|

(2004年)
- 騒音制御工学会に期待する
- 騒音環境改善のために学術 技術 行政の協調を
- 邯鄲の夢
- 名神高速道路建設の頃の思い出
- 次の世代に期待する
- 騒音問題について啓蒙活動
- 本学会に於ける行政分科会の役割
- わが工学会の展望と課題
- 半世紀
- 騒音制御工学会誌に期待すること
騒音制御工学会に期待する
騒音制御工学会の設立経過については,本誌Vol.10 No.6 に紹介したが,米国においてINCE USA及びInternational INCEが発足したのは,Noise Control Act が米国議会で可決された直後の 1972年で,日本で最初にInter-Noise が開催され,騒音制御工学会が発足したのは,1967年に公害対策基本法が制定されて,騒音にかかる環境基準が設立された直後の1975年である。それ以来約四半世紀の間に騒音に関する研究も飛躍的に活発になるとともに,工学会における研究発表も年一回から二回に増加し,設立当初には予想もしなかったほどの成果があがっていることは,まことに大慶至極である。近年は毎年開催されるInter-Noise への参加者も諸外国に比べて格段に多いことは,会員諸氏,特に若い研究者の活躍によるところが大きい。最近の騒音問題については,毎回の Inter-Noiseにおいて,欧州統合にかかるEU 諸国の騒音規制についての新しい発表があり,米国,欧州,極東の三大地域において環境問題に対する取り組みが本格化していることを示している。その極東の中心的役割を担う日本騒音制御工学会の責任は極めて大きい。
工学会の設立当初,音響学会との違いは騒音対策に関連して,行政における取り組みにも重点をおくことになっていた。近年は騒音の研究者と行政における対策の担当者との交流も活発に行われて,効果的な成果があがりつつあるように思われる。これも音響学会の騒音振動研究委員会と工学会の運営が共通の方々によって総合的に計画されているからであろう。
今後は音響部門に限らず,騒音に関係のある機械,建築,土木や現代の音響研究には欠かせない情報,通信分野との交流によって,新しい発展を図ることが期待される。
【文献】
五十嵐寿一 : 騒音制御工学会の生い立ち
騒音制御 Vol.10 No.6 (1986)
(小林理学研究所 五十嵐寿一)
ページ先頭
騒音環境改善のために学術 技術 行政の協調を
この学会は学術、技術、行政という三つの異なった分野の会員によって構成されており、これがこの学会の大きな特徴で、これは騒音という問題を通じて社会に貢献するためにとても大切なことだと思います。
学会という名の団体は学術研究が主体で、その成果を実用化するための技術は認めてもその地位は低く、さらに行政まで含めている学会は少ないのが現状です。
学会が学術団体だとすれば学術研究を尊重するのは当然かもしれませんが、騒音に関する限り如何に学術研究が進んでもそれを実用化する技術がなければどうにもなりません。その技術が進んでも行政がそれを取り上げてくれなければ問題は解決しないのです。
工業が発達し物流が盛んな現代国家で静かな環境を得るためには、学術、技術、行政が三位一体となって事を進めなければなりません。
たとえば道路交通騒音を例に考えてみましょう。我が国の自動車騒音の単体規制は世界で最も厳しい部類に属します。この規制に合格した車が道路幅に相応しい交通量で制限速度を守って走っても道路の周辺では交通騒音の環境基準を満たせない現実があります。
ドイツの高速道路(アウトバーン)ではその両側40m以内には人の住む家を建てるのを禁じていると聞いていますが土地の狭い我が国ではできない相談です。
となると窓の遮音を良くして室内を静かにするしか考えられません。できれば道路に近接した建物には人が住んで欲しくないのですが都市部では夜間人口が減るのを防ぐためにこうした建物にも住宅を作ることを奨励しているのです。
