日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Q&A

「 環境騒音 」の関連記事一覧

Q:騒音規制基準値の適用について下記のような場合どのように考えればよろしいでしょうか。考え方と事例等がありましたらご教示ください。
Q-1:公道を挟んで自社工場があります。公道の東側は夜間規制基準値55dB、西側は45dBです。この場合、被害者はいないのですが、工場の公道側境界(道路境界)で夫々、規制基準値を守らねばならないのでしょうか。
Q-2:規制基準が異なる境界騒音(例えばプラント設置エリアの規制基準値55dB、周辺地域45dBのような場合)、環境アセスメントの目標値はどのように考えれば良いでしょうか。
Q-3:ボイラ安全弁のように非常時しか動作しない機器発生音の敷地境界への影響は騒音規制法上、どのように考えれば良いのでしょうか。(Vol.43No.1)
Vol.43 No.1

(芝浦工業大学 門屋真希子)

A、A-1

 結論から申しますと,騒音規制法で規制される対象であったとしても,執行責任は地方自治体にあり,また条例による規制対象の可能性もあるので詳しくは市あるいは県にお問い合わせください。

一般論として考えますと,規制基準値が公道をはさんで違いがあるため,公道が用途地域の境界であり,工場西側の規制基準値が45 dB から考えても住居の多い地域であろうと推測できます。ご質問では公道面だけに着目されていますが,西側地域の公道に面さない境界には住居があると考えられるので,そのような場合は敷地境界で45 dB 以内に収める方が良いと思います。また現在規制基準を満たしていたとしても,今後設備の老朽化に伴う異音などにより苦情が発生する可能性がありますので注意が必要です。

一方,工場東側の用途地域は規制基準55 dB から考えて,工業地域など住居の多くない地域と推測できます。規制基準の遵守さえ確保できればよしとするなら,公道に面する敷地境界で55 dB 以下にする必要がありますが,公道の幅の分の距離減衰を考慮したとしても,基準値に10 dB 差がある西側の地域(工場西側地域の公道面以外の敷地境界に近い場所)から苦情が発生する可能性があります。騒音苦情は規制基準以下で発生している事例が多いので,工場東側の地域に関しても配慮されたほうが良いでしょう。

A-2

 環境影響評価は,法,条例によって手続きは多少異なりますが,事業による環境への影響を回避,低減,代償することを目的としています。このため事業者は基準値の遵守は当然の責務ですが,環境への負荷をどれだけ低減できるか検討することが求められます。

環境影響評価の手続き(法)では,事業による事業に関する情報(配慮書),事業により発生する環境負荷の程度を予想するための現況及び予測調査方法に関する情報(方法書),調査結果及び影響の程度,事後(評価書発行後)調査や対策内容(準備書)が提出されます。情報提供が行われる度に住民意見の聴取や市町村長や都道府県知事の意見,主務大臣の意見が示されます(環境大臣は配慮書と準備書のみ)。最終的には準備書の訂正や住民意見等を踏まえて環境影響評価書としてまとめられます。このとき環境影響の予測結果が基準以下であれば問題ないと解釈されることも多いのですが,手続きの中で住民等からの環境影響に対する意見が出されているならば,その意見に対して真摯に対応されることが望ましいでしょう。

環境影響評価の目標として規制基準値55 dB の遵守は当然のことですが,住民の意見や環境負荷への低減を十分検討する必要があります。

A-3

騒音規制法(実際の運用は当該市区及び都道府県)では,規制対象地域内にある特定設備を有する特定工場について,特定設備以外の騒音も含めて敷地境界における規制基準が定められています。安全弁のような不定期に稼働する設備から発生する騒音については,自治体によって考え方が異なる可能性があるので,当該市区及び都道府県にお問い合わせください。

なお,どのような判断においても突発的な騒音は,苦情になる可能性もありますので,付近住民に理解を促す説明を十分になされた方がよいでしょう。

また,特定施設を有しない法対象外施設(条例に該当するかもしれないが)についても,上記と同様に,住民に説明しておくほうが良いでしょう。

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超低周波音の問題に当っては被害者側の意見を尊重した対処が必要であるとよく耳にしますが,その具体的な考え方について教えて下さい。(Vol.42No.1)
Vol.42 No.1

