用語解説 ア行
完全な拡散音場が仮定される室内の残響時間について、C.F.Eyringが提案した式がEyringの残響式である。またその式によって求められる残響時間をEyringの残響時間という。 Eyringの残響時間T(s)は、以下の式であらわされる。
ただし、V:室の容積(m3)、S:室の表面積(u)、α:平均吸音率(-)、 また、K=24/(c・log10e)(cは音速、eは自然対数の底)である。 残響式にはほかにSabineの残響式があるが、 これはα=1のとき残響時間が0(s)にならないという欠点があった。 Eyringの残響式はこの欠点を修正したものである。
周期現象で、ひとつの繰り返し上の位置を示す量。 通常は角度(rad)であらわされる。 この場合、特に位相角ということもある。
同じ周期の二つの現象において,独立変数が同一の値をとるときの位相の差。 一つの周期現象で,独立変数の二つの値に対する位相の差をいうこともある。 通常は角度(rad)で表示する。一周期分の位相差は2π(rad)である。
| ■一過性域値変動 Temporary threshold shift |
TTSという略がよく使われている。音響負荷によって生じた最小可聴値の上昇のうち,原因となる音響を取り去った後時間とともに減少する部分をいう。 特に強大音響負荷後の一過性域値上昇をNITTS(Noise induced temporary threshold shift)という。
複素インピーダンスともいう。線形系の正弦的な励振(入力)と応答(出力)との比。励振,応答ともに複素量として表わした複素数比である。一般にインピーダンスZ を
Z=R+jX
と表わしたとき,実数部R を抵抗,虚数部X をリアクタンスという。元来は電気系の二端子回路(一端子対回路one terminal−pair circuit)について入力電圧と入力電流との複素数比である。(電気)インピーダンスの逆数を(電気)アドミタンスadmittanceという。
振動数がわずか異なった同じ種類の二つの正弦量を加えたときに起こる振幅が周期的に変化する現象。 1秒間に起こる変動の数は元の正弦量の振動数の差(絶対値)に等しい(うなり振動数,うなり周波数 beat frequency(B0153)という)。
| ■角振動数,角周波数,円振動数 angular frequency,circular frequency |
振動数の2π倍,単位:rad/s 音響学では円振動数は使わない。
波面が同軸の円柱面である波をいう。
振動レベル
ある面を単位時間に通過する音響エネルギー、 もしくはある面に垂直な方向の退席速度と恩厚瞬時値の同相成分の積の時間平均値。 単位はワット(W)。 例えば、出力 W (W)の点音源を囲む閉曲面でのエネルギー束は W (W)である。
| ■EPNL(Eftective Perceived Level) |
航空機騒音証明は1969年ICAO(民間航空連盟)において制定 されたが,その測定方法として,PNLを基本とした尺度EPNLが 定められた。航空機の飛翔に伴う時間的に変化する騒音の音圧を録 音にとり,0.5秒毎に1/3オクターブ分析を行って,そのスペク トルからPNLを算出するとともに,特異音補正量を計算する。こ の結果特異音補正を行ったPNL これをPNLTという の時間変 化が求められる。EPNLはPNLTをエネルギー的に積分し,次の式から計算される。
T0=10秒, Δ:継続時間補正
T0を10秒にするのは,高度約1,000mのときΔ=0となり EPNL≒PNLTmaxとなるからである。(離陸時の騒音証明測定点に おける測定値がほぼ,Δ=0となる)近似的に積分範囲はPNLTmax から10 dB小さくなった範囲とすることもある。また0.5秒おきに計算するので,
とし,音圧からPNLへの変換及び特異音補正も含めて,計算機処理を行うのが普通である。
地震波の実体波のうちの横波(変形の波)をいう。 伝搬速度は、P波(縦波)より遅く、表面波であるレイリー波よりわずかに速い。