これは道路に限らず鉄道や航空機の騒音にも、また工場騒音にも言えることで、土地に余裕のある欧米諸国では考えられないわが国特有の問題です。
騒音環境を改善するために学術、技術、行政の担当者が対等の立場で互いに協力して事を進めなければなりません。この三者のどれが欠けてもいけないのであって、全体の総合評価はそれぞれの評価の足し算ではなく掛け算だと思います。どれか一つが0点なら他の二つが100点でも総合評価は0点です。
もう一つ大切なことは立場によって評価の基準が異なることです。学術の立場から見たある技術の評価と技術の立場から見たその技術の評価は同じではありません。このためややもすると自分の立場で相手を低く評価してしまうことにもなりかねません。会員相互の理解を深め互いに認めあうことが大切です。
(東大OB 石井 聖光)
ページ先頭
邯鄲の夢
1. はじめに
騒音公害は典型7公害のうちでワースト・ワンであり、従前に較べて多少減少したとはいえ、状況は必ずしもよいとは言えない。
2. 低周波騒音対策
騒音対策の技術はかなり進んでいるものの未だ十分とは言い難い。
一方、自動車室内、オフィス内などでは空調器用のファンの、さらなる静音化が進んでいる。
他方、低周波音対策が研究され、工藤(東京農工大)などによるサイドブランチ形サイレンサやリアクティブ形サイレンサなどがその例である。
低周波音の音源対策として、たとえばファン自体で35dBもの低周波音が低減し、実用に供していることが筆者らによって報告されている。
3. 学際的研究
以上のハードの研究も大切であるが、これらに対しては学際的立場で研究を行うのも一法と考える。幅広い分野の研究者、技術者の知恵を結集して、ことにあたれば、その進展はかなりのものになろう。
4. 感性を考える
以上の立場とは違って、音環境の技術はそこに生活し作業する人々にとって、静けさと安らぎを与えることになろう。しかし、何か欠如を感じる。それは何であろうか、私は感性への配慮の欠闕であると思う。
感性は定量的にあらわすことは難しい。一つの方法として、音質評価があると思う。音質評価については桑野(大阪大学)、橋本(成蹊大学)らの研究がある。
感性と音質評価の方法は一対一の関係とは言い難いというものの、有効な手段であることは否定できない。
5. 結び
以上、いくつかの問題を抽出したが、各分野の研究者、技術者の研鑽を望むとともに邯鄲の夢におわらないことを望む。
<参考文献>
(1) 工藤信之, ポンプ(静音設計と騒音防止・利用技術), pp.292-298, (1993)
(2) 桑野園子ほか,カテゴリ連続判断法による音質評価, 日本音響学会誌, 38, pp.199-210, (1982)
(3) 橋本竹夫ほか, 定常音の上にAM音を付加した時の音質評価について, 日本音響学会騒音研究会資料, N88-07-01, pp.1-10, (1988)
(4) 鈴木昭次, 超低周波音の発生と対策, 日本機械学会誌, pp.86-91, 日本機械学会, (1983)
(元法政大学工学部機械工学科 鈴木 昭次)
ページ先頭
名神高速道路建設の頃の思い出
わが国最初の高速道路は名神高速道路であるが、それまでの日本の道路は自動車が通行するには全く適していなかった。以下は昭和30年代前半頃の話である。高速道路を建設すると周辺地域にどれ程の騒音を及ぼすのか全く分っていなかった。そこで日本道路公団により当時筆者が在籍していた大阪大学産業科学研究所音響部、北村音一先生(故人)に騒音予測の研究依頼があった。まずは実験車としてワゴン型乗用車と4tトラック各1台を用意し、大阪と奈良を結ぶ通称「阪奈道路」で走行実験を行った。数人の警察官をお願いして5分間づつ約200mにわたって交通を遮断して実験車を走らせた。路肩にポ−ルを立て、防風ガ−ゼを張った金網篭にマイクロホンを入れて種々な高さで吊し、騒音レベルを測定した。道路建設の担当の方はとても張り切っておられて「高速道路での制限速度は100km/hとし、それ以下で走る車はスピ−ド違反として厳しく取り締まる!」という威勢の良いお話であった。