(株式会社S・Ⅰ・T 岡田健)

超低周波音による心身への生理的影響は人間の感性に関連するので個人差が大きく現れる。同じ音環境に住む家族でも被害を受けない人と、生理的影響が発症する人が共存するのが普通である。この様な問題を取り扱うにはまず「被害者側の意見を尊重して聞くことから始めるのが順序である。圧迫感、肩こり、眼球疲労、耳鳴り、様々な多症状が現れ、病院へ行くと症状が消え、帰宅すると再発すると言う状況になり、その原因が解明できない事が多い。しかし、被害者の意見を聞かず安易な思い込みや知識で、被害者を説得しようとする方法は決して問題の解決にはならない。騒音対策的発想は通用しない。

超低周波領域の音による心身への生理的影響は存在しないとの意見もあるが安易に否定することは注意すべきで、丁寧に原因を調べると原因解明ができることが多い。

2000年以降の対策には、不十分な調査・評価と不完全な対策技術で適切な処理が行われず被害者が苦しみ続けている事例を多く見る。

問題解決は、

1)原因究明、特に、心身上の症状と音・振動の関係、

2)発生メカニズムの究明、

3)音源機器の対策(発生機構の改修)の手順で行う。

超低周波音は単に周波数が低い音で常に、何処にでも存在しており、特別な音ではない。しかし、超低周波域の特異な発生音・音波が、心身に影響を発症させた事例、かつ、対策を行い改善した事例を1975年頃から多く報告してきた。最近は対策事例の報告が少なく、被害者の声は参照値で被害が否定され、対策に至らないと云う声を聞く。超低周波音は“聞こえないので心身への生理的、心理的影響は発生しない”と主張している根拠は何か? もし、これを”真”とするならば、ここで超低周波音による心身への影響を論ずることは無意味であろう。

1992年Colebatch と Halmagyi両生理学者は音刺激による頸筋,胸鎖乳突筋に 球形嚢―下前庭神経系に由来する筋電位反応を見つけ、鼓膜から入射した音波が蝸牛ばかりでなく、前庭にも伝搬し、前庭神経を通じて運動ニューロンへ信号を送り込んでいることを明らかにした。

〇 心身への被害に対する対策

現社会で騒がれている超低周波音問題は超低周波領域だけではなく、その倍音の数百Hz領域まで広がっており、更に、固体音による低音圧レベルの“気になる音”まで含めた問題となっている。本問題を診断する技術者は、まず、問題を仕分ける事が対策の第一歩である。そのため苦情は“煩い”ではなく、“身体の不調の訴え”である。機器設備から発生する“音、音波、振動の発生状態”、“伝搬特性”、“特徴のある音”(例えば、卓越成分)により異常が発生する場合、卓越成分が存在するが、卓越成分が存在しても異常が発生するとは限らない。“特異な変化”(例えばビート)、“特異な音の響き”そのものが体調不良の原因である。振動と音の伝搬特性に関わる固体音は心理的影響を誘引する原因となっている。発生音を音楽に例えると、楽譜に示されるがごとく、音程の外れた“卓越音を修正”し、“楽譜を編曲”すること、そして非常に小さな固体音“雑音”を防止する事が対策の基本となる。本問題を診断し、対策が出来るのは、実際に対策を行い、症状を治めた経験がある者でなければ、難いであろう。

この問題は食物アレルギー症状に似ている。ある特定の人には重篤な症状を発症させるが、隣の人には全く関係がない。外的物理刺激(音・振動)の存在によって生じる現象で、外的物理刺激が取り除かれれば、症状は消えるのが特徴である。

〇 超低周波音問題の調査・評価を行う前に

本問題は被害者の意見が重要であるが、特に参照値で評価されると音源機器側の協力が得られなくなり、その被害を目の前にしても認めて貰うのが非常に難しくなる。注意が必要である。

1は織物工場に隣接する住宅屋内外の典型的超低周波音問題発生のスペクトルである。25 Hz成分が住民に被害をもたらしていることは確認されている。参照値との比較では心身への影響の有無は判断できないとの評価であったが、参照値はあくまで参考であり、苦情者のことばや低周波音の発生状態を適切に判断して,被害者の意見を尊重した対処を継続することが重要と考える。