会誌3巻3号の用語解説でPSILとSILの解説をしたが,ANSI3.14−1977に おいてもSILを中心周波数500,1000,2000,及び4000 Hzのオクターブバンドの 音圧レベル(0dB=20μPa)の算術平均と定義し, その略号をSIL(0.5,1,2,4)とすることが述べられている。 他の中心周波数のバンド音圧レベルをとったときには,例えばSIL(1,2,4)の ように表わす。もちろん従来のSIL,PSILにも言及しており, それらに関する多くの文献が引用されている。 また,記号としてLSILも使用されていて, 一般の多くの騒音の場合には,そのA特性による騒音レベルLAとは,
LA=LSIL+8(dB)
になるという。
国際単位系の中の基本単位,補助単位及び組立単位の総称である。 基本単位は次に示す7個のもので,以下便宜上,量,単位名称, 同記号の順に示すと,
長さ:メートル m ; 質量:キログラム kg ; 時間:秒 s ; 電流:アンペア A ; 熱力学的温度:ケルビン K ; 物質量:モル mol ; 光度:カンデラ cd 。
補助単位は次の2個で,
平面角:ラジアン rad ; 立体角:ステラジアン sr。
組立単位は基本単位及び補助単位を乗法・除法の数学記号を使って組合わせることで表わされる単位で,例えば,面積:平方メートル u ; 体積: 立方メートル m3 ; 速さ:メートル毎秒 m/s ; 加速度: メートル毎秒毎秒 m/s2のようなものである。
組立単位のうち次の18個の量の単位には固有の名称と単位記号が与えられていて,それ自身として使用のほか他の組立単位を構成するのにも使用されている。
周波数:ヘルツ Hz(1Hz=1s−1) ;力: ニュートン N(1N=1kg・m/s2) ; 圧力:パスカル Pa(1Pa=1N/u) ;エネルギー,仕事,熱量:ジュール J(1J=1N・m) ; 仕事率,工率,動力,電力:ワット W(1W=1J/s) ; 電荷,電気量: クーロン C(1C=1A・s) ; 電位,電位差,電圧,超電力: ボルト V(1V=1J/C) ; セルシウス温度:セルシウス度または度 ℃,以下略。
単位記号は原則として小文字の直立体(手書きのときも)であるが, 人名に由来する名称の場合は,基本単位のアンペア A,ケルビン K を含めて, 大文字の直立体(ただし Hz,Paなどのように2文字のときには第1文字のみが大文字で,第2文字は小文字の直立体)を使用する。単位記号にはピリオドは付けない。 単位の10の整数乗倍に対する接頭語は10−3から 103までは10倍ごと,それ以外は103ごと あるいは10−3ごとに,大きい方では1018(エクサ:記号E) 小さい方では10−18(アト:a)まである。 これらを使うとき,数が0.1と1000の間に入るように選ぶが,一連の文章の中では この限りでなく同一の接頭語によるのが一般にはよい。 なお,JIS Z 8203は1978年に改訂された。
| ■SN比(えすえぬひ) signal−to−noise ratio |
S/Nとも書く。信号の量と雑音の量との比。必要ならば信号 の量と雑音の量とに適当な定義を付ける。例として,信号の実効値 と雑音の実効値との比,信号のピーク値と雑音のピーク値との比, 信号のピーク値と雑音の実効値との比などが挙げられる。 この値は伝送系の帯域幅に関係する。 (注)SN比とS/Nとを混同してS/N比と書いてある書物を よく見かけるがこれは誤りである。
入力に対応する系の出力。入力の変化に応じて出力が変化する 有様。なお,変換器のレスポンスは出力と入力との比で表わされ る。周波数応答(周波数レスポンス)は応答の周波数特性である。
物体はその中の任意の点を通る任意の平面を考えると,その平 面の両側の部分は互いに力を及ぼし合っている。単位面積当りの その力をその平面についての応力という。これは平面の取り方に よって変わるから,平面の法線方向の単位ベクトルをnとすれば その平面の応力T(n)はnの関数である。T(n)とnとは同 じ方向になるとは限らない。応力のn方向の成分を垂直応力 normal stress,平面に平行な成分をせん断応力(接線応力,ず れ応力)shear stressという。垂直応力は面の両側の部分が互 いに引張り合うような向き(正の向きのとき張力tension,押し 合うような向き(負の向き)のとき圧力pressureという。静止し た流体の応力は圧力で、しかも平面方向に関係しない。これを静 圧static pressureという。
