(1998年)


  1. [Q]道路交通騒音の環境アセスにおける保全対策として、最近では「透水性舗装にする」という事例が見られます。実際には、 どの程度の減衰が期待できるのか、また、その問題点 をお教え下さい。
    (地方自治体土木関係職員)

  2. [Q]当学会ではいわゆる「電子投稿」について どうお考えでしょうか。他学会の動向も含め てお教え下さい。
    (建設会社研究所研究員)

  3. [Q]低周波音の健康に与える影響について 教えて下さい。
    (建材メーカ社員)

  4. [Q]騒音規制法の罰則について、簡単に説明して下さい。
    (地方自治体職員)

  5. [Q]騒音に係る環境基準の測定は、 都道府県あるいは市町村が行うのですか。
    (地方自治体職員)

  6. [Q]特定工場の騒音を敷地境界にて測定する場合、 特定施設の騒音レベルが低く、特定施設以外の騒音がレベル的に 高い場合もありますが、特定施設以外からの騒音を評価して規制 基準と比較してもいいものですか。
    (環境ビジネス会社社員)

  7. [Q]室間音圧レベル差、重量・軽量床衝撃音測定などで、 音源側と受音側の広さによって吸音力等も変化すると思いますが、 どの程度の比率で受音側の音圧レベルがどう変化するの か目安といったものはありますか。
    (石膏製造会社 社員)

  8. [Q]室間音圧レベル差の測定に63Hzが含まれていないのは どのような理由なのでしょうか。
    (スレート製造業 社員)

  9. [Q]地下鉄と地下のホールとが隣接するような場合、 山止壁の騒音・振動効果について分かる範囲で教えて下さい。
    (建築設計監理会社 社員)

  10. [Q]流体では流れを乱さない事が騒音を 抑えるこつの様ですが,逆に流れを乱す事で騒音を抑える事は可能でしょうか。
    1)一様流中に球がある場合,層流よりも乱流の方が剥離点が球の後方に移り, 渦が生じ難く抵抗も少なくなる (ゴルフボールのディンプルは流れを乱し剥離を抑える)。
    2)飛行機の翼にも,境界層の発達とその末に起きる剥離を抑えるために, Vortex Generatorなる小突起を付けて流れを乱す。
     以上の2点を聞いた事があります。剥離に因って生ずる渦と音の関係を 詳しく教えて下さい。
    (楽器メーカ社員)


Vol.22 No.1 (1998.2) より


道路交通騒音の環境アセスにおける保全対策として、 最近では「透水性舗装にする」という事例が見られます。 実際には、どの程度の減衰が期待できるのか、また、 その問題点をお教え下さい。

(地方自治体土木関係職員)


ご質問の「透水性舗装」は、使用目的により、 「排水性舗装」または「低騒音舗装」と呼ばれています。平成元年頃より、 雨天時の事故に対する対策として用いられ出したため、 路面の水を排水する舗装として「排水性舗装」と呼ばれていましたが、 平成6年頃より騒音対策として用いられる場合には「低騒音舗装」と呼ばれています。以後、 「低騒音舗装」という名称を使わせていただきます。

 道路交通騒音は、1,250Hz付近で最も大きい音の圧力レベルを示しますが、 「低騒音舗装」はこの周波数を含む周波数範囲で音の圧力レベルを 減衰する効果があります。タイヤ転がりによるエアポンピング音 (空気の破裂によりタイヤリブを震わす音)の減衰、 エンジン音などの吸音により音が減衰します。

 また、発生源にて音を減衰させることから、その効果は一定の値ではなく、 交通量が増減すれば変化します。「低騒音舗装」の空隙量や質の違い (設計空隙量の違い、施工誤差)、舗装面積(舗装する車線数や延長) によっても変化しますが、 普通に施工されている滑らかな表面の舗装に比較しますと、 L50値で3〜7dB程度減衰が期待されます。