図1織機からの超低周波音スペクトル

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1.違法建築の事業所から発生する騒音に対する苦情についての対応方法について教えてください。
2.騒音は基準値以内であるが,低周波音に関して苦情があった場合の対応方法について教えてください。
3.民家から発生する騒音に対して苦情があった場合の対応方法について教えてください。(Vol.42No.2)
Vol.42 No.2

(松戸市 桑原厚)

 1.建築物に関する法令と騒音に関する法令は別の法令であることから違法建築であるか否かに関わらず,騒音に関する法令を適用することができます。しかし,建築部門と環境部門が当該事業所に対して異なる指導等を行うことは事業所側からすると対応に困惑しますので,建築部門と環境部門で事前に情報共有し,合同で現地調査などをしていくことが必要です。また,違法建築を容認するような行為はできませんが,現に騒音で苦慮している住民がいることを考え,建築部門と環境部門で暫定的な方法でどこまでの対策が可能であるか等を確認しながら対応していくこととなります。

2.一般に,騒音が基準値以内であっても低周波音に関する苦情があった場合は環境省が公表している「低周波音問題対応の手引書(平成16 年6 月)1)」に基づき対応していくことになります。同手引書には苦情申し立てから解決までの流れも記載されており,苦情対応の参考となります。なお,法令による規制はないので行政指導への対応は任意ですので解決には発生源側の協力が必要になること等は事前に説明しておいた方が良いでしょう。

3.民家から発生するいわゆる近隣(生活)騒音については法令による規制がないのが現状です。これは,近隣(生活)騒音は日常生活を送るうえで一定程度の発生が見込まれることや被害者が原因者になりうることが一因であると考えられます。一方で,地方公共団体によっては近隣騒音防止指導要綱等を定め対応している団体もあります。ただし,この場合においても測定・評価方法等の定めはあっても行政指導には強制力はなく,解決には発生源側の協力が必要になること等は事前に説明しておいた方が良いでしょう。また,町会長さん等の方に間に入って相談にのっていただいたりすることも解決方法の一助となるでしょう。

 

参考文献

1)環境省環境管理局大気生活環境室: 低周波音問題対応の手引書,http://www.env.go.jp/air/teishuha/tebiki/index.html

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昨今,保育施設における騒音問題が話題となっていますが,具体的にどのような問題がありますか? またこれらの問題に対し,どのような対策の方法がありますか。(Vol.42No.3)
Vol.42 No.3

(岩手大学 船場ひさお)