放射インピーダンス
1) 2:1の音程 2) ある音の二倍の振動数の音 3) 一オクターブの音程にある二音とそれらの間に含まれる音を合わせたもの。オクターブの周期数帯域の音。 4) f 2>f 1 のとき,log2(f 2/f 1)はf 1とf 2との音程あるいはその周波数帯域幅をオクターブを単位として表わしたものになる。例えば,f2=21/3f1なら1/3オクターブ。
| ■オクターブ分析,1/3オクターブ分析,走査型分析 |
定比周波帯域形分析器で騒音や振動の測定に広く使われるのは, オクターブバンド,1/3オクターブバンドの固定フィルターを切 替えて使う方式と,定比周波的に狭い周波数の単峯形特性で,連 続的に走査して分析する分析機器がある。 オクターブバンドはもちろん帯域幅が1オクターブ分すなわち 高低遮断周波数比1:2のもので,例えば355〜710 Hzのバンド のものは両遮断数の幾何平均値( の時fはf1, f2の幾何平均)である500 Hzのバンドと呼んでいる。1/3オ クターブは1オクターブ内を更に3分(1.00;1.26;1.59の比) する分析器である。 オクターブや1/3オクターブではそのバンド内でエネルギー がどんなに分布しているかはわからない。その中に例えば強い純 音成分があるか否かは単峯型の走査式分析器では捕えることがで きる。 オクターブや1/3オクターブの分析結果はバンド音圧レベル で示す。白色雑音を分析するとオクターブでは次々高周波のバン ドで3dB,1/3オクターブで1dB,バンドレベルが上昇し,ピ ンク雑音では次々のバンドに差は出ない。 オクターブ分析を1/1オクターブとも呼ぶ。
聴力損失あるいは聞こえのレベルを図または表によって表現し たもので,図は横軸に周波数をとり,縦軸には聴力損失(聞こえ のレベル)を下向きに数値が増すようにとる。なお横軸のオクタ ーブの間隔と縦軸の20 dBの間隔とが等しくなるようにする。オ ージオグラムに使用する記号,記入法は各国共通のものが使用 されている。
オージオメータは聴力を測る装置(JIS Z8107音響用語機器) である。純音をつかってある耳の最小可聴値を基準の最小可聴値 とのレベル差で表わすのであるが,基準の最小可聴値は正常な耳 についての値として定められたもので基準の0dBともいう。 さてこの0dBに当る音圧は最小可聴音圧に相当するものである が,オージオメータの信頼性を保持しやすいために,イヤホンを 規定のカップラあるいは人工耳に結合したときのカップラまたは 人工耳内の音圧で定められていて,等価最小可聴音圧ともいわれ る。我が国で現在使用されているオージオメータの0dBの値は JIS T1201(オージオメータ)で1956年に定められた。これは米 国のASA Z24・5−1951年に準じるものであるが,ISO R389− 1964(後にISO 389−1975となった)がこれと異なった値を定 め,米国もS3・6−1969にそれを採用した。JISの0dBはISO の0dBに比して周波数によって異なるがほぼ10 dBレベルが高 い。したがってJISのオージオメータで測定した値はISO基準の オージオメータによる値より小さくなる。
媒質のある領域について,音波が存在するために増したエネル ギー,力学的振動のエネルギーである。
| ■音のエネルギー密度 sound energy density |
音場内の一つの点をかこむ微小部分にある音のエネルギーをそ の部分の体積で割ったもの。瞬時値,最高値,平均値等が考えら れる。平均値は時間平均とその位置的平均(ある瞬間についての) がある。記号 w,wa,E,単位J/m3。
