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公益社団法人 日本騒音制御工学会

Q&A

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吸音材料として用いられる多孔質材料の吸音メカニズムと使用上の注意点について教えてください。(Vol.42No.5)
Vol.42 No.5

(エム・ワイ・アクーステク 山口道征)

多孔質材料とは,細かい気孔が無数にあいている材料で,多孔質を構成する素材は硬い物から軟らかい物まで多岐にわたり,構造も連通性から非連通性のものまで種々の材料があり,吸音・遮音材料として用いることができる。

◇多孔質材料の吸音要素
多孔質材料中の吸音要素は音波が細孔中を伝搬する際の粘性減衰,言わば,材料中の空気伝搬路における減衰,多孔質構造体の動的弾性挙動による振動減衰,言わば,固体伝搬路における減衰,空気音と固体音の相互作用,他に熱伝導,熱交換などに起因する減衰により音波は熱として消散され消滅する。
◇吸音性を表す量
通常の多孔質構造体においては,構造体自体も弾性体であるため,吸音性を表す量としては,固体振動要素を加味する必要があるが,吸音のメカニズムが複雑になるため,ここでは,構造体は剛であると仮定し,連通性の空気伝搬路における減衰のみに着目し説明を行う。
多孔質材料に音波が入射するとその表面で音波は入射方向に反射する波と材料中に浸入する波に分かれる。材料中に浸入した音波は減衰しつつ伝搬していくもので,伝搬定数γ および特性インピーダンスZcが材料中での音波の挙動を規定する基礎量となる。ここでは以下,論理的・実証的に扱いやすい条件である平面音波が材料に垂直に入射する場合を想定し話を進めることとする。
γ およびZcは下式で表すことができる。
γ=α+j・β 

γ : 伝搬定数

α : 減衰定数(nepers/m)
(1neper=8.686dB)
β : 位相定数=ω/C(radian/m)

(ω : 角周波数(radian/s),C : 位相速度(m/s))

Zc=ρe・Ce 

Zc : 材料の特性インピーダンス(N・s/m3)

ρe : 実効(等価)複素密度(kg/m3)

Ce : 実効(等価)複素位相速度(m/s)

◇伝搬定数γ および特性インピーダンスZcの計測方法
γ, Zcは多孔質材料に関わる音波の挙動を規定する複素基礎量であるため,これらの未知量を正確に計測できれば,多孔質材料のエネルギー評価値(吸収率・吸音率・透過率・透過損失など)などを容易に求めることができる。その方法は音響管を用いた伝達関数法1)と称する計測方法である。
◇計測上の注意点2)
音響管で測定すべき材料は連通性の多孔質材料が基本となるが,骨格構造が剛でないグラスウールなどの繊維系材料や軟質ポリウレタンフォームのような一般の材料においては,測定結果の中に骨格構造の振動の影響が加味された結果となるため注意が必要となる。第一に注意すべき点は,試料を管内にセットした際の拘束条件の影響により生じる曲げ振動であり,これは不要共振として取り除くべきもので,測定結果に影響を与える。
二番目も振動の問題であり,これは不要振動ではないが大いに認識すべき点である。第一の場合と同様,剛でない骨格構造をもつ試料は,不要共振とは別に,嵩高構造体としての縦振動の影響が測定値に必然的に加味される。そのため,同種の試料であっても,試料厚,平面寸法の差異により縦弾性率が違うため,測定結果に違いが生じることがある。

 

参考文献

1 )H. Utsuno, T. Tanaka, T. Fujiwara : Transfer function
method for measuring characteristics impedance and
propagation constant of porous materials, J.A.S.A., vol.
86, pp. 637-643 (1989).
2 )山口道征,豊田政弘: 小特集「音響管による垂直入射
吸音率測定」にあたって,日本音響学会誌,vol. 68,
no. 9,pp. 461-462(2012).

