

騒音の大きさがうるささの第 1 要因であることは広く認めるところであり,a),b)を導くものである。他方 c)項は,5 dB は 1 ランク,10 dB は 2 ランク地域社会反応の増大に相当するペナルティであるという経験知に依るところが大きく,世界的暗黙知である。

  • 1 )EPA, Public Health and Welfare Criteria for Noise,1973
  • 2 )EPA, Information on Levels of Environmental NoiseRequisite to Protect Public Health and Welfare withan Adequate Margin of Safety, 1974(全訳 : 東京都公害研究所,海外公害情報シリーズ(15),1978)
  • 3 )日本建築学会編,騒音の評価法─各種騒音評価法の系譜と手法─,1981
  • 4 )横浜市騒音防止条例(1953),京都市騒音防止条例(1954)等
  • 5 )Edited by Birgitta Berglund & Thomas Lindvall, CommunityNoise, Stockholm, Sweden, 1995

閉じる

等価回路に基づいた消音器の性能予測法とはどのような方法ですか。また管路内での気流や温度変化をどのように扱えばよいでしょうか。(Vol.36 No.2)
                                  (消音器設計者)

(日本騒音制御工学会認定技士 森 卓支)

音響等価回路は音源やそれに接続される管路等を音響素子として電気回路の様に示したもので、参考図書1)に示すようにかなり以前から使われてきました。

通常の音響式では系固有のインピーダンスや複雑な管路系は計算できませんが、各音響素子を四端子マトリクスで表すことにより複雑な系でも計算することが可能です。図-1は音源と管路系の等価回路で粒子速度を電流、音圧を電圧に置き換えて考えることができます。内部抵抗Riが負荷抵抗により十分大きければ流れる粒子速度は負荷抵抗Rsによらず一定となります。(定速度音源)。またRiが十分に小さければ負荷にかかる音圧は負荷抵抗の大きさにかかわらず一定の音圧となります。(定音圧音源)。

様々に組み合わされた管路系の特性は四端子マトリクスにより計算が可能です。

図-2は音源からの管路出口までの音響等価回路を表し、管路系の出入り口の音圧と体積速度の関係は四端子マトリックスで表されます。

この四端子マトリクス法では管路系は平面波理論を適用し、管路系各構成要素を音響要素で表現できます。図-3は拡張型消音器での音波の伝播経路と気流の様子を示し、音波が管内を進行する際に進行波と反射波は気流の影響を受けることとなります。

式(1)、式(2)は管路の四端子マトリクスと定数を示し、気流による音速の変化を進行波と反射波の位相定数で表現し、また管路での摩擦損失や吸音材により音波の減衰が生じる場合はこの損失を減衰定数δにより考慮することもできます。温度条件については音速cで式に反映されています。

各構成要素をこの音波の流れに従って組み合わせることにより、減音量計算に必要な消音器出口の体積速度U2を求め消音器の特性が計算できます。しかしながら、自動車の排気消音系などの管内を高速で期待が流れる場合は管内や出口端で発生する気流騒音などの考慮が必要です。

これまで示した音響等価回路による管路系の特性計算は平面波領域で成り立つ1次元モデルです。近年ではコンピュータの進歩による計算器能力の大幅な向上で、3次元での予測計算が可能となり、境界要素法や時間領域差分法(FDTD)等、予測範囲拡大と精度向上が図られつつあります。

参考図書

  • 1)福田基一、奥田 襄介:騒音対策と消音設計(共立出版、1974)
  • 2)(社)日本騒音制御工学会編:騒音制御工学ハンドブック基礎編・応用編(技報堂出版、2001)

閉じる

騒音計の普通級と精密級の選択方法については,どのような条件で決定すれば良いのですか。(Vol.35 No.2)
                               (空調機メーカ担当者)
Vol.35 No.2

(リオン(株)音響振動計測器営業部 河野正秀)

計量法で規定される検定公差は普通騒音計で1.5dB、機密騒音計で0.7dBです。道路交通騒音など環境騒音測定などをはじめ、一般に多く用いられているのは普通騒音計です。

両者の大きな違いは上記検定公差であり、同じ検定合格品でも検定公差の範囲で個々の騒音計による測定値にばらつきがあります。検定公差はプラスとマイナスがありますので、普通騒音計では最大3dBとなります。対策の評価などより厳密に測定結果を比較する必要がある場合、精密騒音計の使用が望ましいと考えられます。騒音規制の対象外ですが、各種機器の騒音試験や検査、音響実験等には精密騒音計が使用されています。これはその数値が製品の性能を示すことになるためと考えられます。

欧州ではいくつかの国に型式承認精度がありますが、精密騒音計相当のクラス2は対象外です。公的な測定にはクラス1の使用が義務付けられていることが一般的です。今後、機器の騒音試験については輸出国等の要求がさらに高まり、より厳密な評価が求められて精密騒音計の使用が増えると考えられます。

閉じる

分野

キーワード

フリーワード

PAGE TOP