 なお、「低騒音舗装」は空隙があるため、 沿道の埃や自動車が持ち込む土砂成分により詰まったり、 大型車両の走行による厚密により詰まりますと、音の減衰効果で減少します。 つまり、「低騒音舗装」の問題点としては、 その減衰効果が遮音壁のように半永久に持続するわけではないことが 挙げられます。関係機関における研究報告文献を見ますと、 効果は施工後4年までは確認されています。

 計画段階の環境アセスとして取り込むためには、 「低騒音舗装」の騒音減衰値の予測計算式の確立、 減衰値を確保するための舗装の適切な時期での打換及び 機能回復洗浄が担保される必要があります。

 「低騒音舗装」の減衰効果は、遮音壁のように半永久なものでないため、 遮音壁による対処ができない(橋梁補強なしでは嵩上げできない、 遮音壁では非常に不経済)場合、 マンション等の高層建築物への対処として使用されることが望まれます。

(日本道路公団名古屋建設局 中崎邦夫)

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Vol.22 No.2 (1998.4) より


当学会ではいわゆる「電子投稿」についてどうお考えでしょうか。他学会の動向も含めてお教え下さい。

(建設会社研究所研究員)


最近のパソコンは処理能力が飛躍的に高くなり、 良質のソフトウェアを利用すれば簡単に高品質の 版下原稿ができるようになりました。したがって、 他学会においては会誌への投稿形態として、(1)版下原稿、 (2)テキストファイル付原稿、 (3)版起こし用原稿が用意されていることがあります。

 日本騒音制御工学会では、現在まだ、版起こし原稿で投稿していただいてお りますが、印刷所の受け入れ体制の改善にあわせて、 順次テキストファイル付原稿に移行したいと考えています。 すなわち、通常の原稿(文章・図・表・写真)に加えて、 テキスト形式で作成した文章ファイル入りフロッピーを 提出していただくことになります。このことにより、 執筆者にとって著者校正の負担が減ることになりますし、 学会にとっては会誌作成の省力化および経費削減に役立つと考えていますので、 積極的に進める所存です。その実現に向け、 試験的に電子投稿を受け付けて問題点を整理・ 検討していきたいと考えておりますので、 電子投稿の希望者はその旨お申し出下さい。

(編集委員会)

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低周波音の健康に与える影響について教えて下さい。

(建材メーカ社員)


人が低周波音を感じることができる最低音圧レベルは20Hzでおよそ75dB、 10Hzでおよそ100dB、5Hzでおよそ110dBと言われています。 私たちが日常生活している住空間にも40dB〜 110dB程度の低周波音は存在しています。 人は低い周波数の音ほど大きい音圧レベルでないと感じないので、 低周波音の存在に気づかない場合が多いようです。しかし、 低周波音のレベルが大きかったり、戸や窓がガタガタしたりして 低周波音の存在を知り、それが苦情につながることがあります。 低周波音による苦情は、人への影響(心理的影響、生理的影響) と建具等への影響(物的影響)に分けられます。 我が国では低周波音の音圧レベルが70〜80dBから苦情が発生していますが、 これは20Hz以下の超低周波音と呼ばれる領域では 人よりも建具の方が低周波音に敏感で、 人が感じるよりも低い音圧レベルで戸や窓が振動してガタガタ音を発生し、 それが苦情となるからです。

 1984年に環境庁が行った低周波音苦情が発生している29 の地域におけるアンケート調査によると、物的訴えが最も多く、 気分のいらいら、不眠等といった心理的訴えや、頭痛、耳鳴り、 胸・腹の圧迫感等の生理的な訴えは全体のわずか10% 程度しかありませんでした。

