用語解説 ハ行



■倍音 harmonic
周期をもっている複合音は,基本音とその振動数(基本振動数, 基本周波数 fundamental frequency)の整
数倍の振動数をもつ部分音とからなる。 この場合,基本音以外の部分音を倍音という。
基本振動数のn倍(nは整数)の振動数をもつ倍音を第n倍音という。
複合音
■媒質の特性インピーダンス characteristic impedance of a medium(ISO 31-3) ,characteristic impedance(BS,ANSI)
媒質の一点において平面進行波の音圧を粒子速度で割った複素数比。
記号 ZC,単位Pa・s/m(ISO 31-3)。エネルギー損失 がない媒質ではZC=ρc ,但しρは媒質の密度, c はその媒質の音の伝搬速度。
■媒質の吸収
自由空間の音場
■白色雑音(ホワイトノイズ)white noise
十分に広い周波数範囲全域で単位周波数帯域(1Hz幅の帯域) に含まれる成分の強さが,その帯域の中心周波数に関係なく一定である雑音。 継続時間が短い音(単独の)や不規則雑音は白色雑音である。(白色雑音は不規則雑音であるとは限らない。)
■波形 waveform(BS)
変動している量の値を独立変数(多くは時間)に対して図として表示した形。 普通は直角座標軸についていう。 その量によって振動波形,音圧波形などと使用される。
■波高率 crest factor peak−to−rms ratio
波の最大値と実効値との比。

Pm /Peff

正弦波では√2=1.414,三角波では√3=1.732,半波整流波では2。
IECの騒音計規格案では波高率によって複合音特性の誤差が規定されている。

■波長 wavelength
周期をもった波の一周期だけ位相が異なる二つの波面間の垂直距離。記号λ。
■波面 wave front
周期をもつ進行(音)波のある時刻の波面は,変動が同位相である点を連ねる連続面。wave surfaceおよび等位相面(同義語)は音響標準用語集(昭和16年)に見えるが,
その後の標準的用語集にはwave surfaceは見あたらない。
但し教科書的な本(英文の)には見かけることがある。
■波面の広がり
自由空間の音場
■ばねの強さ stiiffness
弾力定数
■腹 antinode(BS,ANSI),loop(ANSI)
定常波の音場において,例えば音圧あるいは粒子速度などの振幅が最大となる点, 線あるいは面,音圧の腹などのようにその量の名称をつけていう。
■パワーレベル
音源の出力
■パワースペクトル power spectrum,spectral density(BS),spectrum density(power spectrum)
(ANSI)
振動する量の二乗平均値を振動数成分の分布として表わしたもの。振動量y (t)のパワースペクトルG(f)は,


で与えられる。f は振動数で正の数である。

■反響 Echo
直接音とはっきり分離して聞こえる反射音。直接音と約1/20秒以上の時間の遅れがあるときに反響を感じるという。室内の音の場合,この遅れの時間,反射音の強さなどによりその程度は異なるが,反響があると音質が損なわれる。
■反共振 anti−resonance(BS)antiresonance(ANSI)
一定の大きさの正弦的励振による応答が特別な振動数(反共振 振動数 anti-resonance frequency(BS))で最小となる現象。
■バンド音圧レベル band pressure level
規定された周波数帯域に含まれる音の音圧レベル。
■ピーク音圧 peak sound pressure(ANSI)
ある時間の間での瞬時音圧の絶対値の最大値。
■比音響インピーダンス specific acoustic impedance
音場内の一点の音圧p(Pa)と,その点の粒子速度ξ(m/s) との比


を音場のその点の比音響インピーダンス,|ZA|をその大きさ,φ をその位相角,RAを比音響抵抗,XAを 比音響リアクタンスという。 別項で解説の音響インピーダンスとこの比音響インピーダンスとは定義が 異なるために,同一音場に対して異なる数値を呈するから混乱を生 ずる恐れがある。よって一つの理論大系や論文の中に両者を混用す ることは避けて,いずれか一方に統一して使用することが肝要である。
比音響インピーダンスを英語でunit area acoustic impedance (単位面積音響インピーダンス)と呼ぶことがあるが,この意味は 物理的にはっきりしない。単位から見ると,前記の音響インピーダ ンス(Pa・s/m3)のほうが,比音響インピーダンスの単位面積の 値〔(Pa・s/m3)/u〕となっている。よって,
この呼び方は使用 しない方がよい。
また,比音響インピーダンスは別項で解説している機械インピーダンス (N・s/m)の単位面積あたりの値(Pa・s/m)=(N・s/m3)= 〔(N・s/m)/u〕となっている。

