平成16年度低周波音分科会活動報告

主査 落合 博明

低周波音分科会は28名の委員と7名の特別委員で構成されている。分科会では低周波音の実態,測定,影響、評価、対策方法、諸外国の推奨基準等について検討を行っている。近年、固定発生源からの低レベルの低周波音苦情が自治体に多く寄せられ、早急な対応が迫られていた。分科会に参加している委員の協力によりガイドラインの研究が行われ、環境省より「低周波音問題対応の手引書」が公表された。 今年度は、「低周波音問題対応の手引書」に関する理解を深めるとともに,最近の低周波音の事例紹介を行い,苦情の傾向や苦情対応における問題点等について例会で検討を行った。

[主査] 落合 博明 (財)小林理学研究所
[幹事] 井上 保雄 (株)アイ・エヌ・シー・エンジニアリング
石井  晧 千葉県環境研究センター大気部 企画情報室
犬飼 幸男 (独)産業技術総合研究所人間福祉医工学研究部門客員研究員
今泉 博之 (独)産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門
大熊 恒靖 (社)日本騒音制御工学会認定技士
岡田  健 (株)エス・アイ・テクノロジー
沖山 文敏 (株)オオバ 環境本部
織田 光秋 川崎重工業(株)技術研究所
菊地 勝浩 (財)鉄道総合技術研究所 環境工学研究部
工藤 信之 東京農工大学客員教授
国松  直 (独)産業技術総合研究所 活断層研究センター
倉片 憲治 (独)産業技術総合研究所 人間福祉医工学研究部門
黒田 英司 (独)産業技術総合研究所
塩田 正純 工学院大学工学部建築学科大学院 建築学専攻
高橋 保盛 (独)産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門
高橋 幸雄 (独)産業医学総合研究所人間工学特性研究部
多屋 秀人 (独)産業技術総合研究所人間福祉医工学研究部門
長谷部正基 北海道大学大学院工学研究科 空間性能システム専攻
葉山 賢司 川崎重工業(株)航空宇宙カンパニー
堀江 裕一 神奈川県環境科学センター情報交流部
前田 節雄 (独)産業医学総合研究所人間工学特性研究部
町田 信夫 日本大学理工学部精密機械工学科
松本 泰尚 埼玉大学工学部建設工学科
山田 伸志 山梨大学工学部機械システム工学科
横島 潤紀 神奈川県環境科学センター大気環境部
若林 友晴 リオン(株)計測器技術部
渡辺 敏夫 福島工業高等専門学校
時田 保夫 (財)小林理学研究所
中野 有朋 中野環境クリニック
井清 武弘 ベトナム炭鉱ガス安全管理センター
藤本 正典 環境管理局大気生活環境室 室長補佐
斎藤 輝彦 環境管理局大気生活環境室 振動騒音係長
迫越 理 環境管理局大気生活環境室 振動騒音係



低周波音分科会資料




低周波音分科会の活動状況と低周波音に関する動向


1. 低周波音分科会の活動状況

 我国で低周波音問題が発生したのは1970年頃のことである。当初は工場・事業場からの超低周波音による建具のがたつき等の物的苦情が苦情の多くを占めていたが、1980年頃までに、工場事業場で超低周波音の対策が進み、苦情件数は減少した。環境庁では1976年から低周波音(当時は低周波空気振動と呼ばれた)の実態調査を開始し、1984年12月にそれまでの調査結果をとりまとめて公表している。
 日本騒音制御工学会は1976年の5月に設立された。毎年秋に開催される研究発表会では7〜8件/年程度の低周波音に関する発表があった。
 低周波音分科会は1984年12月に主査:山田伸志教授、委員11名、顧問3名で発足し、1985年2月に第1回分科会を開催した。以降年3回程度の割合で現在までに通算65回の分科会を開催し、情報交換・意見交換を行っている。また、環境庁の調査への協力も行っている。
 以下に、分科会の活動状況と低周波音に関する動向を述べる。