音の聴覚上の性質の一つで,音をそれによって小さいものから 大きいものへと連続的に配列することができる。音の大きさは主 として音圧に関係するが,周波数や波形にも関係する。音の大き さの単位をソーン(sone)といい,そのn倍の音の大きさをnソ ーンとする。N1ソーンの大きさの音とN2ソーンの大きさの音が 同時にあったときの大きさはマスキングの影響がないものとする と(N1+N2)ソーンになる。 複合音や連続スペクトルの雑音では,その音の占める周波数帯 域幅が(音の大きさの)臨界帯域と呼ばれる帯域の幅になるまで は,周波数がその音の周波数帯域の中心周波数と同じで,音圧レ ベルがその音と等しい純音の大きさと同じであるが,音の分布の 幅が臨界帯域以上になると音圧レベルは同じでも大きく感じられ るようになる。
| ■音の大きさのレベル Loudness Level |
正常な聞こえを持つ人が,ある音の大きさを,音圧レベルLS dBの1kHzの純音の自由進行波を音源に正対して聞いた大きさと同 じであると判断したときに,その音の大きさを表わす数値として LSをとって大きさのレベルLSホン(phon)であるという。 このホン(JIS Z 8202)という単位は計量法でいう騒音レベル の単位とは異なる。したがってフォンとかphonと書く人もいる。 1ソーンの音の大きさは,大きさのレベル40ホンの音の大き さであると定義される。大きさのレベルLSホンの音の大きさをNソーンとすると,
または,
この関係は20ホンから120ホンの間で成立つするものとされ, これから音の大きさが2倍になると大きさのレベルの数値が10 増加することになる。定義によって1kHzの音の大きさのレベル の数値は,その音圧レベルの数値と同じであるが,それ以外の周 波数の純音について等しい大きさに聞こえる音の音圧レベルを周 波数の関数として示す曲線を音の大きさの等感曲線(loudness contour)という。その代表的なものには,最小可聴音場のところ で引用した ISO R226−1961の曲線やフレッチャー・マンソンの 曲線などがある。 連続スペクトルの定常雑音の大きさや大きさのレベルは,その 音のオクターブ帯域または1/3オクターブ帯域の音圧レベルか ら算出する方法がISO 532−1975などに与えられている。ただこ のようにして算出されたおとの大きさや大きさのレベルは,聴取 によって得られる値とは必ずしも一致しないから,何による値で あるか明示する必要がある。
| ■音のスペクトル,音響スペクトル sound spectrum |
音の成分の音圧,強さなどを振動数(周波数)の関係として示 したもの(JIS Z 8106)。
ある点の音の強さ(intensity)は,その点を通って音波の進む 方向に垂直な単位面積を,単位時間に通過する音波のエネルギー 量で表わす。単位は〔W/u〕である。 媒質の密度をρ〔kg/m3〕,音の速度をc〔m/s〕とすると, 音の強さI 〔W/u〕とその点の音圧(sound pressure)の実効 値P 〔Pa〕との間には次式の関係がある。ρcは固有音響抵抗と 呼ばれる量である。
I=P 2/ρc (1)
ここで音圧の単位のパスカル〔Pa〕であるが,これは〔N/u〕 と同じ量である。Nはニュートンで力の単位である。機体や液体 中の圧力(音圧は大気圧なる静圧に乗る交流圧)は,力のように 方向性のあるベクトル量ではないが,これを測る場合,ある面(例 えば波面とか,気圧計の受圧面など)に及ぼす力で測るので,Pa が採用されるまではN/uが使われていたのである。1N/uの 圧力を1Paと定義したのである。
音の強さ sound intensity
音場の一点において,音の伝搬方向に垂直な単位面積と単位時 間に流れる音のエネルギー。記号I ,J ,単位W/u。 ある任意の方向にある単位面積を単位時間に流れる音のエネル ギーをその方向の音の強さということもある。伝搬方向の音の強 さをJ とし,それとθの角をなす方向の音の強さJθは
自由進行の平面音波や球面音波では,ある点の音の強さ(伝搬 方向の)J とその点の音圧の実効値pe f fは,
ただし,ρは媒質の密度kg/m3,c は音の伝搬速度m/s
| ■音の強さのレベル sound intensity levelと音圧レベル dB |