■比音響インピーダンス比 specific acoustic impedance ratio
比音響インピーダンスと音響特性インピーダンスとの比

を比音響インピーダンス比といい,単位系に無関係で,音場に固有 の数値となる。rA を比音響抵抗比, xAを 比音響リアクタンス比という。

■比騒音レベル (Specific noise level)
最高効率点で運転した時の風量をQ m3/min,全圧力をPTmmAq ,JIS規定点の騒音レベルをLA dB(A)とした時に式(1)によって関係づけられLSA を比騒音レベルという。

LSA=LA10 log10 Q・PT2 (1)

比騒音レベルの値は送風機の種類によってはほぼ固有の値を有し、 圧力、回転数などには関係8しない値である、したがって 比騒音レベルがわかれば、送風機騒音を計画時に予測委できる。ただし、比騒音レベルは製造業者によって差異があるから、文献などの比騒音レベルから予測するのは目安程度に過ぎない。

■非調和成分 non−harmonic,components
ある音の成分のうち調和成分でない成分(JIS Z 8106)。
■表面波 surface wave
広い弾性体媒質の表面または二つの媒質の境界面に沿って伝わ り,弾性体内部にはほとんど侵入しない波。レイリー波,ラブ波 などがこれである。実体波のS波より伝搬速度がやや遅く,S波 に続いて到達する。
一番大きい振幅を示し,また地表面に沿っての減衰は一番小さく遠方にまで届く波である。実体波のP波,S波に対しL波とい うこともある。
■ピンク雑音
雑音
■P波 P waves
地震波の実体波のうち縦波(体積変化の波)をいう。地震波の中で一番伝搬速度が速い。
■PNL(Perceived Noise Level)とdB(D)
音の大きさの尺度としてLoudness Level(音の大きさのレベル) 騒音レベルなどがあるが,Kryterは騒音のさわがしさを評価するとき, 新しい尺度としてPNLを提案した。 これは1kHzを中心周波数とする帯域白色雑音を基準として, 騒音のさわがしさを表示する尺度で, 主として航空機騒音の測定に使われている。 PNLは原則として1/3オクターブ分析した結果からそれぞれのバンドのnoy数 を求めて次式によって騒音のPNLを算出する。単位PN dB

ここでnmax は各帯域のnoy数の最大値である。
航空機の通過音のように時間的に大きさとともにスペクトルが変 化する場合は,同一時刻における各バンドの成分からPNLを計算 する必要がある。また測定を簡便にするため騒音計のA特性に準 拠してD特性を騒音計に組込む作業が,IEC(国際電気標準委員 会)で行われている。これはdB(D)と表示され,航空機騒音の モニターに用いられる。
ただし PNL≒dB(D)+7 である。

■p−p値(JIS B0153)prak to prak value
ひずみ波の正の側の波高値と負の側の波高値の和。
■PSILとSIL
騒音があると会話がしにくくなるのは,会話音が騒音によって マスクされ,その一部の音が聞こえなくなったり小さくなるため である。正常の人が騒音があるところでどのくらいの距離まで離 れていても日常の会話が可能であるかということは生活に大事な ことである。PSIL(prefered speech interference level)やSIL(speech interference level)はその目安を与えるためのレベルで,PSILはその騒音の500Hz、1,000Hz、2,000Hzをそれぞれ中心周波数とするオクターブバンドのバンド音圧レベルの算術平均値である。
PSILが40 dBであると,向かい合った状態で男子の 普通の声での会話可能距離は7mであり,PSILが6 dB上昇するごとに距離は半減し,大声では距離が倍になるというような関係 になる。同じ距離でも女子の場合は男子に比してPSILが5 dB低 いことが必要である。通常の屋内騒音ではその場所の騒音レベル LAdBから7dBを引いた値をPSILの代用とすることができる。
SILは以前主として米国で使用されたオクターブ・フィルタ で中心周波数が420 Hz,850 Hz及び1700 Hzの3つの帯域のバ ンド音圧レベルの算術平均値をとったものであるが,フィルタの遮断周波数が変ったため今は使われない。SILの値に3dB加えた 値をPSILとする換算式がある。なお最近ではPSILのことをSILとする例もある。
■フィルタ wave filter
ろ波器ともいう。一つあるいはそれ以上の周波数帯域内の各周 波数のエネルギーを通し,それ以外の周波数のエネルギーを減衰 させる装置。エネルギーを通過させる周波数帯域を通過帯域,減 衰させる周波数帯域を減衰帯域という。
■負荷時インピーダンス loaded impedance
出力側に負荷をつないだときの入力側から見たインピーダンス。
備考:負荷時駆動点機械インピーダンスとか変換器の負荷時(電気)インピーダンスのようにいう。(JIS B 0153)
■不規則雑音 random noise(JIS B 0153)
任意の時刻における大きさが正確に予知できない雑音。