保育施設から出される音の大きさは以前とほとんど変わっていませんが,待機児童解消に向けて保
育園新設が急増しており,保育施設からの音を理由に保育園の建設に反対する事例が増えて来たことなどから話題になるケースも多いと思われます。そこで,少し問題を整理しながら質問に答えていきたいと思います。
◇保育施設から出される音について
保育施設から出される音には,園庭で子どもが活動する中で出る音,放送設備等の音,園舎から漏れ
出る音,施設の設備機器から出る音などがあります。このうち,設備機器からの音については一般的
な事業所からの発生音と同様に対策できるためここでは省いて考えます。
園庭で子どもが活動する中で出る音について,実測された例は少ないのですが,筆者らが近年実施し
た実態調査1)において,園庭で外遊びをする際の子どもの声の騒音レベルは70∼80 dB を示しました。
特にプール遊びをする際には大きな歓声があがるためレベルが上昇する傾向が見られました。
同様に室内活動時の騒音レベルは「歌やリズム運動」を行う際に80∼90 dB を示しました。室外にお
いては建物による遮音を考慮するとこの値から20∼30 dB 低減されると考えられるため,50∼70dB 程度
になります。但し窓を開放している場合は,これよりも高いレベルを示すこともあるでしょう。
放送設備の音については,不必要に大きな音量を出さないことや,スピーカの設置位置・方向を近隣
の住宅に向けない配慮をするなどで対策することができます。
◇外遊び時に子どもが外部騒音から影響を受けていることも多い
WHO 環境騒音のガイドラインでは,子どものための施設の園庭における外部騒音の許容値は55 dB以下とされています。しかし近年新設される首都圏の保育園は幹線道路沿いや鉄道高架下に位置することも多く,筆者らが調査した保育施設では近接する道路の車両交通騒音や直上を走る鉄道騒音のために65∼80 dB に達しており,許容値を大きく上回っていました。子どもの声が外部に与える影響ばかりに目が行きがちですが,実際には外部騒音から子どもが受ける影響も大きいのです。
◇保育施設内の音環境を整えることが,保育施設から発生する音の対策につながる可能性は高い
見逃されがちなのが,保育施設の室内の音の響きです。残念ながら日本の保育施設には音に関するガイドラインがありませんが,例えばドイツでは保育施設の室内の騒音レベルだけでなく,残響時間の値も決められています。国内の保育施設では,仕上げ材料に吸音材が使われていない園が多く,特に天井が高いケースやワンルーム型で間仕切りがなく床面積が広いケースで,響きの長さによって室内の喧騒感が増している場合が見られます。響きやすい空間では子どもの声が大きくなりがちであり,そのために保育士の声も大きくなる傾向があります。こうしてさらに喧騒感が高まる悪循環に陥っているものと考えられます。保育室の響きの状態と子どもの発声や発話行動との関係性については今後さらに検討が必要ですが,保育施設内に吸音材を設置することで,計算値以上に室内の騒音レベルが下がる事例は増えています。
◇子どもはいつも大声を出しているわけではない
子どもは賑やかなものと,つい思ってしまいますが,どんな時にも大きな声を出しているわけではありません。保育士に意思を伝えたいのに自分の方を向いてもらえない時などに大きな声を出すのです。そして室内で大きな声を出す癖がついてしまうと,室外に出ても大きな声を出してしまうのでしょう。
◇ハードな対策ありきではない。
例えば防音壁を建てるのは最後の手段 このように考えてくると保育施設における騒音問題についてまずやるべきなのは,当事者同士がいろいろな知恵を絞って落とし所を考えることであり,子どものために良い音環境を作るためにはどうしたら良いかを考えることだと言えます。施設を新設する場合には,まず周辺の道路や住宅地と園庭・園舎の位置関係を音の面から考えてレイアウトすることは非常に重要です。次に園庭で遊ぶ時間を制限したり,歌やリズム運動といった大きな音の出やすい活動の際には窓を閉めるなどの工夫もできるでしょう。そうは言ってもうるさいものはうるさい。何かハード的な対策をしなければ話が前に進まない場合には,防音壁を建てるなども必要かもしれません。でもそれは最後の手段だと思います。

参考文献
1 )船場ひさお: 小特集─子どものための音環境─,保育施設における音環境の現状─首都圏に新設された保
育施設の実態調査から─,日本音響学会誌,vol. 72,no. 3,pp. 152-159(2016).

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騒音測定において観測対象外の騒音が記録されることがありますが,簡易的な騒音の分離方法としてどのような方法がありますか。(Vol.41 No.1)
Vol.41 No.1

(大林組技研 池上雅之)

案件により様々な観測対象があるため,オールマイティな分離方法はありませんが,建築音響分野を対象にいくつかの実施例を上げてみますので,質問者の観測対象に応じて適切な分離方法を探して頂きたいと思います。

