用語解説 ラ行


■ランダム入射感度 random−insidence sensitivity,random sensitivity

マイクロホンのすべての入射角に対する自由音場感度の二乗平均値の平方根。

■リサジューの図形 Lissajous' figure

互いに垂直な二つの直線上におこっている単振動の合成によって生じる振動の軌跡は,その二つの単振動の振動数の比が整数比のときに定常的な図形となる。この定常的な図形をリサジューの図形という。ただし,この図形は振動数の比が同じであっても,それぞれの単振動の初相*initial phaseの違いによって異なった図形になる。
*注 単振動をχ=χmsin(ω+ψ)としたときのψをいう。

■粒子 particle

弾性体媒質の極めて極小な,しかし十分多くの分子等を含むよ うな部分。音の波長に比べれば十分小さく分子の大きさに比べれ ば十分大きい。

■(瞬時)粒子加速度 (instantaneous)particle acceleration

瞬時粒子速度の時間微分。特に断らない限り粒子加速度は瞬時 粒子加速度の実効値。記号 a

■(瞬時)粒子速度(instantaneous)particle velocity

瞬時粒子変位の時間微分。特に断らない限り粒子速度は瞬時粒子速度の実効値。 記号 uvw

■(瞬時)粒子変位 (instantaneous)particle displacement

弾性体媒質粒子の音波によるある瞬間の変位(ベクトル)。特に 断らない限り粒子変位は与えられた期間についてとった瞬時粒子 変位の実効値。記号ξ。

■了解度 intelligibility、perscent intelligibility了解度 intelligibility、perscent intelligibility

明瞭度試験の場合の無意味な音節などのかわりに、意味がある単語や文章について、、正しく聞き取れたものの割合を百分率で表したもの。単語の場合には単語了解度word intelligibility、文章の場合には文章了解度sentence intelligibilityという。

■両指向性 bidirectional

互に180°の開きをもつ両方向(主軸方向)に対して大きい値 を持ち,かつその値が互に逆位相であって,これと直角な方向に 対して0に近い値を示すような指向性をいう。
主軸の一方から測った任意方向と主軸とのなす角をθとすると, この方向の指向特性はcosθで表わされ,その指向係数は3とな る。なおθ方向に関する指向係数は3 cos2θである。 バッフル板に装着されたスピーカーの放射特性やリボン型ベロシティマイク ロホンの指向性はこれに近いものである。

■臨界抵抗係数,臨界抵抗 critical resistance 臨界減衰係数 critical damping coefficient(BS,JIS B 0153)

粘性減衰係数において運動が振動的となるか非振動的となるか の境界値。1自由度の振動系の運動方程式 mχ・・+rχ+sχ=0の場合, 臨界抵抗 rcは,

r_c=2\sqrt{ms}     (2)

■臨界帯域 Critical Band

ある周波数についての音の大きさの臨界帯域(critical band for loudness)は,その周波数を中心とする周波数帯域に連続的に分 布した音の大きさが,それより狭い帯域に連続的に分布する音圧 レベルが等しい音と同じであるが,それより広い帯域に分布し音 圧レベルが等しい音より小さく感じる帯域である。500 Hz以下の 周波数では臨界帯域幅は約100 Hzで一定,500 Hzから上ではし だいに幅が広くなるが,2000 Hz以上ではほぼ1/4オクターブ の帯域幅となる。
この帯域は,連続スペクトルの雑音がその中心周波数の純音を マスクするときにもその状態が変わる一つの特異な帯域であると もいわれているが,普通の場合にマスキングの臨界帯域(critical band for masking)というのはフレッチャー(H. Fletcher)が1940 年に出した仮説で,スペクトルレベルIS dBの広 帯域雑音が周波数νHzの純音をちょうどマスクするとき,純音の強さ のレベルIνdBは,

IνIS+10 log10Δν

であるとし,Δνをその周波数における臨界帯域幅とした。いい 換えると,ちょうどマスクされる純音の強さと臨界帯域幅の雑音の強さが等しい。あるいは,スペクトル音圧レベル一定の雑音の帯域幅を周波数νHzの純音を中心として広げると,そのバンド音圧レベルは上昇し,νHzの純音に対するマスキングも増大するが,帯域幅が臨界帯域幅以上になると音圧レベルは上昇してもマスキングは増加しないことになる。上の式からも分かるとおり,10 log10Δνはスペクトルレベル0dBの広帯域雑音があるときの最小可聴値に等しくなる。この値は500 Hzくらいから上の周波 数では音の大きさの臨界帯域幅の約1/4の帯域幅となる。したがって,このフレッチャーの臨界帯域を臨界SN比(critical masking ratio,critical ratio)ともいう。