実験の結果、周辺の住民が通常の生活ができる程に騒音を抑えるにはどの位の高さの塀が必要かを更に研究する事となり、大阪市内と郊外で様々な高さの塀について測定したところ、高さ5m程の塀が必要であることが分かった。当時はまだ前川チャ−ト(現・神戸大学名誉教授、前川純一先生のご研究による、塀による減音量の計算グラフ)が無かったので、実際に5mの塀で実験する事となり、各所を探したところ唯一大阪刑務所にあることが分かり、お願いして実験をさせて頂く事となった。北村先生と私は刑務官さんの立合いのもと、服役者ではないという腕章をつけて入り、塀の外にスピ−カを置いて測定を行った。予想通りの結果が得られたが、実際に高さ5mの塀は高過ぎて運転者と近傍の住民に圧迫感を与えかねないと思われた。その後防音塀を低くする研究が行われ、例えば先端を少し内側に曲げた「しのび返し型」、また九州大学大学院芸術工学研究院藤原恭司教授が研究を進めてこられた、吸音性筒状物体が先端に設置されたタイプの塀、または先端を複数に分岐させた「トナカイ型」、そしてもっと効果的な「半地下構造」にする等、多くの工夫がなされた。
何れにしても現在の高速道路網に比べ、名神高速道路しか無かった時代を思うと昔日の感がある。このことは道路網の拡大につれて発生交通量とそれに伴う騒音レベルの予測が益々重要になってくることを意味するであろう。
(九州芸術工科大学名誉教授 音環境システム研究所 佐々木 實)
ページ先頭
次の世代に期待する
このコラムで若い方々の考えをいろいろと読ませていただいた。それぞれの立場の方々が、次のステップへの進展を考えておられるのを見て、この半世紀における騒音振動問題がいかに変遷してきたか、またその中で自分が何をしてきたかを考えさせられます。
私が騒音に関係してから工学会の創立までの25年と、創立当時から現在までの30年の間に環境における騒音振動問題は、技術の進歩と社会の進展に伴って大きく変化をしながら現在にきているなと感じているところです。昭和20年代の私は、騒音などという得体が知れないものが研究の対象になるのだろうかというような疑問を持ちながらの取り組みでした。都市騒音の主体が自動車のクラクションと街頭放送と米軍基地の航空機騒音だった時代です。気が付いてみたら、工場事業場の騒音や建設工事の騒音とあわせて交通機関の騒音が大きな問題となって、いわゆる公害という観点から取り上げられてきた騒音を仕事とする人達の中に入っていました。多くの現場を見て研究の火種が一杯という時代だったのを思い出します。
行政が真剣に公害問題を取り上げてきたときの学識経験者の端くれに入れてもらって、行政というものの重要性にもタッチすることが出来ました。これが日本騒音制御工学会の設立に重要な三本柱として、学術、技術、行政の共同体が出来た大本になっています。若い方々はそれぞれの時代の変化の中での騒音振動問題に取り組んでおられるので、時代にマッチした問題の把握をしていることと思いますが、普段考えていることを述べてみます。
●騒音振動では現場の計測が基本ではないかということ。現場を知らずにバーチャルの世界での知識だけでは実生活での騒音振動問題は解決しない。●今のコンピューターを基本とする技術の進歩は、これで何でも出来てしまうという奢りにつながってしまうのではないかとの危惧。●国際的な基準の発信源となってほしいけれども、基準の中にも幅をつくり、国情で選択できる自由がほしい。●問題に取り組むときに、突き進むばかりでなく、振返って全体像を眺める余裕がほしい。
などです。時々、なんで20世紀はあんなに急いで重厚長大の箱物に拘ったのだろう、もっとゆっくりだったら公害問題なども起こらなかったのではないかと感じることもありました。しかしこれを言ったら技術屋の負けかなと口をつぐんでしまうのですが。これからも技術屋の実績を役立たせるためにも、行政との協力が中心になってほしいと思うのです。