騒音規制法等に関連した騒音測定:
騒音規制法では,通常,騒音計を敷地境界に設置して測定します。しかしながら騒音計は一般の騒音に対してほぼ全指向性(無指向性)なので,敷地外の騒音も合成して測定してしまい,敷地外の騒音の影響が大きいと測定結果と規制基準の比較が困難になるという課題があります。そのため以下のような方法で,敷地外の騒音の影響の分離が試みられています。
a)時間で分離する(その1): 騒音レベルの測定と同時に録音や録画を行い,それを視聴して敷地外の騒音の影響のある時間帯だけ分析から除外する方法です。敷地外に時々車が通過する場合などに使われますが,手間が掛かる点と車の往来が途切れないと使えない点が欠点です。建設工事の一部の作業など,敷地内の騒音の影響が卓越して大きい場合は,それらの作業がある時間帯だけ分析することもあります。
b)時間で分離する(その2): 例えば工場の場合,工場稼働中と工場停止中の両方の測定を行い,その差分を敷地内(工場)の騒音の影響とします。敷地内外の騒音の影響とも,ほぼ定常的と仮定できる場合に,間接的に敷地内の騒音の影響を推定する方法です。
c)方向と時間で分離する: 騒音計に到来する音の方向を判定する装置を使い,敷地外の騒音の影響のある時間帯だけ分析から除外する(もしくは敷地内の騒音の影響のある時間帯だけ分析する)方法です。a)の除外作業を自動化しようとする試みであり,複数の全指向性(無指向性)マイクの到達時間差を利用したもの1), 2),複数の指向性マイクの組合せによるインテンシティ計測を利用したもの3)などがあります。
環境騒音の測定:
屋外から室内に伝わる騒音を予測する場合など,屋外の騒音負荷(騒音影響)を確認する目的で騒音測定を行います。
d)周波数とレベルで分離する: 例えば分析対象から緊急車両を除外したいなら,サイレンの音(960Hz と770 Hz が交互に生じる音)を手がかりにできます。コンパレータ出力のある騒音計,ブレーク接点(コイルに電圧が印加されたときだけ切断される)のリレー,ゲートトリガ動作があるレコーダーを使い,コンパレータバンドを1 kHz 帯域に設定することで,サイレン(1kHz帯域)がある一定レベルを下回る間だけ,収録することができます(メーク
接点(コイルに電圧が印加されたときだけ接続される)のリレーに置き換えることで,コンパレータレベルがある一定レベルを上回る間だけ収録することもできます)。
建物で生じる異音の測定:
建物で生じる異音(きしみ音等)の大きさや頻度を確認する等の目的で騒音測定を行います。
e)場所で分離する: 固体音の場合は,建物内の広い範囲に伝わる性質を利用して,PS(パイプシャフト)や倉庫などにマイクロホンを設置して,建物利用者の発生音の影響を受けにくくします。
この他,航空機騒音のモニタリングの分野では,目的外騒音の除外の方法4)がいくつか実用化されており参考になると思われます。

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「特定工場に該当しない工場からの騒音や特定建設作業に該当しない建設作業からの騒音の苦情が増加しているとのことですが,規制の変更や特定施設や特定建設作業の追加を検討されていますでしょうか。もし,既に検討されているのであれば,今後の予定を教えて下さい。これらの工場や建設作業を規制の対象に加えることで行政指導がしやすくなると思います。また,このような場合にはどのように対応すればよろしいのでしょうか。」(地方公共団体職員)。(Vol.41 No.2)
Vol.41 No.2

(日本騒音制御工学会事務局 堀江侑史)

ご質問のように最近では,必ずしも騒音レベルが規制値を超えていない場合や騒音規制法の対象とならない施設や建設作業からの騒音についての苦情相談も増えています。このように法規制の対象となっていない工場等からの相談については,環境行政職員が発生源や苦情者への対応に苦慮している現状もあるようです。また環境省では現在,規制の変更や追加について具体的な作業は行われていないと聞いています。
この場合に対応する根拠の一つとして「公害紛争処理法」があります。「公害」は環境基本法により,事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる①大気の汚染,②水質の汚濁,③土壌の汚染,④騒音,⑤振動,⑥地盤の沈下及び⑦悪臭によって,人の健康又は生活環境に係る被害が生ずること,と定義されており,この①から⑦までの7種類は,“典型7 公害”と呼ばれています。これら典型7 公害に関係する紛争であれば,公害紛争処理法により発生源や苦情者に対して対応が可能と考えられます。また「相当範囲にわたる」については,ある程度の広がりがあれば,被害者が一人であっても対象となります。最近苦情が多くなってきた低周波音についても,騒音・振動に関係する事案としてとらえられる場合は,この制度の対象と考えられます。
苦情対応には,騒音,低周波音,振動などの測定が必要であり,先ずは当事者が自ら測定を行う事が求められますが,管轄の地方公共団体も,苦情が寄せられた場合には可能な限り騒音,低周波音,振動の測定を行う事が期待されています。事業活動に伴い機器から発生する継続的な騒音等についても同様に対応を行う必要があります。
建設工事等の際に発生する騒音や振動についての被害に伴う苦情は,その期間中に騒音や振動の測定を行う必要があります。一般的な建設工事等の際に発生する振動に伴う建物被害の場合には,一般的な建物の経年劣化によるものなのか,地震等による被害なのかを適切に評価/判断しなければならず,専門的な知識が必要となる事案も多々見られます。工事開始の前,工事後に双方で被害の状況を確認することが望ましいです。
以上のように騒音規制法(または振動規制法)で対応が難しい被害の苦情があった場合には,公害紛争処理法を適用して住民対応が可能であるので環境行政担当職員も,いろいろな面から住民の生活環境を守るための対応が求められています。