音の強さI W と基準の音の強さ10−12 W=1pW(空気中の場合)との工率レベル差
単位dB。普通ある音(空気中)の音圧レベルLP の数値とその音の強さのレベルLI の数値とは等しいとされる。
2つのパワー(エネルギー)P1とP2の差を表わすのに,次式 のLを用い,単位はデシベル〔dB〕とし,これをレベル(level) 差という。dBのdはデシ(1/10)の意味で小文字を用いる。
L=10log10 P2/P1〔dB〕
以前使われていたFletcherの聴感曲線で,1000〔Hz〕付近の 最小可聴値が約10−12〔W/u〕であったので,これを可聴音の 強さの基準値に採ることにした。この基準値に対する音圧を求め てみると,(1)式において常温の空気でρ=1.2〜1.3〔kg/m3〕, c=330〜340〔m/s〕を用いて約2×10−5〔Pa〕が得られる。 強さI 〔W/u〕,音圧P 〔Pa〕の音について,次のLI
を音の 強さのレベル(sound intensity level),LP を音圧レベル(sound pressure level)と呼ぶ。同じ音では同じ数字である。
LI =10log10 I/10−12〔dB〕
LP =10log10(P/2×10−5)2
=20 log10 P/2×10−5〔dB〕
媒質の一点(x ,y ,z)において,音によって生じた圧力の交 流的変化分。時刻 t におけるその場所の圧力p (t ,x ,y ,z) と静圧pSとの差。 pa(t
,x ,y ,z)=p(t ,x ,y ,z)−pS(x
,y ,z) これをその点の瞬時音圧instantaneous sound pressureまたは 音圧の瞬時値ともいう。 普通,音圧といえばpa (t)の実効値,
を指すことが多い。ここにT は周期,周期がないときはT を少し 変えてもpeffが変わらない時間をとる。記号としてはpa,pも特 に断ることなしに実効値として使用される。 なお,以下に述べる用語を含めて,粒子変位,粒子速度等につ いても音圧の場合と同様なことがいえる。
| ■音圧感度 pressure sensitivity |
マイクロホンの電気出力と入射音に感じる部分に実際に働いて いる音圧との比。電気出力は一般に起電力(出力端子を解放した ときの電圧)をとる。単位はV/Pa。 音圧感度レベルは,音圧感度の常用対数の20倍。単位はdB。 0dB=1V/Pa。
| ■音圧の最大値 maximum sound pressure,音圧の波高値 crest value |
周期がある場合,その間での瞬時音圧の絶対値の最大値をいう。 正弦音波では音圧の振幅 amplitudeといい,
| ■音圧レベル sound pressure level |
音圧の実効値paeff Paと基準の音圧(実効値)2×10−5 Pa=20 μPa(空気中の場合)との振幅レベル差
単位はdB。
音の強さのレベルと音圧レベル
音源の存在する室の平均音圧レベルをL1,受音室のそれをL2 としたとき,両者の差D dBを音圧レベル差(level difference)と いう。両室の隔壁の透過損失をR,面積をS(u)受音室の吸音力 をA(u)とすれば,前号解説した(3)式はDを使って次式と なる。
R=D+10 log10(S/A)
| ■音響インピーダンス acoustic impedance |
音場において波面に平行な有限な面を考え,その面における音圧をその面を通過する体積速度で割った複素数比(JIS Z 8106)。記号 Z a,単位Pa・s/m3(ISO 31-7)。
音場内の一点の音圧p (Pa)と,その点の粒子速度ξ(m/s) に垂直な微小面積S (u)を貫く体積速度(すなわちフラックス) ξS (u)との比
を音場のその点の音響インピーダンスといい,複号は交番時間因数 に従い,|ZA|をインピーダンスの大きさ,φ を位相角、RAを音響抵抗,XAを音響リアクタンスという。
強大な音響によって急性に起った聴覚障害をいう。
| ■音響抵抗 acoustic resistance |
音響インピーダンスの実数部。