■複合音,楽音,倍音,上音
広義に複合音といえば純音(正弦波の音)以外のすべての音の意 味で,おおよそ世の中に自然にある音は複合音でないものはない と考えてよい。しかし狭義には複数個の純音の重畳したものを考 えることが多い。そして後者の内で重畳しているすべての純音が 整数倍の関係にある場合が周期的複合音であり,これが楽音であ る。
周期的複合音すなわち楽音では波形を描かせると,正確に繰返 すもので,この繰返しのサイクルが音の場合は基本音であり,基 本音以外をその倍音と呼ぶ。音の場合を含んで一般的には基本波 と高調波と呼び,基本波と高調波を併せて調波と言うこともある。
倍音または高調波には番号がつけられており,第1倍音,第2 倍音等と言う。基本波の,何倍かを表わすので第1倍音はすなわ ち基本音であり,第2倍音は基本音の2倍,第3倍音は3倍の周 波数である。
次に部分音が倍音関係にあるものだけでない場合,この時は最 低の周波数を基本音とし,その他は順次第1上音,第2上音という。楽音であれば基本音すなわち第1倍音であり,第2倍音が第 1上音,第3倍音が第2上音ということになる。
■節 node
定常波において音場を特徴づける量,例えば音圧あるいは粒子 速度などの振幅が零または極小となる点,線あるいは面,その量によって音圧の節とか粒子速度の節などのようにいう。
■不足減衰 under damping(JIS B 0153)
減衰比が1より小さな減衰。
■部分音 partial(BS,ANSI),partial tone(JIS Z 8106)
複合音を構成する各純音。
■フラックス flux
フラックスという語は静電界や静磁界における電力線とか磁力線, 光学における光束,あるいは音響学におけるエネルギー束(energy flux)という概念で一般に親しまれているが,何かピンとこない感じを持っている人が多いのではないかと思われる。
fluxは日本語では束(そく)と訳される場合が多いようだが,元 来fluxは流体力学で使われていた語である。流体の流れの中の1点 の周囲に微少面積da(u)をつくり,その法線を n とし,その点の 流体の速度ベクトルをV(m/s),Vとnのなす角をθ(rad)とすると,daを貫いて流出する流量はV・n da=Vcosθda(m3/s)となる。ここにVはベクトル Vの大きさである。この流量は微少 面積daを底としこの面に垂直に長さVcosθ(m3)の体積が毎秒 流出することを示していて,これをdaを通るfluxと定義する。し たがって単位は(m3/s)であり,音響学でいう体積速度である。 したがって,音響学ではfluxは体積速度(m3/s)と訳すのが妥当 である。
流体の流れている領域の中の一部を閉じた曲面 S で囲み,その外 向法線を正方向とすると,流体がこの曲面で囲まれた領域に流入す る部分ではθが90〜180°の範囲の値を取るので V cosθは負の値を取り,流体がこの曲面から流出する範囲では V cosθは正の値を 取る。したがって,S で囲まれた領域内に流体の噴出口(正の源泉)や吸入口(負の源泉)がない場合には,閉曲面を出入する流量の総和は零となる。すなわち全フラックスは,