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騒音規制法第17 条に定められている,自動車騒音の測定に基づく要請及び意見と同法第18 条の常時監視の違いについて教えてください。(Vol.41 No.5)
Vol.41 No.5

(千葉県環境研究センター 石橋雅之)

両方とも自動車騒音の測定に係るものですが,以下のとおり測定目的や測定方法が異なっています。

1「自動車騒音の測定に基づく要請及び意見」

騒音規制法(以下,「法」という)第17条第1項では,市町村長が指定地域内で自動車騒音を測定した場合において,同地域内の自動車騒音が環境省令で定める限度(要請限度)を超えており,道路周辺の生活環境が著しく損なわれていると認めるときは,都道府県公安委員会に対して,道路交通法の規定による措置をとるよう要請するものとされています。

措置としては,信号機又は道路標識等の設置及び管理による自動車通行禁止等の交通規制,最高速度制限等があげられます1)。

また,法第17 条第3項では,市町村長が指定地域内で自動車騒音を測定し必要があると認めるときは,道路管理者又は関係行政機関の長に対して自動車騒音の減少のために必要な意見を述べることができるものとされています。トンネルの出入口,適切な舗装のない区間,高架道路,立体交差等,交通規制だけでは騒音対策が難しい箇所における騒音防止のために,道路構造・舗装の改良,遮音壁の設置等について意見を述べることができます1)。

要請限度の測定は,沿道住民から苦情が市町村に寄せられた場合に,その道路の自動車騒音が要請限度を超えているかを判断するために必要な測定です。測定においては,連続する7日間のうち当該自動車騒音の状況を代表すると認められる3日を選定します。なお,環境省水・大気環境局大気生活環境室の公表資料2)によると,騒音規制法の指定地域内における平成27年度の自動車騒音の苦情は293 件であり,そのうち66 件で騒音の測定が行われ,その結果要請限度を超えていたものは11 件でした。また,都道府県公安委員会に対する交通規制等の要請は0件,道路管理者に対する道路の構造等の意見陳述が1件となっています。

2「自動車騒音の常時監視」

国が,環境基準の達成状況を把握し,自動車単体規制の強化等の自動車騒音対策を進めるための基礎資料を得ることが必要であることから,法第18 条第1項で都道府県知事(市の区域は市長)は,自動車騒音の状況を常時監視しなければならないこととされています。

監視地域は,未供用の道路を除き,原則として2車線以上の車線を有する道路(市町村道は,特別区道を含むものとし,原則4車線以上)に面する住居等が存在する地域とされており,道路端から50メートルの範囲が評価対象です。道路端で等価騒音レベルを測定した結果を用いて,監視地域内の全ての住居の騒音レベルをシミュレーションし,環境基準を超過している戸数及び超過する割合を算出します。測定は平日の1日間(原則として連続24時間)行います。

なお.環境省水・大気環境局自動車環境対策課の公表資料3)によると,平成27年度は,全国837地方公共団体において環境基準の達成状況の評価が実施され,評価対象818 万5,300 戸の住居等(道路に面する地域の延長58,033km)のうち昼間・夜間のいずれか又は両方で環境基準を超過していたのは,52万2,700戸6.4%)であり,そのうち昼夜間とも環境基準を超過していたのは24 万7,900 戸(3.0%)となっています。

このように,法第17条が,自動車騒音が要請限度を超えた場合の改善措置の要請を規定しているのに対して,法第18 条は自動車騒音の面的評価を目的とした規定という違いがあります。

参考文献

1 )(社)日本騒音制御工学会編: 騒音規制の手引き[第2版](技報堂出版,2007),pp. 106-111.

