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公益社団法人 日本騒音制御工学会

Q&A

「 信号処理 」の関連記事一覧

室間音圧レベル差や床衝撃音レベルなどの測定で、受音側室内の吸音力はどの程度測定値に影響するのか目安といったものはありますか。(Vol.36 No.3)
                             (石膏ボード製造会社 社員)

((株)鹿島建設 技術研究所 安藤 啓)

室間音圧レベル差や重量・軽量床衝撃音レベルの現場における測定方法は,日本では JIS(日本工業規格)に制定されており,それには JIS A 1417(2000)“建築物の空気音遮断性能の測定方法”とJIS A 1418(2000)“建築物の床衝撃音遮断性能の測定方法”があります。さらに後者は 2 部構成となっており,第一部は標準軽量衝撃源による方法,第二部は標準重量衝撃源による方法となっております。ご質問のように,受音側の等価吸音面積(吸音力)によってこの測定結果は変化します。定常的な音の場合,等価吸音面積が 2 倍になれば,その場の音圧レベルは,理論的には 3 dB の低下となります。室外から入射して来る騒音を低減させる方法としては,この吸音力を増加させることは有効な方法です。

隣室からの騒音や上階からの床衝撃音を聞いている人にとっては,実際の値そのものが,音環境となりますので,上記の JIS においても測定された絶対値で評価する手法がとられています。しかし,壁や床といった建築部位材単体の遮断性能を評価し,他部材と比較する場合には,この吸音力の影響を除く必要があります,そこで,この実測値以外に上記のJIS では,受音室内の残響時間を測定して,そこから計算される吸音力を用いて換算し比較する方法も提示されています。残響時間は 0.5 秒,吸音力は 10m2を基準として換算した値で,吸音力を基準とした場合には規準化,残響時間を基準とした場合には標準化という言葉をつけて区別しています。すなわち,音圧レベル差の場合には規準化音圧レベル差と標準化音圧レベル差,軽量床衝撃音では規準化床衝撃音レベルと標準化床衝撃音レベルとなります。但し,重量床衝撃音のみは,パルス的な衝撃音の最大値を測定するため,吸音力の影響は受け難いためこの考え方を取っていません。

これらを詳しく知りたい方は,関連 JIS を参照してください。

関連 JIS

  • ・JIS A 1416 実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法.
  • ・JIS A 1417 建築物の空気音遮断性能の測定方法.
  • ・JIS A 1418-1 建築物の床衝撃音遮断性能の測定方法─第一部 : 標準軽量衝撃源による方法.
  • ・JIS A 1418-2 建築物の床衝撃音遮断性能の測定方法─第二部 : 標準重量衝撃源による方法.
  • ・JIS A 1419-1 建築物及び建築部材の遮音性能の評価方法─第一部 : 空気音遮断性能.
  • ・JIS A 1419-2 建築物及び建築部材の遮音性能の評価方法─第二部 : 床衝撃音遮断性能.

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最近,ディジタル信号処理の分野でウェーブレット解析という言葉を耳にしますが,これは従来のフーリエ解析に基づく信号処理方法と比べてどのような特徴があり,また現在どの程度研究が進んでいるのでしょうか。
                                      (匿名)

(大阪大学大学院 青野正二)

ディジタル信号処理の分野においては近年様々な進歩が見られ,1980年代後半にはDaubechiesらによってウェーブレット解析の基礎が固められました。それは,画像やオーディオデータの圧縮の分野では応用が進んでいます。しかしその他には,現在まで音響分野におけるウェーブレットの応用例は少なく,その有効利用への示唆も十分には与えられていないようです。

なかでも,時間-周波数平面上に直交系を構成する直交ウェーブレットは,他では得られない卓越した特徴をもっています。直交ウェーブレットでは,得られる情報の定量性や完全再構成が保証されるだけでなく,本来直交関係にある時間と周波数の2つの次元によって張られる領域上で全ての係数が互いに独立しています。そのため,そこには原信号の情報が過不足なく保持されており,また任意の変形に対して実波形と1対1の対応が保たれます。