もしも噴出口があればΦ>0,吸入口があればΦ<0となり,全 フラックスΦ(m3/sは源泉の強さを表す。この概念が光源とか 電荷または磁荷からその強さに応じたfluxが出るという考え方を導いた。
一方、cgs単位系の電気磁気学や光学では単位の強さの源泉から 4π本のfluxが放出されると仮定して理論体系を組み立てていたが,この考え方が不合理である事を1891年にHeavisideが指摘し,このような単位系を非合理単位系と呼ぶことになった。現代用いられている国際単位系(SI単位)では合理化単位系が採用されているので,単位の強さの源泉から1本のfluxが出ると定義されることになった。たとえば音源の強さQ(m3/s)の点音源から四方に一様に放射 されるflux(体積速度)はQ(m3/s)であり,点音源を中心とす る半径 r(m)の球面上の微少面積da(u)を貫通するfluxはQ da/4πr2(m3/s)となる。同様に Q(C)の点電荷から放射される 電力線も Q(C)となる。磁力線の場合は,現在は点磁荷の存在が考えられず,磁気双極が単位と考えられているので,磁気双極を代 表する電流環を磁界の源泉と考えて、これによって生ずる磁束(Wb)を 磁力線と考えている。

■平均聴力損失
周波数を規定しないで聴力損失という場合、幾つかの周波数,例えば500 Hz,1,000 Hz,2,000 Hzにおける聴力損失に重みをかけて平均した値(平均聴力損失)が使われる。我が国では500 Hz,1,000 Hz,2,000 Hzの聴力損失をそれぞれa dB,b dB,c dBとするとき(a+2 b+c)/4 dB を聴力損失とすることが多い。この方法は4分法ともいい,労働者災害保障保健法その他に使われている。ISO R1999−1971その他ではa,b,cを上と同じ意味として(a+b+c)/3 dB をとっている。
なお前回には述べなかったが,聴力損失にはそのままの意味の対応外国語はない。かつてその意味で用いられたHearing lossは今では米国(ANSI S.3 20−1971)でも聴覚障害の意味になっている。聞こえのレベルの対応英語にHearing levelである。
■平面波 plane wave
どこでも波面が伝搬方向に垂直な平行平面である波。広い空間 では実在しないが,音源から十分離れた場所では球面波は平面波 に近づく。一様な太さの管の中では波長が太さに比して大きい音 波(例えば円管では波長が直径の2倍以上)は平面波である。
■ヘルムホルツの共鳴器 Helmholtz Resonator
薬ビンのような,やや大きい容積を持った胴に,それよりも細くて短かい管(首という)が付いた形状をもつ共鳴器。本来の形は耳に当ててその中の共鳴音を聞くために耳に挿入できるような小さい管が首と反対側にある。
この共鳴器の固有振動数νHzは,胴の容積 vm3・首の断面積Su・首の長さlmによって,

で与えられる。ここにcは音の速さ(m/s),Δlは首の部分の開口端の補正で,首の部分が半径aの管であるとΔl=1.5a〜1.7a程度の量である。これからも分かるとおり,首の部分がなく(l=0)て,箱の側面に穴を明けたようなものもこの共鳴器と同じ働きをする。なお,この式が成り立つためには,Sは胴の部分も管として,その断面積の四分の一以下位でなければならない。
共鳴器はその固有振動数の音をよく吸収するし,その音の波長に比べて小形になることなどから、現在では,この共鳴器は低い周波数の音の吸音器として広く使われている。
また,この種の共鳴をHelmholtzの共鳴ともいう。

■変換器 transducer
一つの系からエネルギーを受け,同種または異種のエネルギー としてこれを他の系に供給し,入力側エネルギーのもつ必要な特 徴が出力側に伝わるようにした装置。通常入力端子対と出力端子 対を備えた二端子対回路で表わされる。(JIS Z 8107)
■変換器の感度 sensitivity(of a transducer)
変換器の出力量と入力量との比。感度は,入力量や出力量として選定する量の種類によって異なるものとなるからそれらを明示 する必要がある。

〔備考〕(1)変換器の感度は通常正弦波入力による。したがって 周波数の関数である。
(2)感度レベルの意味に使うこともある。
(3)変換器の感度は,天秤などの計測器のいわゆる感度, 特に,一定の観測条件のもとで検知し得る最小の測定量, 若しくは測定量の最小の変化量の大きさなどで表わすも の――感度限界(JIS Z 8103)――とは異なる。