(小林理学研究所 時田保夫)
ページ先頭
騒音問題について啓蒙活動
本誌Vol.28 No.1の会員コラムで、五十嵐寿一先生から日本騒音制御工学会の成り立ちについて、石井聖光先生から本学会が学術、技術、行政の三者が協力して騒音問題の解決にむけて活動している特色ある学会であることが紹介された。成立時からの伝統を踏まえ、学術、技術、行政の三者の活発な連携体制はユニークで素晴らしい。これを実感したのが本学会の研究部会および外部委託も含む種々の委員会活動で、ここではまさに学術、技術、行政の三者の間で忌憚のない意見と情報の交換が行われ、学ぶことが多く、私自身、大いに充実感を味わうことができた。
学会誌「騒音制御」は論文、技術報告の他に解説や特定テーマについての特集号など、異なる分野からの騒音制御に迫る新しい情報を得ることができるのが有り難い。この分野の取り上げ方は視野が広く、たとえばVol.27 No.2のように「福祉・医療・教育における音の活用」やVol.28 No.1の「音響に関する国際規格の最新情報」のように騒音に限定せずひろく音一般の重要なテーマについて丁寧な紹介がなされている。
本学会に期待することは、現在のアクティビティの高さを維持しつつ一般会員および社会に対する啓蒙活動のさらなる推進である。先に述べたように本学会では研究部会に属する種々の分科会および騒音評価手法や高速鉄道騒音の評価など種々の委員会が設けられ、活発な活動を行っている。研究部会の活動は学会誌にその概要が掲載され、委員会の成果は報告書にまとめられるが、進行途中の研究もありその総てが公表されるわけではない。春か秋の研究発表会の折りにでも分科会活動全体をPRする機会や、あるいは特定分科会の企画で一般市民も対象に公開講演会などの機会を設けることなど考えられる。騒音のような環境問題の場合、その解決に向けて一般市民の意識が大いに関与すると考えられるからである。
(大阪大学名誉教授 難波精一郎)
ページ先頭
本学会に於ける行政分科会の役割
最近の騒音・振動行政をみますと,極めて厳しい環境に直面しています。騒音に限ってみても,関係法令の制定時からみると発生源及びその形態が多種多様化し,測定・評価も大きく改訂されましたが,住民の騒音に対する意識の変革によりその受け取り方(苦情)も大きく変わりました。その対応にも,例えば単に騒音計による騒音レベルのみではなくスペクトル,継続時間,時間帯等の要因が絡み、苦慮することが多くなっています。加えて,市町村を指導する立場の都道府県においては研究機関等の騒音振動部署の統廃合,法の規制業務を行っている地方自治体においては騒音振動の組織体制の縮小,財源難による測定・調査体制の不整備,担当者の短期間の定期移動による経験・情報量の不足等により,必ずしも十分な行政対応が出来ない状態となっています。
さらに,行政改革の煽りで市町村合併により新たに関連法令の業務を施行しなければならない地方自治体の誕生もあります。このような現状を踏まえて本工学会,取り分け行政分科会の方向性,使命,役割はなにか。本工学会は学界,業界,行政が三位一体となった組織であり,それぞれの立場を尊重せねばなりません。 しかし,現実は三者がバランス良く保たれているとは思えません。行政側からみると,精一杯の努力をしている割に,技術力が伴わないためか,説得力に乏しいためか,会員数が少ないためか,本工学会における行政の立場は弱いように思われます。本来は,行政は住民の苦情対応,その時の騒音レベル等の実態,対策後の評価等々の現場を熟知した,生きた情報を持ち合わせて本工学会で活動すべきでしょう。
私は現在幸いに(?)大学,行政,企業で環境問題に関わっていますが,こと騒音に限っても,アセスメント,大店立地法等における実測値の曖昧さと不足,企業の環境管理における測定体制の不整備或いは各自治体の実態報告の少なさ等が目につきます。