このような特徴を活かして,最近では例えば,直交ウェーブレットを用いた音響系の計測や処理についての研究も行われています。つまり,フーリエ解析に基づくインパルス応答の概念を時間-周波数平面上に拡張し,周波数ごとに得られる単一応答をそのまま周波数ごとの伝達関数として扱おうとするものです。これにより,各周波数対の応答をまとめて1本のインパルス応答としたり,既存のインパルス応答を部分的に修正することも可能となります。また,非線形系に対して,単一ウェーブレット応答に含まれるある種の非線形特性は,それを伝達関数とした系の出力の計算において失われずに出力結果に反映させることができます。そこで,高次の非線形歪の特性をもつスピーカシステムに対して,単一ウェーブレット応答によりその高調波歪の特性を捉え,低減処理を行おうという研究も見られます。

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FFT分析ではアベレージングと時間窓関数に数タイプがありますが、 どのような音にどんなタイプを選択すればよいのでしょうか。
                                      (匿名)

((株)荏原総合研究所 丸田芳幸)

一般的なFFT分析器にはアベレージング(平均化)機能として、 「時間領域での平均」「周波数領域での平均」「MAX(またはピーク)平均」 「トリガ平均」「指数平均」があります。また、 時間窓関数としては「レクタンギュラー(方形)」「ハニング」 「ハミング」が一般的です。

まず窓関数に関して、例えば城戸著「FFTアナライザ活用マニュアル」 (日本プラントメンテナンス協会発行)から説明図を引用します。 正弦波及び第10高調波までを含む複合波信号を方形窓で分析すると、 信号の基本周期の整数倍が時間窓と等しければ正確に分析でき、 図1の(a)を得ます。しかし非整数倍の時間窓では(b)のように、 各成分の周波数とそのピーク値は(a)と等しいのですが、 本来存在しない周波数成分が大きな値として分析結果に現れます。 時間窓が基本周期の非整数倍であることが騒音分析の一般的な条件ですから、 ピーク成分以外に存在する成分もFFT分析で理解しようとすると、 方形窓では不十分になります。

そこで非整数倍の時間窓でも正確な分析を期待して、 信号を周期関数に近づけるハニング関数やハミング関数の時間窓を用います。 上記複合波信号をハニング窓とハミング窓で分析すると、各々(c)、 (d)となります。どちらもピーク周波数は方形窓による分析と同じですが、 ピーク成分の値は方形窓の結果より小さくなります。 ハニング窓とハミング窓の違いはピークの形状とピーク以外成分の値に現れます。 ピーク成分以外の成分を重視するならハニング窓が、 ピーク成分の尖鋭度を重視するならハミング窓が適しています。

しかし、これらの機能を使いこなすためには経験によるノウハウが必要です。 回答者は上記のような解説書に基づいて次のように使い分けています。

時系列波形を観察したり伝達関数や相関関数解析を行う場合は、 方形窓で時間領域平均かトリガ平均を用います。

スペクトル分析では周波数領域の平均を用いますが、 騒音波形は一般的に周期関数ではありませんので、 適当な時間窓を次のように選定しています。

  • 方形窓支配的な周波数成分が明確であって、そのピークレベルの正確さを希望する分析。設定した周波数範囲内で高周波数成分が多い騒音を分析する場合。
  • ハニング窓空調設備の音のように低周波音が支配的だが高周波数成分まで分析する場合。 また風切り音のようにピーク成分が不明で広帯域周波数の場合。
  • ハミング窓エンジン音のように複数のピーク成分が予想され、 スペクトルの裾の部分の形状よりもピークの値に精度を求める場合。

以上のような騒音では連続的な平均化を行いますが、 プレス機械のような間欠騒音ではトリガ平均で方形窓を、 また噴流音のように広帯域周波数音が支配的でその周波数の変化を 観察する場合にはハニング窓と指数平均を、 さらにある時間内の最大値成分を知りたい場合や瞬時現象の分析には MAX平均を用いています。

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