■変形 deformation,ひずみ strain
物体に働く力や温度が変わると物体の形が変化する。形の変化 には体積の変化も含まれる。力が働く場合に,力が元の状態に戻 ると形も元に戻る場合と戻らない場合に分けられるが,音や振動 に関係するのは元に戻る変形で弾性変形,弾性ひずみelastic strainといい,そのような性質を弾性elasticity,弾性をもつものを弾性体elastic bodyという(特に固体についていうことが 多い)。
なお,変形やひずみという用語は物体全体としての形が変わる ことの他に,単位にとった長さや体積などについての変形(ひず み)の意味にも多く使用されている(その場合は無次元量である)。
■放射インピーダンス radiation impedance
媒質に接して振動している面(放射面や受音面)が媒質の中に音波を放射するために,媒質が振動面に対して示す機械インピーダンス。振動面が媒質に加える力(振動面上の音圧の積分に等 しい)を振動面の平均速度で割った複素数比で表わされる。また, 放射インピーダンスは音波を放射しているときの振動面の機械インピーダンスと音波を放射していないときの機械インピーダンスのベクトル差,あるいは振動面の負荷インピーダンスとなる。この用語は,ANSI,BS,IEV 08およびISO 31-7には見当たらない。

放射インピーダンスと固有音響抵抗,小さい音源,大きい音源

音を出している物体がある場合,各振動面について音響放射イ ンピーダンスを考える。ある面について,その面上の平均音圧とその面の振動速度との比を放射インピーダンスという。これはその面が音を出すための反作用であり,抵抗である。面が小さくなって,振動はしてもまわりの空気がすぐ横に逃げたりして抵抗しなくなると,「のれんに腕おし」の状態で,運動が仕事にならず,振動が音にならない。(音以外の抵抗は考えない。)
さて放射インピーダンスは一般には複素数で表示できるもので,(r+jx)の形をとる。実数部rと虚数部xである。これは上記の音圧と振動速度の位相にずれがあることを示し,全く同位相であ ればx=0となる。面積S の面が震動速度Vの震動をしている時の音響出力Wは

W=V S

である。

ここで極端に小さい音源と十分に大きい音源を考えてみる。大きいとか小さいとかいうのは,波動現象においてはその考えている波の波長入をものさしとして考えるべきことはいうまでもない。
さて,まず小さい場合である。直径の小さい円板,幅の小さい振 動板,いづれでもよい。この時は上記の実数部rが急激に小さくなるものでその上Sも小さいので音の出力は特に小さいのである。 絃楽器で絃と胴をくらべると絃の方が大きく振動しているが絃からは音を出していない。放射インピーダンス,特にその実数部が小さい上にSも小さいからである。上記と逆に面の寸法が波長をものさしにして大きい(同じ程度 でもよい)場合はrもxも大きくなるものであり,波長に較べて十分大きくなると実数部のrはその媒質のρcに近づき,虚数部xは再び0に近づく。音響出力は

W=ρcV S

となる。

xが0に近づくということは振動速度と音圧とが同位相になることを示し,放射インピーダンスは実数になることである。ρcは固有音響抵抗と呼ばれる量である。すなわち平面波の一点の音圧Pと粒子速度vとの間にp=ρcvの関係があり,振動面の振動速度Vと面上の音圧pがp=ρcVとなり全く同じ量関係を示すことになる。

■放射抵抗 radiation resistance
放射インピーダンスの実数部。振動面の振動速度振幅の自乗と の積の1/2がその面の音響出力,すなわち,その面が単位時間に放射する音のエネルギーに等しい。
■放射リアクタンス radiation reactance
放射インピーダンスの虚数部。これを振動の角振動数で割ったものはその振動面の付加質量に等しい。
■補正音圧レベル,騒音レベル dB(A),dB(B),dB(C)など
音圧レベルでは基準値は周波数に無関係に2×10−5〔Pa〕なる一定値がとられている。純粋に物理的な強さを表わす量である。これに対し基準値かまたは測定値かのいずれかに,例えば感 覚特性などの周波数補正をしたものを補正音圧レベル(weighted sound pressure level)と言う。騒音に対してはA,B,Cなどの補正音圧レベルがISOやIECで定義されている。
上の補正音圧レベルのうち,A特性で補正したものを日本では騒音レベルと定義している。これが騒音の計量単位であり,精密騒音計,普通騒音計の新しいJIS(C−1505,C−1502)ではこの点が明確にされた。
騒音レベルの単位は計量法ではホンで,記号はdBであるが, 騒音計のJISでは「デシベル(またはホン)で表わし,単位記号 はdBとする。」とはっきりdB優先を明確にした。
なおdB(A)またはdBAなどの表示を使えば特に騒音レベルとことわらなくてもよいことになる。補正音圧レベルdB(B)は殆ど使われることがないし,dB(C)は音圧レベルの代用として使われる。