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高性能な吸音材料は、遮音性能も良いと考えてもよいのですか。例えば、グラスウールは吸音材として高い性能を示しますが、遮音材料としても有効な材料なのでしょうか。
                                 (設計事務所社員)

(財団法人小林理学研究所 杉江 聡)

このような質問は,吸音という言葉のイメージから出てくるものだと思います。吸音と聞くと,あたかも冷蔵庫の中にある脱臭剤のようなものをイメージしてしまい,吸音材がそこにあるだけで,周りの音を吸い取ってしまうと考えがちです。

しかし,そうではありません。まずは,吸音率と透過率の定義を示します。Fig. 1に示すように,透過率はPt/Piで,吸音率は1-(Pr/Pi)2です。すなわち,吸音率は入射エネルギーに対する「反射しなかったエネルギー」となり,仮に材料内部で音が減衰していなくても,音波が材料を透過して返って来なければ,吸音率が高いことになります。(注: 一般的には,材料背後に剛壁を設けた状態での吸音率が示されます。)一方,透過率は高くなります(音響透過損失は小さくなります)。

グラスウール等の多孔質材料の吸音メカニズムは,材料内を音波が透過する際に,材料を構成する繊維と空気の摩擦によって音のエネルギーが熱エネルギーに変換されて消散されるというものです。そのため,高性能な吸音材料は,効率よく音波を材料内に取り込むことで,通気性が高くなるように工夫されています。このことは逆に音波を透過しやすくしていることになり,高い吸音率をもつ材料は,高い遮音性能を発揮できないということになります。その違いがわかる一例をFig.2に示します1)。軽量コンクリートブロックは通気性があり吸音性をある程度示します。しかし,ブロックの表面に塗装を施し通気性を低減すると吸音性は失われる一方,遮音性能は高くなることがわかります。

単体では高い遮音性能がない吸音材料でも,他の材料と組み合わせると高い遮音性能を発揮する場合があります。例えば,二重壁の中空に吸音材料を充填するという方法があります。2枚のせっこうボード(9.5 mm厚)で製作した二重壁の中空層内に,グラスウールを挿入した例をFig.3に示します2)。吸音材料がない場合に比べ,吸音材料が入ることにより,中高音域で遮音性能が増加していることがわかります。また,吸音材料の厚さの増加とともに遮音性能も増加することもわかります。

吸音材料は,単体では大きな遮音性能を示しませんが,他の遮音材料と併用することにより,その遮音性能を向上させることができます。


Fig. 1 吸音率と透過率


Fig. 2 通気性の有無による遮音性能の違い


Fig. 3 二重壁への吸音材料の挿入効果

参考文献

  • 1)騒音制御工学会編: 騒音制御ハンドブック[資料編](技報堂, 2001)
  • 2)杉江 他: 中空二重壁の音響透過損失に与える吸音材料の影響-小試験体による検討-, 日本音響学会講演論文集CD-ROM, (2005.9)

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工学会の講習会で、空気は通す(排気?)が音は通さないといった構造物の説明がありましたが、具体的に構造を教えて下さい。
                                      (匿名)

((財)小林理学研究所 松本敏雄)

まず、音は空気中を伝わる波動です。空気が通れば、必ず音は伝わります。したがって、「空気は通すが音は通さない構造物」はちょっと言い過ぎです。しかし、空気を通しながら音を減衰させる物はあります。身近な例としては自動車のマフラーや建物内の空調設備用吸音ダクトなどの消音器(サイレンサ)が挙げられます。上記の質問を「空気は通すが音を通しにくい構造物」とするとそれはたぶん吸音ルーバーのことではないでしょうか。吸音ルーバーは、掘割構造道路やトンネル出入口部に架設し、道路交通騒音を対策するための道路施設です。もともとはトンネル出入口部の照度調節(明るさの変化をやわらげる)装置として開発されたものです。この装置はルーバーブレードといわれる薄いパネル板から構成された格子状の構造物であり、光学効果の他に空気が通ることで排気ガスの拡散を妨げないという換気効果も有しています。騒音に対してはこのブレード表面を吸音性にすることで、減音効果を得ることができます。ルーバーブレードは光が直接差し込まない間隔(外部から音源が直接見通せない間隔)で部材に取りつけられています。このブレードは「く」の字型に成型されたステンレス製の表面材(パンチングメタル[開孔率約35%])で吸音材(グラスウール[密度32kg/m3])を挟む構造となっています。図1に代表的な吸音ルーバーの構造を示します。吸音ルーバーはブレードの吸音面積や厚さにより減音量を調節することが可能で、自動車騒音(A特性加重)に対して15dB程度の挿入損失(ルーバーが有る時と無い時の差)が得られるものもあります。

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