 海外では、異常な運転状況の大型機械や施設近傍などで120〜130dB といった大きな音圧レベルの超低周波音がかつて問題となり、 1970年前後に140dBを超える強烈な超低周波音による影響についての 実験が行われています。Johnson は0.2Hz,140dBと20Hz,120dB を結ぶ線を生理的な影響を現さない限界として提案しています。 近年では、一般的な作業環境や生活環境における低周波音を想定して、 120dB以下の音圧レベルの低周波音の研究が主流となっています。 環境庁の一連の調査や国内の研究者による研究では、 最大で120dB程度までの低周波音を用いて低周波音による生理影響について 調べていますが、低周波音による影響は認められませんでした。 睡眠影響については、環境庁の調査によれば、 通常のレベルでは睡眠への影響はほとんどないが、 眠りが浅い場合に 10Hz;100dB、20Hz;95dB で目が覚める場合があるという結果が得られています。 低周波音の感覚的な影響では、低周波音特有の感覚として、 圧迫感・振動感があることが確認されています。 当所で行った実験結果によると、40Hz,78dBで半数の人が圧迫感・ 振動感を感ずるという結果が得られました。

 しかし、低周波音の知覚メカニズムそのものの解明が進んでいないこと、 低周波音の長時間暴露の調査がほとんどないこと、 被験者の個人差が大きいことなどの理由により、 現状では低周波音の健康への影響は明らかになっていません。 低周波音による影響解明のため、今後の研究が望まれます。

((財)小林理学研究所 落合博明)

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Vol.22 No.3 (1998. 6) より

騒音規制法の罰則について、 簡単に説明して下さい。

(地方自治体職員)


行政各法においては罰則を設けていることが多いのですが、 法律に義務として規定されている以上、 国民ほ罰則の有無に関わらず法律に従うべきであり、 法律も国民が義務を履行することを期待しています。 特に公害関係行政法の場合、その義務規定は、国民全ての健康を保護し、 生活環境を保全するためのものであり、その意味においては、 法律がその義務が履行されることを強要しているものといえるでしょう。 ただ、その履行強要、履行期待の度合いなどは、その義務の性格、 内容、不履行のときの影響などによって強弱大小の差があります。

 騒音による被害は、直接健康に悪影響を及ぼすものではなく、 騒音が規制基準を超え、 地域住民の生活環境に被害を与えている場合であってもその被害の 本質態様が感覚的なものであるため、いわゆる直罰主義ではなく、 まず改善勧告、改善命令によって事態の改善を図る取扱いとしています。

 従って、騒音規制法においては、 法第12条第2項の規定に基づく改善命令に違反した者に対し、 1年以下の懲役または10万円以下の罰金を科すこと、 法第15条第2項の規定に基づく改善命令に違反した者に対し 5万円以下の罰金を科すこととしています。(法第29条、第30条)

 また、本法では、各種の届出義務が科せられていますが、 これらの届出をせず、又は虚偽の届出をした者に対し、 罰金又は過料が科せられることとされています(法第30条、第31条、 第32条及び第33条)。さらに、都道府県知事(市町村長に委任) が法第20条の規定に基づく報告の要求に対して報告をせず、 若しくは虚偽の報告をした者、 又は同条の規定による都道府県知事の命令による職員の立入り検査について、 その検査を拒み妨げ、忌避した者は3万円以下の罰金に処せられます(法第31条)。

 なお、法第32条の規定は、いわゆる両罰規定です。両罰規定は、 犯罪その他違法行為が行われた場合に、行為者本人のほかに、 その行為者と一定の開係にある他人がこれに連座して 刑に処せられることを定めた規定をいい、 本条では「法人の代表者若しくは法人若しくは人の代理人、 使用人その他の従業員が、その法人又は人の業務に関し、第3O条、 第31条、第32条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、 その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科すると規定しています。

(環境庁大気保全局企画課大気生活環境室振動騒音係)

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騒音に係る環境基準の測定は、都道府県あるいは市町村が行うのですか。

(地方自治体職員)


騒音に係る環境基準の類型当てはめの事務は、 「環境基準に係る水域及び地域の指定権限の委任に関する政令」 (平成5年政令第371号)の規定に基づき、都道府県知事が行うこととされています。 しかしながら、騒音に係る環境基準に照らした評価を 行うための騒音の測定を誰が行うのか、環境基本法には規定されていません。

