日本騒音制御工学会は、騒音・振動およびその制御に関する学術・技術の発展と普及を図り, 生活環境の保全と向上に寄与いたします

公益社団法人 日本騒音制御工学会

Q&A

「 数値解析 」の関連記事一覧

時間領域差分法(FDTD 法)による予測計算の現状について教えて下さい。(Vol.41No.6)
Vol.41 No.6

(東京理科大学 朝倉巧)

時間領域差分法(Finite-difference time-domain method)は、有限要素法、境界要素法と並び、数値解析の一翼を担う代表的な解析手法といえます。有限差分法の考え方を用いて,物理現象を記述した偏微分方程式を任意の境界条件を基に解くことができます。様々な形状を有する場(電磁場,音場,弾性場など)を対象とした解析を可能とし、比較的計算機負荷は軽く、解析アルゴリズムもシンプルであることから、研究のみならず、実務等への適用も比較的容易な解析手法といえます。

 この手法は,1966年にマイクロ波の分野でYee 1)によってその原理が提案され、計算機の発展とともに急速に普及してきました。最初期は電磁場を対象としたアンテナ解析等に用いられましたが、近年では弾性場や音場、振動場等の予測にも広く応用されています。

FDTD法の概要および関連資料

FDTD法は、波動伝搬を時間領域および空間領域においてシミュレートするため、例えば波動が時間を追って伝搬していく様子を可視化することができます。また、伝搬した波動情報へフーリエ変換を適用することによって、周波数領域データとして活用するなど、定量的な分析へも利用可能です。特に可視化技術の利用は非常に有用であり、自らの研究や業務を遂行する際、その背景にある物理メカニズムを把握するために活用するような状況に加え、研究内容をプレゼンテーションする際の説得力あるツールとして活用することもできます。近年はオープンソースの可視化ソフトであるParaView 2)などの利用も可能となっています。

解析コードとしては、商用ソフトウェアあるいは無償のソフトウェア(例えば豊田によるVAFDTD 3))が利用可能となっています。また、その解析アルゴリズムのシンプルさから、独自の解析プログラムを作製した上で研究や業務に利用している研究者も多くみられます。

FDTD法に関連する文献としては、多数の入門書等が出版されており、その基礎から実践までを取り扱った文献4)、さまざまな分野における科学技術計算へFDTD法を応用した事例を豊富に含んだ文献5)、また入門者がFDTD法をプログラミングする際に有力な手助けとなる文献6)も出版されています。

FDTD法の特長

FDTD法は、対象とする場を空間的なセルで離散化し、これらの各セルに定義された音圧等の物理パラメータを解析します。このときに用いられる差分方程式は、波動方程式等を有限差分近似した上で得られるため、この差分近似に起因して分散誤差が生じます。この問題は、通常用いられる中心差分よりも高次の差分近似を用いることでその精度を向上したFDTD(2.4)法、さらに高次の差分近似を用いた手法7)を用いることで、その影響を軽減することが可能です。また、精度を現状と同等に保てばよいような場合には、セルの寸法を大きく設定することができるため、精度向上だけでなく、解析負荷の低減にも大きく寄与します。

FDTD法の応用例

音響分野および振動分野におけるFDTD法を用いた解析例について紹介します。

音場解析への適用例としては、各種拡散体による音響散乱の効果がFDTD解析結果に基づいて検討されています8).さらに踏み込んだ検討例として、室内表面の吸音特性を高精度にモデル化する手法を援用し、実大ホールにおけるインパルス応答を予測計算した事例も報告されています9)。吸音材内部の音場も含め、その吸音特性が解析された事例10)、人の聴感上の印象に大きく影響する頭部伝達関数をFDTD解析で検討した事例11)なども興味深い事例といえます。

振動場への適用例としては、弾性波解析へFDTD解析を応用して床衝撃音を解析した事例12)、建物を薄板および梁要素でモデル化し、大規模な建築物における固体伝搬音を解析した事例13)などが報告されており、上述した音響解析と連成させることにより音響放射などの現象も解析することが可能です。

以上のように、音響および振動分野だけでも多数の応用例があることから、今後もさらなる発展が見込まれる解析手法といえます。

参 考 文 献

  • Yee : Numerical solution of initial boundary value problems involving Maxwell’s equations in isotropic media, IEEE Trans. Antennas Propag. 14 (3), pp. 302–307 (1966).
  • ParaView, https://www.paraview.org/

閉じる

分野

キーワード

フリーワード

PAGE TOP