| ■音響中心 effective acoustic center(ANSI) |
音源から十分離れて,その出力音波が球面波と見なせるとき, その球面波の中心。
| ■音響透過係数 sound transmission coefficient |
境界壁体に入射する音響エネルギー流(音響パワー)をWi(W), これが壁体を透過して反対側の空間に放射される音響エネルギー流 をW0(W)とすると,この壁体の音響透過係数は,
(数値)と定義される。これは音圧透過係数や粒子速度の透過係数とは異な るから注意を要する。
| ■音響特性インピーダンス acoustic characteristic impedance |
自由平面進行波音場内の一点における音圧p (Pa)と粒子速度との比
を音響特性インピーダンスと呼び,媒質の音波のないときの密度ρ0 (kg/m3)と音の伝搬速度c (m/s)との積で表わされる定数とな る。常温常圧の空気に対するρ0c はほぼ430 Pa・s/mである。
| ■音響放射インピーダンス acoustic radiation impedance |
音源の音響放射面が一様な速度ξ(m/s)で振動しているとき, この放射音場の音圧によって音源の放射面に加わる力をF (N)と すると,音源の音響放射インピーダンスは,
と定義され,|ZAM|はその大きさ,φは位相角,RAMは音響放射抵 抗,XAMは音響放射リアクタンスであり,その単位が機械インピー ダンスの単位であることに注意を要する。 音源の放射面の面積をS (u)とすれば,音響放射インピーダン スを比音響インピーダンス比の形で表わすことができ
(数値)
は単位系に無関係に,放射面の形に固有の定数となる。またこの音 源の音響出力は,振動速度を実効値で表わしたとき
となる。 放射面上の速度分布が一様でない場合には,面上速度の平均値を 用いて音響放射インピーダンスを定義することができるが,放射面 上に互に逆位相の速度が生ずるような分割振動が発生している場合 には,音響放射インピーダンスの概念を適用することが困難となる。
| ■音響リアクタンス acoustic reactance |
音響インピーダンスの虚数部。
| ■音源の出力 sound power of a source |
音響出力ともいう。音源が単位時間に放出する音の全エネルギ ー。記号P ,(Pa),単位W。
音源の出力,パワーレベル,見かけのパワーレベル,振動の出力レベル
地震の場合,その大きさを示すのに震度とマグニチュードが使われる。震度は音圧レベルまたは騒音レベルに相当するもので,例えば震源から遠くなれば一般に震度は小さい。これに対しマグニチュードは地震自体のスケールを示すもので勿論一つの値である。振動出力である。これに相当する量が音響の場合はパワーレベルである。(なお震度もマグニチュードも対数尺度をとっていることは興味がある。) 音源の出力の大きさも大小極めて広範囲であって,我々の身のまわりにある物について考えても,大きいものは小さいものの1012〜1015倍もある。当然対数尺度で考えるのがよい。現在用いられているパワーレベルは10−12(W)を基準にして,その何倍あるかをdB尺度で示している。出力1(W)は120 dBであるし,ジェト機がパワーレベル150 dB〜160 dBという場合は1kWないし10 kWの音響出力ということである。 さて音源のパワーレベルを問題とする場合大きく二つの場合を考える。一つは例えばその音源をある室内に入れる場合で,この場合は全体のパワーレベルを考えねばならない。総出力が問題だからである。今一つは例えばある大きい屋外固定設備のような場合で,この時は問題になる方向の見かけのパワーレベルを問題にすればよい。被害者のいない方向例えば空中側とか,反対側に大きい出力があっても問題にしないからである。音源の指向性まで含め,被害者の分布も考慮して,問題の範囲に影響を及ぼすパワーレベルを考えればよいのである。見かけのパワーレベルであり,それがこの場合の実効パワーレベルである。 最後に公害振動の場合の振動源出力はどのように考えるか。