 騒音の測定に関する規定を探すと、 騒音規制法第21条の2に指定地域内における騒音の測定を都道府県知事 (市町村長に委任)が行うと規定されています。この規定により騒音の測定は、 騒音に係る環境基準に照らした評価を行うための騒音の測定を含めて、 市町村が行うと―般的には考えられています。しかしながら、 騒音規制法第21条の2では、 指定地域内の騒音の測定について規定しているわけであり、 環境基準のそれぞれの類型を当てはめる地域内での 騒音の測定について規定をしているわけではありません。

 では誰が、騒音に係る環境基準に照らした評価を行うための騒音の測定を 行うのでしょうか。騒音に係る環境基準の類型当てはめを行うのは 都道府県知事ですから、適切に類型当てはめがなされるためにも、 まず都道府県が騒音に係る環境基準に照らした評価を行うための騒音の 測定を行う必要があると考えられます。

 また、環境基準は環境基本法に規定されているとおり、 維持されることが望ましい基準であると同時に政府の達成目標としての 性格を有しており、騒音規制法は騒音に係る環境基準を達成するための 施策の一つとして位置付けられています。従って、 騒音規制法を施行する都道府県、市町村ともに騒音に係る環境基準に 照らした評価を行うための騒音の測定を積極的に行い、 騒音の発生状況を適切に把握することが望ましいといえるでしょう。

(環境庁大気保全局企画課大気生活環境室振動騒音係)

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Vol.22 No.4 (1998. 8) より


特定工場の騒音を敷地境界にて測定する場合、 特定施設の騒音レベルが低く、特定施設以外の騒音がレベル的に 高い場合もありますが、特定施設以外からの騒音を評価して規制基準と 比較してもいいものですか。

(環境ビジネス会社社員)


騒音規制法の規制対象となるのは、 都道府県知事(指定都市・中核市にあっては市長)が指定する地域内にある、 著しい騒音を発生する施設であって政令で定める施設 (「特定施設」という)を設置する工場又は事業場 (「特定工場等」という)です。

 これらの工場及び事業場から発生する騒音の規制は、 「特定工場等から発生する騒音の規制に関する基準」に基づき行われています。 題名からも理解できるように、単に特定施設から発生する騒音だけではなく、 特定工場全体から発生する騒音が規制の対象となります。

 もっとも、騒音規制法の工場騒音の規制が同一場所に定着して騒音を発生す ることにより、周辺の生活環境に大きな影響を及ぼすのを防ぐことを法の直接 の狙いとしていることから、工場内の同一場所に設置される施設(特定施設及びその他の施設)から発生する騒音が規制の対象となると解されています。

 なお、「設置」の概念は法令中に明確に定義づけられておらず、機械の置か れている状態や移動範囲などを考慮し、各事例毎の判断が必要となります。

(環境庁大気保全局企画課大気生活環境室振動騒音係)

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室間音圧レベル差、重量・軽量床衝撃音測定などで、 音源側と受音側の広さによって吸音力等も変化すると思いますが、 どの程度の比率で受音側の音圧レベルがどう変化するのか 目安といったものはありますか。

(石膏製造会社 社員)


室内音圧レベル差や重量・軽量床衝撃音レベルの測定方法は、日本ではJIS (日本工業規格)に制定されており、それぞれJIS-A-1417“建築物の現場にお ける音圧レベル差の測定方法”とJIS-A-1418“建築物の現場における床衝撃音 レベルの測定方法”であります。
この測定方法の基本はあくまでも建築物の空間の音響性能を得ようとする観 点から制定されており、受音室における音圧レベルの絶対値を重点に評価する 立場をとっています。更にこの規格は受音室の広さや吸音力がどの程度でなけ ればならないという規定ではなく、一般的な室の使用状態を想定している程度 です。そのため受音室が広かったり、内部の吸音力が大きい場合には、当然そ の影響を直接受けることになります。この影響度合いは吸音力の比の常用対数 の10倍で評価されます。すなわち、吸音力が2倍になれば3dBの差になりま す。一般的な室の使用状態といっても、カーペットやソファーの状態、家具の 配置、また人の存在によって室の吸音力は2倍程度の変化はあるものと考えら れます。