 1986年からは低周波音の測定方法についての検討を行い、1991年4月、第6回技術部会分科会報告会にて「低周波音及び超低周波音の測定方法(案)」を提案し、学会誌にも掲載した。この時点では低周波音の周波数重み特性の国際規格であるG特性はまだ決まっておらず、平坦特性・LSL特性・LF1特性、G1特性(現G特性)・G2特性・ISPL特性などが併記された。
 1993年、新幹線の高速化に伴い高速列車のトンネル突入時に発生する低周波音による苦情が増加し、環境庁では1994年から低周波音に関する調査を再開した。分科会では、1991年頃から衝撃性の低周波音に関する検討を開始し、1996年1月には「発破による音と振動」(山海堂)を低周波音分科会編として出版した。1997年頃からは低周波音の実態・伝搬・計測方法等について検討を行った。
 一方海外では、1995年にISO-7196 で超低周波音の周波数重み特性であるG特性が規定された。環境庁では、調査委員会の結果をもとに2000年12月に「低周波音の測定方法に関するマニュアル」を公表した。マニュアルではG特性音圧レベルと1/3オクターブバンド音圧レベルを測定する。これにより、統一した方法により低周波音の測定データが得られるようになった。
 近年、低周波音に関する関心の高まりや家屋の遮音性能向上等により、心身に係る低周波音苦情が急増している。苦情発生源の多くは近隣の工場・店舗等に設置された機器(固定された発生源)である。これら苦情発生個所の室内で観測される低周波音は、20Hz 〜100Hz程度の周波数域に主要成分を持つものが多い。これらの苦情は室内で問題が発生しており、苦情発生個所で観測される低周波音は音圧レベルの変動が小さく、20〜100Hzの周波数域に主要成分がある。分科会では、2001年頃からこの種の低周波音に係る苦情事例の紹介や、苦情の対処方法・評価方法等について海外の動向も含め検討を行っている。2004年6月に環境省より「低周波音問題対応の手引書」が公表された。手引書は音圧レベル変動の小さい固定発生源からと思われる低周波音苦情が寄せられた場合を対象としているが、その中で、発生源側と苦情者側の対応関係を確認することの重要性と、苦情の原因が低周波音によるものか否かを判断するための目安の値(参照値)が示された。
 低周波音分科会の活動状況と低周波音に関する動向を表-1に示す。


表-1 日本騒音制御工学会低周波音分科会の活動状況と低周波音に関する動向

1970年頃〜
1976年
1976年5月
1984年
1984年12月
1985年2月
1985年〜
1986年5月
1986年〜
1987年7月
1986年〜
1991年4月

1991年〜
1992年
1993年
1993年
1994年〜1997年
1995年
1996年1月
1996年5月
1997年〜
1998年3月
1999年〜
2000年〜
2000年12月
2001年〜
2002年3月
2002年〜2003年
2002年〜
2004年6月
2006年2月

我国で低周波音問題発生。
環境庁、低周波空気振動実態調査を開始。
日本騒音制御工学会設立。
環境庁、低周波空気振動調査結果を公表。
低周波音分科会発足。
低周波音分科会第1回分科会を開催。
既存の基礎研究結果・フィールド調査結果の整理。
第4回技術部会分科会報告会にて報告。
低周波音の閾値、影響、評価、対策事例、測定方法等について検討。
第5回技術部会分科会報告会にて報告。
低周波音の測定方法について検討。
第6回技術部会分科会報告会にて報告。
「低周波音及び超低周波音の測定方法(案)」を提案。
衝撃性低周波音に関する検討。
発破関係の方々との情報交換を行う。
「工業火薬協会規格;爆発騒音レベルと低周波音測定方法」の検討。
新幹線の高速化により、低周波音問題が再燃。
環境庁「低周波音影響評価調査」に協力。
ISO-7196、超低周波音の周波数重み特性(G特性)規定。
「発破による音と振動」出版。
技術部会分科会技術報告会にて報告。
低周波音の実態、伝搬、諸外国の動向等について検討。
平成9年度研究会(第4回研究会)にて報告。
低周波音の計測方法について検討。苦情現場の視察を行う。
低周波音の閾値、許容レベル等について検討。
環境庁「低周波音の測定方法に関するマニュアル」公表。
低周波音の評価方法について検討。
環境省「低周波音対策事例集」公表。
環境省「低周波音対策検討調査」に協力。
低周波音の苦情事例と対処方法について検討。
環境省「低周波音問題対応の手引書」公表。
65回の分科会を開催。委員28名、特別委員7名。



2. 低周波音関係の学会発表

 日本騒音制御工学会研究発表会における低周波音関係の発表件数の推移を図-1に示す。図は5年間の発表件数の合計で示してある。これによると、1976年から1985年は8〜9件/年の発表があったが、1986年から2000年は発表件数が減少している。最近5年間は発表件数が再び増加しているが、2000年に環境庁より「低周波音の測定方法に関するマニュアル」が公表されて低周波音に関する関心が高まったこと、2002年から研究発表会が年2回になったこと等によると考えられる。
 図-2に研究発表会における低周波音関係の内容別発表割合の推移を示す。これによると、1976年から1985年は対策に関する発表が、1986年から1990年は実態に関する発表が、1996年から2000年は影響評価に関する発表が多かった。最近の5年間は各項目について概ね均等であった。
なお、本内容は平成18年度春季研究発表会*にて発表したものの一部である。


図-1 低周波音関係の発表件数の推移

図-2 研究発表会における低周波音関係の内容別発表割合の推移

*(文献)落合: 低周波音の現状と課題.日本騒音制御工学会春季研究発表会講演論文集,2006.4,pp.1-6