環境問題のメディアにおいて,読者に対し現場のペンによる記事よりも写真の方がより真実性或いは感動を与えるとして重んじられるように,騒音等においても現場の実測データがより重視されるべきでしょう。そのために,行政分科会が率先して−現場を重んじた実測−の行動を起こすことが必要ではないでしょうか。当然,本工学会はその支援を積極的に行うとともに,地方の騒音振動対策の実態にも目を向け,加えて昨年度の本コラム等に提案された若い人々の意見を尊重する組織体制の確立が急務であると思います。
(前神戸市環境局・環境カウンセラー 瀬林 伝)
ページ先頭
わが工学会の展望と課題
INCE/USA の要請でInter-noise75が仙台で開かれ、その翌年わが工学会が結成されてから30年に近い。
隔月に発行される学会誌や技術(部会)レポートの充実ぶりは、春秋の研究発表会の活況と共に目覚しいものがある。にも拘らず音は何故マイナーか?。
1984年5月の総会で制定された工学会認定技士資格制度は,当時の石井会長の下,副会長の中野氏と私が2年掛けて原案を作成したもの。騒音公害対策の社会的ニーズが高まったのに,その責任を負うべき音響技術者の社会的地位が認められず,環境計量士制度の国家試験にも化学分析の技術を要求され,音響屋の所在が無いかのような状況であった。何とかして我々の存在を社会に認知して貰う必要があったのである。
その目標達成はいつか?。長引く不況の中,実力重視の傾向と共に資格ブームとさえ言われ、その種類は1000とも2000とも言われる。社会に貢献する個人の能力を証明するもの故,国家資格が最高である。国が直接試験をせず只認定することによっても公的資格として認められ,高い信用や評価を得ているものがある。文部省認定の実用英語検定や簿記能力検定,通産省認定のインテリア・コーディネータ等がそれ。わが工学会認定技士を環境省が認定しないのは何故か?、その理由を明確に把握する必要がある。そしてその障害を克服して国家資格を勝ち取るには、担当理事を決め、いろんな立場から考えて環境省を攻略するのに、会長が先頭に立って全力を揚げて取り組んで欲しい。
さらに関連する問題は、道路交通騒音予測式、大店立地法、品確法・住宅性能表示等、音響技術者の活躍が当然期待されるべき場であるのに、それらのマニュアルが出来、ソフトまで売り出される事になると、其の作成に尽力した音響専門家が一転して排除される場になる。この現実を許して良いのだろうか?。何かが狂っている。何かが間違っている。社会構造に問題がある、と言って座視できない問題ではないか。
参考に先進諸外国はどうなっているのだろうか?。
先ず、自らの能力を高めinter-noiseに発表する件数を増やすための研鑚をするのは当然だが、音の重要さの社会的アッピールを、政府・民間に対して工夫を凝らして、強力に推進すべきではなかろうか。
最後にお願いしたいこと。日本騒音制御工学会・1976年・創立以来の足跡、30年の歴史資料を編纂し後世に遺して頂きたい。世代交代の時期なのだから。
(神戸大学名誉教授、環境音響研究所、前川純一)
ページ先頭
半世紀
1951年,鹿島建設技術研究所に入り半世紀に及ぶ技術研究者としての生活が始まった。企業に属した故もあって,筆者は,工学技術はその時代か近未来において実用され,社会に貢献すべきものと常に考えてきた。その後四半世紀を経た1976年,騒音制御工学会設立に参画できたことはその意味でも本当に幸いで,それからの研究生活の基盤となった。
工学会は,騒音公害問題への対応を軸に,法令の整備,技術の向上と専門家の権威の確立及び組織化,良い生活環境に関わる市民の知識や理解を進めることなどに大きく貢献しつつ成長を遂げてきた。設立後四半世紀を経て,環境分野は,健康安全と不快解消のための公害対策から一歩進んで,生活の中の心理や感性といったアメニテイ,快適な空間の創出まで範囲が広がってきている。