国際的にはISO(International Standard)140シリーズの規格があります。 “Acoustics-Measurement of sound insulation in building and of building element-Part 4:Field measurements of airborne sound insulation between rooms”と“Acoustics-Measurement of sound insulation in building and of building element-Part 7:Field measurements of impact sound insulation of floors”がそれです。

この規格の基本は建築物の部位性能を評価する方針であるため、受音室の吸 音力や残響時間を基に基準化して評価値を得る手法をとっています。吸音力は 10m3 、残響時間では0.5秒がその基準値となっているため、受音室の広さや吸 音力の影響の少ない指標といえます。

最近になって前述のJISは改訂されることになりました。これはGATT(関税 と貿易に関する一般協定)を1995年に改組したWTO(世界貿易機構)における 非関税障壁撤廃の要求に対応する施策の一つとしてJISの国際整合化が進めら れるようになったためです。ただし、建築の分野においては、各国における建 築構造や生活様式の違いなどに関連して、建築法規なども独自の形で規定され ていることが多いため一概に整合が取りにくい面があるのは当然と考えられま す。

建築音響分野のJISについても、特に空気音及び床衝撃音遮音性能の測定・ 評価方法については、対応するISO規格との間に多くの不整合があり、国際整 合化は容易ではないことが想定されました。これらのJISに関しては、その主 管が建設大臣となっているため、この規格改訂に関しては、建設省から(社) 日本音響学会に委託が行われ学会内に委員会を設置して改訂作業が行われまし た。その結果、本年3月に規格原案が答申されました。

今回答申のJISは基本的にはISOを踏襲し、それから大きくはずれる点に関し ては、付属書などで対応をとる方針としています。更に、重量衝撃源遮断性能 の測定法はISOにはないため、現行のJISをPart1は軽量、Part2は重量というよ うに2分割して作成されていることが特徴です。

現在ではこのJISがどのようなスケジュールで制定公布されるかは明確では ありません。公布されるようになれば、各方面からニュースが入ってくるよう になると思いますので、皆様もそれに注意しておいて下さい。

安藤啓(鹿島建設技研)0424-89-7123 

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Vol.22 No.5 (1998.10) より


室間音圧レベル差の測定に63Hz が含まれていないのはどのような理由なのでしょうか。

(スレート製造業 社員)


室間音圧レベル差は住宅の居室やホテルの客室など事務所、宴会場などと比 較して小さい室で多く測定されています。室間音圧レベル差測定は室における 音がある程度以上拡散した状態で測るのを前提にしていますので、小さい室で は波長と室容量、形状によっては拡散音場が形成できなくなります。

 実用的な周波数としては、63Hz帯域も欲しいところで、実際に測定しても何 らかの値はでてきます。

 これが、他の周波数帯域同様な測定精度と意味を持つかどうかが理由の一つ です。スピーカで音場を作る場合、1個用いる時や2個以上用いる時、また無 指向性型を用いる時などで音圧分布は変り、それらの偏差も変ってきます。受 音点のマイクロホンの位置による音圧の分布状態も周波数が低くなるとバラツ キは大きくなり、測定点間で10dB以上の差が生じてきます。あまり大きな差が 生じると、空間平均の意味が薄れ、特定場所間の色合いが強くなってきます。 現行の各受音点間の差が10dB以内を基本と考えると63Hz帯域は満足しない確率 は高くなり、31.5Hzはなおさらでしょう。

