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公益社団法人 日本騒音制御工学会

Q&A

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自動車騒音の予測計算はASJモデルが使われていますが、航空機騒音にも予測計算の方法があるのでしょうか。(Vol.39 No.2)
Vol.39 No.2

(成田空港振興協会 川瀬康彰)

航空機騒音の予測は, 1機の航空機が飛行した際の任意点における騒音レベルの変動を計算することでも可能ですが, 機種が同じでも目的地によって飛び方は異なりますし(目的地までの距離により搭載する燃料の量が異なるなど), またそれらが同じであっても飛行経路にばらつきが生じるため, 計算にそれらを考慮に入れると莫大な時間と手間がかかり現実的ではありません。

そこで,多くの計算モデルでは次に示すデータベース (基礎データ) を機種や飛行形態などの別に作成し, それらを用いて様々な飛行パターンによる航空機騒音の総暴露量を計算する方法が採られます。

・航空機1機ごとの飛行時に観測される最大騒音レベルまたは単発暴露騒音レベルと計算点までの距離との関係

・滑走路端からの航空機の進出距離に対する高度,速度,推力の関係

我が国では, その方法に基づいた航空機騒音予測計算モデルとして, 民間空港向けに国土交通省航空局が, 自衛隊基地向けに防衛省がそれぞれ開発したものがあります。 だたし, それらは行政的な施策の検討に用いられるのにとどまっており, プログラムやデータベースは公開されていないため誰もが使えるものにはなっていません。

世界に目を向ければ公表されている予測計算モデルはいくつかありますが,FAA(米国連邦航空局)が開発したINM(Integrated Noise Model)1)や米国空軍が開発した NOISEMAP2)が比較的容易に入手できます。そのうちINMは,1978年に公表されて以来バージョンアップを重ねているもので(最新版は2013年に出されたバージョン7.0d), 長きに渡り種々の改良が為されていることに加えて, 予測精度に関する調査例がいくつかあることもあり,世界で広く使われているようです。

航空機騒音の予測計算方法のガイドラインについては, 1980年代後半に相次いで発行・公開されたものがあります3)-5)。それらに基づいた予測計算モデルもいくつか開発されましたが, 一般に入手できるものは無いようです。INMや我が国の予測計算モデルはそれらのガイドラインが発行される前からありますが, ともに改訂を経た現在ではそれらと整合したものになっています。 なお, 基礎データなど予測計算に必要となるデータベースは公開されているものがあります6)。

1) https://www.faa.gov/about/office_org/headquarters_
offices/apl/research/models/inm_model/

2)http://wasmerconsulting.com/baseops.htm

3)“Recommended Method For Computing Noise Con-
tours Around Airports”,ICAO Circular205,Inter-
national Civil Aviation Organization(ICAO),1987.

4)“Aerospace Information Report1845:Procedure For
the Calculation of Airplane Noise in the Vicinity of
Airports”,SAE AIR1845,Society ofAutomotive Engi-
neers(SAE),1986.

5)“Standard Method of Computing Noise Contours
around Civil Airports”,ECAC.Doc.29,European Civil
Aviation Conference(ECAC),1986(3rd Edition2005).

6)http://www.aircraftnoisemodel.org/

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航空機騒音について,各自治体に寄せられる苦情内容の現状,対応例があれば伺いたい。(Vol.38 No.3)

(防衛施設協会 森長誠)

苦情は主に,自治体,空港,国などに申し入れられるケースが多く,それぞれで管理されています。自治体によってはホームページで苦情内容を公開している場合もあり,例えば千葉市では羽田空港の航空機騒音に関する苦情の件数や内容を公開しています。オスプレイの問題に直面している普天間飛行場周辺の宜野湾市は「基地被害 110 番」として騒音以外も含めた苦情内容を公開しています。

自治体ごとに苦情の具体的な内容は異なりますが,例えば当学会が一昨年度に実施した「福岡空港に係る環境保全検討業務委託」業務の結果では,夜間の騒音や飛行経路に関する苦情が目立つと報告されています。福岡空港は暗黙の了解で 22 : 00∼7 : 00は飛行しないとされていますが公式ルールではないため,実際には 22 : 00 以降の到着遅れなどがあります。また,飛行経路も風向きや天候によって変化することから,飛行頻度の少ない経路などで,普段聞こえないのに今日はうるさいといった苦情が発生しやすくなっています。このような苦情は,住民にとって「イレギュラー」な騒音と捉えられているのかもしれません。これらは十分な住民説明が不足していると考えることができ,時間帯の取り決めや,季節・天候ごとの標準飛行経路パターンを十分に周知し,個々の騒音がなぜ発生したのか理解してもらうことが苦情対応の第一歩ではないでしょうか。