2)環境省水・大気環境局大気生活環境室: 平成27 年度騒音規制法等施行状況調査の結果について(平成29年1月31日).

3)環境省水・大気環境局自動車環境対策課: 平成27 年度自動車交通騒音の状況(平成29年2月17日).

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高周波音とはどのようなものですか。(Vol.39 No.4)
Vol.39 No.4

(空港環境整備協会航空環境研究センター 上田麻理)

「高周波音とはどのようなものですか。」

 周波数帯域など,厳格な定義は定められていません。我々の研究グループは,騒音を対象とした研究の場合,10 kHz〜32 kHz程度のいわゆる可人によって聴こえる可能性がある高い周波数の空気伝搬音を高周波音と定義して使用しています。振動分野や超音波の分野では100 Hzであっても高周波音と呼ぶこともあります。

「超音波との違いは何ですか。」

 音響用語辞典※の「超音波」の項目では,「周波数が高く,正常な聴力をもつ人間には聞こえない音波。」と記載されており,その周波数は「20,000 Hz以上の音波を指す」とも書かれています。また,「それ以下の周波数でも,人の耳で聞くことを目的としない場合」を超音波と呼ぶとされています。なので,ある程度高い周波数帯域で「聴こえる,聴こえないか」が高周波音と超音波の大きな違いだと思います。ただし,音響用語辞典に従った場合,「聴くことを目的としない場合」であっても最近では幼児・子ども・若齢者層は20 kHz以上の周波数であっても,「聴こえる」という報告(図1)があるので,聴くことを目的としなくても聴こえてしまう場合の扱いは今後検討が必要かと思います。

 

「また実際にはどんなところで聴こえるものですか。」

 都市の環境騒音としては,走行中の列車から15〜22 kHzに複数の顕著な成分が観測されています。列車の高周波音は特に,曲線軌道の沿線で列車が走っている時に聴こえる確率が高いようです。

 産業機器の代表としては19 kHz〜22 kHz程度の高周波音を使ったネズミ撃退機があります。これはビルの出入り口付近に設置されていることが多く,その音圧は100 dB(SPL)を超えていることもあります。最近ではビルだけでなく,スーパーの出入り口などでも多数観測されています。

 その他に医療機器として歯科タービン音にも6 kHz~7 kHzに卓越した成分が含まれていますし,音響通信技術としても19 kHz程度の高周波音が使われています。ここに紹介したのはほんの一例ですが,その他にも高周波音を発する機器・装置が多数存在しているようです。騒音制御工学会の高周波分科会では身の回りにある高周波音の調査についても今後力を注いで行く予定です。

               図-1 児童の高周波音可聴閾

出典:M.Ueda et al., Proc. 11th International Congress on Noise as a Public Health Problem, 2014.)

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幹線道路での騒音を評価する際、幹線道路近接空間の特例がありますが、その近接空間の具体的な範囲はどのように決めたらよいのでしょう。(Vol.28 No.4)
                                (環境調査会社員他)

(ゼット音響 北川 保、綜合技術C 三宅龍雄)

この関係のご質問は多く寄せられております。

「騒音に係る環境基準」(平成10年9月30日環境庁告示第64号)には、「幹線交通を担う道路に近接する空間」(略して幹線道路近接空間)における特例が示されていますが、この「幹線交通を担う道路に近接する空間」の定義は、通達「騒音に係る環境基準の改正について」(平成10年9月30日環大企第257号)の第三項3で次のように記されています。

第三 3 「幹線交通を担う道路に近接する空間」とは、次の車線区分に応じ道路端からの距離によりその範囲を特定するものとする。

2車線以下の車線を有する幹線交通を担う道路 15メートル

2車線を超える車線を有する幹線交通を担う道路 20メートル

また、「騒音規制法第17条第1項の規定に基づく指定地域内における自動車騒音の限度を定める省令」(平成12年3月2日総理府令第15号)の第3条には以下の記述があります。