現在の騒音問題は,1つが鉄道,空港,高速道路,大規模市街地開発といった国,自治体レベルの巨大広域プロジェクト,もう1つが住宅内外や施設周辺など市民生活近傍の個別の問題を対象にケースバイケースの対応が求められる仕事というように,はっきり2極化してきたように思われる。前者に関しては,唯一の専門工学会としてもっと積極的に関与し,発言の機会を求めなければならない。後者に関しては,個人的レベルで生ずる多様な対応事例を収集して肌理細かく分類・分析を行い,データベースに整備してコンサルタント,アドヴァイザ業務の処理能力をレベルアップし,一般化することが必要になろう。
重要な変化に少子高齢化があり,今後半世紀は身体機能が衰えた高齢者の比率が高い社会が続く。補聴器を着用して初めて,騒音を含めて質量共に情報損失がいかに大きかったかに気付く。苦情への共感や評価が鈍っていたのではないか,自分自身の反省である。住居地区では解体工事,自動車よりむしろ単車,生活動脈の補修,商店街の宣伝,空調室外機,水洗など居住環境にこれほど喧しく煩わしい騒音があるとは,専門家としての問題意識が問われよう。
最後に認定技師について,環境省によるオーソライズは急務として,折角国際組織を持つ騒音制御工学会であるからにはAPECエンジニア*への道を是非検討していただきたい。将来は技術を保証する保険制度の確立も視野に入れるべきであろう。
*APEC Engineer:現在日本ではCivil(技術士),Structural(1級建築士)のみ。他にEnvironmental, Mechanicalなど合計11分野がある。加盟国は,韓,米,加,豪,マレーシア,インドネシアなど10カ国。
情報は,http://www.engineer.or.jp/apec/whatis.html
(長友宗重)
ページ先頭
騒音制御工学会誌に期待すること
工学会誌「騒音制御」は、1977年の創刊以来隔月刊で発行されています。騒音制御工学会は会員の構成が広い範囲にわたっていることが特徴であるために、通常の多くの学会誌と比較すると論文・解説をはじめとして毎号が手元に届くたびに実際に読む部分が多く、しかも年を追って充実した内容になっています。
現在工学会の会員数は世界中の騒音制御関連の学協会のなかでトップクラスであり、毎年開催されているインターノイズでの発表件数は主催国に次いで2番目になるのが通例になっています。ただこうしたインターノイズでの発表はすべて英文で書かれていますので、発行された論文集やCD ROMを工学会の会員が直接に目を通す機会が多くないのが残念なことです。
これについての一つの提案ですが、少なくとも日本からの発表論文のアブストラクト(日本文)を「騒音制御」に掲載することができれば、会員にとって役に立つことが多いと考えられます。発表者には余分な負担をかけることであり、また会誌のページ数の増加も避けられないことになる訳で、簡単に実現することはできない問題ではあることになりますが、学会誌のより一層の充実に貢献することになると判断されます。さらにこうした欄を設けることは、会員の活動範囲を拡大することにも寄与することになります。
学会誌をこうした方向で充実させることは、会員数の増加にも大きな役割をするわけで、今後の工学会の発展に対しても重要な問題になると判断されます。さらにこれは今後益々重要性の増加が期待されます国際貢献という面からみても無視することができなくなるに違いないと思われます。
国際貢献という面での騒音制御の分野については、日本からの研究内容は世界中から注目されており、特に道路、鉄道、航空機など環境騒音の問題や騒音評価の基本的な取り扱いに関連した問題については、海外でも参考にされることが多いので、その状況を把握しておくことは、われわれの研究を発展させるためにも寄与するものになると考えられます。
また日本からの発表が比較的少ない研究分野について、今後の日本からの貢献を考える上でも、参考にしたいものになることが期待されます。
(千葉工業大学 子安 勝)
ページ先頭
|