最初にお話しした千葉市における羽田空港の苦情とは,主として D 滑走路の増設に伴う飛行経路の変更が原因です。夏場などの南風時に千葉市の上空で北からの着陸便と南からの着陸便が交差して飛行するようになり,当該地域の住民の方々にとっては今まで聞こえなかった騒音が,決して大きな騒音レベルではなくても非常に頻繁に飛行することとなり苦情が増加しています。国や自治体はよりよい飛行経路を模索しているようですが,飛行経路を変更すると今度はその先で苦情が生じかねませんので,単純ではありません。

苦情対応の確固たる手法はありませんから,これは私の個人的な意見となりますが,できるだけ不公平感を解消することが重要ではないかと思います。車や電車とは異なり,航空機は空港周辺の住民ほどより利用する交通機関ではありませんから,自分たちに便益は少なく,騒音だけを請け負っているという不公平感が生じやすいのが航空機騒音問題の特徴ではないかと思います。空港の存在による観光資源を中心とした地域経済の潤いや,雇用の増加など,空港の存在による地域への便益は潜在していると思います。2012 年に成田国際空港が 23 : 00 までの夜間離着陸制限について,低騒音型機材に限定することを条件に 24 : 00 までの緩和措置を実施しましたが,緩和時間帯における到着便には着陸料金の増加が課せられ,そのお金は周辺自治体に支払われることになっています。このように,受苦者に便益をもたらすシステムの存在と,その存在の周知が重要ではないでしょうか。

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航空機騒音について,対策や実例があれば紹介していただきたい。(Vol.37 No.6)

(防衛施設周辺整備協会 森長誠)

まず発生源対策として,国際民間航空機関(ICAO)が制定した発生源の規制基準(国際民間航空条約附属書 16 第Ⅰ巻)が挙げられます。各国はこの基準を騒音基準適合証明制度として法令化しており,民間航空機が商業運航する際にはこの基準を満足していなくてはなりません。最近の大型ジェット機には Chapter 4 と呼ばれる基準が適用されていますが,本年 2 月 14 日に基準強化について合意したとの報道があり,2017 年以降に製造される新型航空機が騒音証明を申請する際は新基準が適用されることになりそうです。空港によっては低騒音型機材への移行を促進するため,騒音証明値に基づく独自の制度を設けるところもあります。例えば成田国際空港は着陸料金が低騒音型機ほど安くなる「成田空港騒音インデックス」制度を導入しています。大阪国際空港も低騒音型機ほど着陸料が安くなる制度を今年の夏ダイヤから導入しています。発生源対策には低騒音型機の導入だけでなく,騒音軽減運航方式,運航規制などもあり,空港毎に対策に要するコストと得られる効果のバランスを考えて取り組むことが必要とされており,これを Balanced Approachとよびます。

次に,伝搬経路対策としては羽田国際空港の D滑走路のような沖合展開が挙げられます。また,航空機騒音に係る環境基準の改正により地上音の評価が必要になりましたが,成田国際空港や山口宇部空港などでは離陸滑走音,着陸時のリバース音,誘導路の地上走行音などの低減のために防音堤が設置されています。大阪国際空港では空港隣接地域への騒音軽減を目的として防音壁を設置するとともに,空港のできるだけ内側を走行するための誘導路から滑走路へのバイパス通路が設けられています。

受音側対策としては,移転補償や家屋の防音工事助成が挙げられます。これらの対策は,主要な空港や防衛施設については国(国交省・防衛省),成田国際空港や関西国際空港は空港会社,その他の空港は管理者である自治体等が実施しています。補償あるいは助成という形で行われますから,騒音コンターに基づき対策エリアが指定され,エリア内の該当する家屋だけが対象となります。

先に述べた Balanced Approach には,発生源対策である低騒音型機導入,騒音軽減運航方式,運航規制の他に,土地利用計画が含まれています。土地利用計画は,騒音の影響を受ける住民の数を増やさないようにするための取り組みであり,騒音の大きな地域の新規開発の規制などを通して行われるものですが,我が国では成田国際空港以外に土地利用規制を行っている空港はなく,今後の課題の一つと言えるでしょう。

ここまで,我が国の騒音対策の基本的な枠組みである発生源対策・伝搬経路対策・受音点対策のそれぞれの枠組みで説明しましたが,地域住民への情報公開という重要な対策も忘れてはなりません。成田国際空港では 1995 年に空港情報センターを開設し,航空機騒音の測定値や飛行コースの公開などを行っています。中部国際空港はホームページ上でリアルタイムに近い形で飛行経路や騒音レベルを公開しています。羽田国際空港でも「羽田空港飛行コースホームページ」によって 1 日前から 1 カ月前までの飛行コースや騒音レベルを確認することが出来ます。また企業の社会的責任の一環として成田国際空港,中部国際空港,関西国際空港では環境報告書を年に 1 回発行しており,騒音を含む各種環境問題についての空港の取り組みが詳しく紹介されています。これらは空港のホームページからもダウンロードが可能です。

なお,航空機騒音に対する対策の詳細については本誌 31巻2 号に「航空機騒音に対する体系的な取り組み」という特集号がありますのでそちらをご覧ください。

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