第3条 別表に掲げる区域のうち幹線交通を担う道路に近接する区域(2車線以下の車線を有する場合は道路の敷地の境界線から15メートル、2車線を超える車線を有する道路の場合は道路の敷地の境界線から20メートルまでの範囲をいう。)に係る限度は、前条の規定にかかわらず、昼間においては75デシベル、夜間においては70デシベルとする。

以上のように、「幹線交通を担う道路に近接する空間」が始まる地点は、「道路端」もしくは「道路の敷地の境界線」と定義されています。

しかし、実際の様々な道路条件において「道路端」あるいは「道路敷地境界線」がどこになるかは判断に迷うケースが多々あると思われます。参考に、代表的なケースとして図1~4の具体例で境界線の位置を示すことにします。

要は、幹線交通を担う道路を構成する車道、歩道、道路法面、環境施設帯などの一体的な道路敷地の境界線ということになります。

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『自動車騒音の状況の常時監視に係る法定受託事務の処理基準』には、評価結果の活用として、「騒音マップ等を作成して活用する」とありますが、どのような騒音マップ等を作成して活用すればよいのか、教えて下さい。(Vol.28 No.6)
                               (地方公共団体担当者)

(環境省自動車環境対策課 児玉知之)

騒音規制法第18条に規定される自動車騒音の状況の常時監視(以下「常時監視」という)は、同法第26条により法定受託事務とされています。一方、常時監視結果の公表は、同法第19条に規定される地方自治事務です。したがって、常時監視事務においては、騒音マップの作成等を通知しているものの、各地方公共団体における常時監視事務の成果の公表については、個別の地域の事情に応じた方法によればよいものです。

このような背景から、ここでは環境省が国立環境研究所と共同で作成し、2004年11月にインターネット上で一般公開を開始した全国騒音マップ(http://www-gis.nies.go.jp/noise/car/)について、その制作ポリシーを事例として示すこととします。

環境省が作成し公表した全国騒音マップ(自動車交通騒音実態調査報告-図に画面例)は、自動車交通騒音の支配的な道路に面する地域の騒音曝露状況について、常時監視報告に基づく騒音情報を地理情報と共に情報提供するものです。

道路に面する地域における騒音曝露状況の表示方法は様々なものが考えられますが、環境省では、騒音に係る環境基準に基づいて「環境基準値を超過する住居等の戸数及び割合」を基本とした騒音マップを作ることとしました。この際、サイトの閲覧者が一般住民から行政の方まで不特定多数にわたること、及び制作上の維持・管理の観点などから、特に次の点に留意することとしました。

  • 1.背景地図は、常時監視が個別の住居等情報の識別を指向していないこと等から、1:25000縮尺の国土地理院数値地図25000(地図画像、空間データ基盤)を使用する。
  • 2.地域の住民、騒音対策の企画者の2つの視点に着目して、環境基準達成率と住居等密度(戸/km)について、色度に明度・彩度を組み合わせた2次元色パレットにより同時に表現する。
  • 3.環境質の経年変化・推移を把握することが重要なことからも、GIS(地理情報システム)座標情報と詳細な属性情報を分ける等、データ構造はなるべくシンプルにして、騒音マップの維持・更新を容易なものとする。
  • 4.全国各地域を、地図画像をクリックすることにより検索可能とするとともに、市区町村・町丁目によっても検索できる。
  • 5.幹線交通を担う道路に近接する空間、幹線交通を担う道路に近接しない空間、及び全体(前者2つを合算したもの)ごとに、環境基準達成状況の評価結果を表示できる。
  • 6.騒音測定結果を表示・閲覧できる。
  • 7.環境省で毎年取りまとめている、「自動車交通騒音実態調査報告」を閲覧し、ダウンロードできる。

最後に、今後の騒音マップの作成にあたっては、いずれの地方公共団体においても、アカウンタビリティーと個人情報保護に留意しつつ、情報更新を踏まえて維持・管理がしやすいデータ整備、インターネットの普及に対応した電子媒体による情報提供、及び国土地理情報を重ね合わせる等の各種騒音対策分析・活用方途、などについても検討し、生活環境の質の向上に寄与できる騒音マップが制作されることを期待します。

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