現在はこの点について明確な定義も測定法も評価法も確立していない。それは公害振動自体が振動源の近くの地表点で,縦波,横波,レーリー波がはっきり分離されて捕えておらず,また地表の状況などが千差万別でその振動の伝搬性状自体が明確にされていないからである。ただ当然いえることは振動源の強いものが遠距離まで強い振動を及ぼすということで,例えば同じ振動の距離減衰からそこに振動源のパワーレベルのようなものを描き出すことは可能であるし,その前提の下に対策などもしているわけである。すべての振動モード,振動スペクトルに共通のパワーレベルの関係式が出来ていないのが現状である。
| ■音源の出力レベル,音源のパワーレベル sound power level of a source |
音源が単位時間(1秒間)に放出する音の全エネルギー(音源 の出力)PWと基準の工率との工率レベル差。空気中の音の場合 には基準の工率として10−12W=1pWをとる。単位はデシベル, 単位記号はdB。量記号はLP またはLW (ISO 31/Z),ただしISO /TC43ではLW を推薦している。
音波が存在する領域。
| ■自由空間の音場:波面の拡がり,媒質の吸収,指向性,音線のまがりなど |
ここに自由空間というのは,屋外または野外というぐらいの意 味で,地面上の半空間も含み,音源から受音点にくる直接波を考 えている。さて音源から出た音波はまず波面の拡がりによるエネ ルギー密度の減少による減衰を受ける。点音源であれば一般に球 面波状に拡がるので,音の強さは距離の2乗に逆比例して減少す る。倍距離で6dBの減衰である。線音源であれば円筒波状に拡 がるので距離に逆比例し,倍距離で3dBの減衰であり,面音源 ではこの意味の距離減衰はないことになる。しかし実際の音源は 線音源でも,面音源でも有限の大きさをもっているため,長さ, 広さの影響を受けるもので,線音源,面音源ともその中央付近で 測ってもその寸法(線または面の短辺の長さ)の数分の1の範囲 しか正しく上の関係にはならない。 線音源,面音源ともその寸法(面の場合,こんどは長辺の長さ) の10倍程度以上になると,音源全体を一つの点音源と見なして 距離減衰を考えてよい。すなわち倍距離で6dBの減衰である。 この場合の距離のとり方は正しくは,実際の音源から若干後に下 った所に音源中心を考えるのが正しいが,これを無視しても大き い誤差にはならない。それは仮に距離を11l(lは長さ)の代 りに10lとしても,対数尺度でdB値にすると誤差は小さいので ある。 次に媒質の吸収による減衰を考える。空気中の音波の吸収減衰 については,温度,湿度を変えた場合が詳しく調べられており,ISO にも示されている。最も影響の大きいのは周波数で,高周波ほど 吸収は大きく,数1000 Hzになると100 mごとに数dBないし10 数dBの減衰を受ける。 同じく空気中の吸音減衰を,強さI1の音が距離xだけ進行して I2になるとき,I2=I1e−m′x とおいてこの定数m′で表示する 方法もよく使われる。4.34 m′が1mあたり,434 m′が100 m あたりのdBの減衰値である。ある距離以上になると,波面の拡 がりによる減衰よりこの吸収による減衰の方が大きくなるもので, 特に高周波ではこの影響が大きい。したがって一般に原音に高音 成分の多いもの(航空機や軌道車輌の音など)では,音源から数 100 mのところで高周波が急激に失われ音色が変化する。この場 合防音対策は低周波成分に力を入れないと,遠距離に対しては成 功しないことになる。 次に大きさのある音源が多くの場合指向性をもつことは日常経 験するところである。この場合音源自体の形や構造上,ある方向 へ,ある音を出すという形の指向性と,音源自体の拡がりのため に音波の干渉によって空間にできる指向性がある。また点音源な どの群による指向性もある。一般にその音源の近くと音源から離 れた点では指向性は変化するもので,上にのべた線音源,面音源 の場合も近くと遠くを指向性の変化と考えてもよい。特に音源の 中心線上だけでなく,その全面にわたって距離を段々離れてみる と明らかに近接音場と遠距離指向性にわけざるを得ない。