■励振,加振 stimulus 刺激 excitation

系に作用する入力または外力。力学系(機械系)の振動の場合 にその原因となる外力を加振力という。

■地中を伝搬する波,縦波,横波,レーリー波

気体中では波動の原因になる復元力が体積弾性しかないから 縦波しかおこらない。液体の場合はその表面で重力及び表面張 力を復元力として普通の波ができる。これは横波である。
固体の中では体積弾性のほかにシャーの弾性(引きちぎるこ とへの抵抗)があるので縦波も横波も発生するのであるが,そ の他に固体の境界面で別の形の波が起り得る。その中で固体と 気体,例えば空気に接する地表面のような所に発生する波がレ ーリー波と呼ばれるものである。
そして,これらの波の伝搬速度はそれぞれ別であって,縦波 が最も早く,横波が大体その半分以下であり,レーリー波は更 に横波より10〜20%速度がおそい。地震の場合初期微動と呼ば れ,P波とも言うのが縦波であり,続いて一般には低周波で大 きい振動のS波と呼ばれる横波が来る。P波S波は共に球面波 的に拡がるのに対し,レーリー波は振動源の近くで地表面を円 筒波的に伝わる波で,音源の近くでは最も強いもので振動公害 では無視できない波である。

■連続スペクトル continuous spectrum

成分がある周波数範囲にわたって連続的に分布しているスペク トル。継続時間が短い音(単独の)や変化している音などは連続 スペクトルである。

■振動系の減衰に関する諸定数:対数減衰率,減衰比,Q,ロスファクターなど

空気その他媒質中の波動の伝搬に伴う減衰に関しては前回の用 語解説で一応解説した。ここでは機械系,電気系や音響系につい て定義されている減衰に関する諸量について述べる。類似のまた は極めて関係の深い量が,応用物理,機械工学,電気工学などの 分野ごとに別々に慣用され,これを引用した文献などで混乱して 使われていることが多いので,現在主に使われているものに限っ て相互の関係などを考える。
簡単のため集中定数的部分よりなる1自由度の振動系について 考える。抵抗分は速度(または電流)に比例するとして,一般式 が機械系について次式によるものとする。

m\frac{d^2x}{dt^2}+c\frac{dx}{dt}+kx=F     (1)
ここに は変位,F は外力, は質量, は抵抗(減衰係数), はばね定数である。以下主として/2 =ε,=ω02 で考える。この系の固有振動数(共振周波数) 0をとおくと ω0=2π0である。 まず またはdxdt の初期条件だけを考え,その後に周期的 な外力はない場合,いわゆる自由減衰振動から考える。F =0の 場合である。減衰する振動の次々の振幅(同じむきのピーク値) の比の自然対数を対数減衰率(対数減幅率ともいう)といいΔで 記号する。このΔ 及び との間に
\Delta=\frac{\pi c}{\sqrt{km}}     (2)
の関係があるもので,=0ではΔ=0で減衰しない持続振動になる。 (2)式はω02>ε の範囲で成り立つのであるが,一般に振動しながら減衰する場合は常に成立する。
次にε=ω0の場合がクリチカルダンピングの状態で,周期的外力がなければ振動しないのでアペリオディックな減衰をする場合である。 このときの抵抗をと′おいて一般の系の減衰の程度を示すのに,次式で定義される減衰比ζが多く使われる。 c'=2\sqrt{km} であるので,
\zeta=c/c'=c/2\sqrt{km}     (3)
となり,式(2),(3)から次の関係が得られる。
\Delta=2\pi\zeta     (4)
次に強制振動の場合,すなわち(1)式の外力F が任意の周波数 をもつ周期的な外力の場合で,この を変化した場合, がこの系の共振周波数f0の附近で描く共振の尖鋭さ, 共振特性の幅の狭さを示すのにQ なる量が使われる。quality factorの略で あるが単にQ と呼ぶことが多い。Q は共振周波数0(またはω0)の前後にエネルギーで半分(速度,電流などで1/√2 ) になる周波数を12 として,21 (またはω2−ω1)を半値幅といい,
Q=f_0/(f_2-f_1)=\omega_0/(\omega_2-\omega_1)     (5)
で定義される。
Q は共振特性の尖鋭さを示すと同時に,共振時における拡大度 を示す量でもある。例えばある電気回路の中でインダクタンスL またはキャパシチーC のみであるところに,LCCLを並列に入れ共振させると, 両端の電圧はQ 倍に拡大,上昇するのである。 以上の対数減衰率Δ ,減衰比ζとQ の間には一般には
Q\Delta=\pi\quad , \quad Q=2\zeta     (6)
の関係があるもので,Q の代りに共振の尖鋭度を示すのにζを使う場合もある。更に原式の定数を用いて書きなおすと
Q=c/\sqrt{km}=2\varepsilon/\omega_0     (7)
ともおける。

電気回路部品に多く使われるロスファクターηまたはロスアングルφというものがある。例えばあるコイルのロスファクター,ロスアングルという場合, そのインダクタンスをL,抵抗をrとして
\eta=\tan\phi=r/\omega_0 L     (8)
である。 共振周波数ω0以外のところでも /ωLをロスファクターとして使うこともある。 コンデンサーに抵抗 があれば,そのロスファクターは ω0Cとなる。
電気系,機械系の等価性を利用して考えると, 一般式としてはロスファクター,ロスアングルはΔQ
\eta=\tan\phi=\frac{\Delta}{\pi}=\frac{1}{\varrho}     (9)
の関係があり,ロスファクターはQ の逆数である。