中間地 帯には複雑な音場分布ができるもので,これはなかなか一般式で 扱いきれないものとなる。ただしいずれの場合も一定距離以上離 れて,上の例で逆2乗則が成り立つ程度まで離れるとこれ以上指 向性の形は変らない。その方向による強弱が保たれて伝搬する。 これを一般にはその音源の指向性と呼んでいる。 次に音波の異常減衰として音線のまがりによるものが大きい。 気象の影響と呼ばれる空気層内の音線のまがりは,見かけ上ある 方向に異常な減衰として現れる。ただし一方では異常に大きい音 となって来る方向もあるので,一種の指向性現象に似た性格をも つ。例えば風上には音が行かないこと,その代り風下にはそれだ け多く来るわけである。逆転層の影響などもこの例である。空気 の流れや気温の変化など空中の断層からも音は反響して帰って来 る。 今一つの吸音材に沿って行く音波は異状伝搬の原因となる。コ ンクリート面より芝生,かん木林,森林に沿って音は異常に減衰 することが多い。航空機の音も仰角の小さい所では小さく読みと れる。この現象の代表例が吸音ダクトの減音と考えてもよい。
二つの音の高さあるいは振動数の関係を表わすもので,二つの 音の振動数の比またはその比の対数で表わす。対数の場合その底 は別に示される。 振動数の比の対数で表わしたものをANSIやISO 31/Zではfrequency intervalといっている。
| ■音波 sound wave,弾性波 elastic wave |
弾性体内をその力学的性質によってエネルギーが伝わる変動。 通常は,その波の通過は媒質の平衡状態からの一時的変動を起こ すだけである。なお音波というと可聴周波数範囲のものを指すこ とが多い。
媒質の中を波動が伝わる場合,その速度は波動ができるための復元力の定数できまる。例えば空気中の音波では体積弾性が復元力であるため,音の速度c は体積弾性率をk,密度をρとして である。同様に固体棒ではヤング率をE,密度をρとし て が縦振動の速度であるし,同じ棒でも横振動となると 太さまたは厚さが復元力をきめるため,材料の定数以外に太さま たは厚さが速度の式に入る。 さて空気中の音速で上のkはrP0である。ここにr は恒容比熱と恒圧比熱の比であり,P0 は気圧である。すなわち
である。式中密度ρとP0は比例する量である。気 圧が上がれば大気の密度は比例して大きくなる。このため気圧は 音速に影響しない。一方温度の方はρにだけ影響する。温度が上 ると密度が下るのである。正しくは0℃の音速(約331.5 m/s) に対し絶対温度をT としてT/273の割合で変化する。摂氏温度 θがあまり大きくない範囲で次式とおける。
c=331.5+0.61θ(m/s)
媒質の密度をρ(kg/m3),音の速度をc
(m/s)とする時 ρc をその媒質の固有音響抵抗(specific acoustic resistance) と呼ぶ。specificとしたのは単位面積あたりの抵抗という意味 である。抵抗という代りにインピーダンスとも言うが普通実数 であるので抵抗と言う。 さてρc は媒質によって著しく差のある量で,特に気体(例 えば空気)に比べ液体や固体では大きく桁がちがう。MSK系 で数字だけみて,空気で約4×102なのに対し,水ではρ=103, c=1400でρc=1.4×106,コンクリートや金属ではρ=(2.5〜8)×103,c=(3〜6)×103でρc≧107となる。 このことは気体と液体や固体の境界面でいわめるインピーダ ンスが桁ちがいに変化していることを示し,例えば空気中の音 のエネルギーが水の中へ入ることも甚だ少ないこと,また間仕 切り壁に音があたる場合も殆ど100%が反射して音波の形で入 ることは考えなくてよいことを示している。壁の音響透過とい うのは音波のもつ交流圧すなわち力学的な力によって,壁がゆ すぶられ,その振動によって反対側に出る音を考えればよいの である。壁の音響透廻または透過損失がその材料に関係なく質 量だけできまるのはこの性質による。
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