 現在JISの国際整合化が行われていますが、この中で“低周波数域の測定が 必要な場合には、オクターブバンド測定による場合は中心周波数63Hzの帯域、 1/3オクターブバンド測定による場合は中心周波数50Hz、63Hz、及び80Hzの帯 域について測定を追加する”という備考が案として盛り込まれています。バラ ツキや定在波などを考慮すれば、実用的に必要な63Hz帯域を測定しても良いと いう方向が付け加えられる予定です。実際の測定時には、測定上の工夫や、注 意事項を解説として作成して、条件をそろえるようにして、測定結果の信頼性 を上げる必要があるでしょう。 ホールや体育館と隣室のような場合は、特定 場所間音圧レベル差として考えれば、問題点は少ないのではないかと考えられ ます。いずれにせよ測定上の目的がはっきりしていれば、開発などに応用して ゆくことについては、発展的に考えたほうが良いと思います。

(三井建設技研 安岡博人)

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地下鉄と地下のホールとが隣接するような場合、 山止壁の騒音・振動効果について分かる範囲で教えて下さい。

(建築設計監理会社 社員)


地下鉄に近接した建物では、列車走行時に発生した振動が地下鉄構築、地盤 を介して建物に入り込み、建物躯体を伝搬して居室の内装から放射する固体伝 搬音が影響を与えることがよく知られています。この低減方法として、軌道の 防振、居室内装への浮き構造の適用等が多く用いられていますが、近年図1に 示すような山止壁(地中連壁)と建物地下壁との間に防振材を挿入して地盤か ら建物に伝搬する振動を低減する方法(以降防振地下壁と記す)も散見される ようになりました。防振地下壁の防振効果は、本来防振地下壁を採用しない場 合に対して採用した場合に低減できる振動(固体伝搬音)の量(挿入損失)と して求めるべきでありますが、同じ建物でそのような量を測定によって得るこ とは現実的にはできないと言って良いと思います。これに対して、防振材を介 した地中連壁と防振地下壁との振動の差(伝達損失)は、実際の建物でも測定 可能です。

 また、建物の最下部より下では図1に示すように防振地下壁が構成できず、地下鉄振動は建物の最下部から主に伝搬するので、防振地下壁の防振効果には 限度があります。

 擬似的な挿入損失としては、地中連壁施工時と防振地下壁施工後の地下鉄固 体伝搬音の差を測定した事例がありますが、地下鉄固体伝搬音の卓越周波数の 63Hz帯域では40dB程度の低減効果が認められています。また、伝達損失として は、5〜8dBという測定事例があります。

(大成建設技研 平松友孝)

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Vol.22 No.6 (1998.12) より


流体では流れを乱さない事が騒音を 抑えるこつの様ですが,逆に流れを乱す事で騒音を抑える事は可能でしょうか。
1)一様流中に球がある場合,層流よりも乱流の方が剥離点が球の後方に移り, 渦が生じ難く抵抗も少なくなる(ゴルフボールのディンプルは流れを乱し剥離 を抑える)。
2)飛行機の翼にも,境界層の発達とその末に起きる剥離を抑えるために, Vortex Generatorなる小突起を付けて流れを乱す。
 以上の2点を聞いた事があります。剥離に因って生ずる渦と音の関係を詳し く教えて下さい。

(楽器メーカ社員)


流体の非定常な動き(流れ)から発生する音(流力発生音または流体音と呼ぶ) を抑える方法として、流れを乱すことで発生音を低減できる場合もあります。 特に物体周りのはく離流れのように流れの構造が複雑な場合には、あえて規模 が小さい流れの乱れを作ることではく離域を縮小できたり、乱れの相関スケー ルを小さくできる場合には、この方法は有効です。

 ご質問の中で示されている2つの事例は流体音の低減ではなくて、はく離流 れの制御方法として良く知られていることです。まずこの2事例について補足 説明をします。物体表面(流体中の固体境界面)上にはく離流れが発生すると流 体抵抗が増加するので、これを防ぐ手法が幾つか解明されています。一方、境 界層流れには層流境界層と乱流境界層の2種類があり、はく離流れが発生する タイミングは乱流境界層の方が遅く(下流側に)なることが解っています。そこ で、事例2)のように飛行機の翼面においてはVortex Generatorと呼ばれる小さ な突起を装着して、翼面上の境界層を乱流境界層に遷移させることではく離流 れの発生をより少なくしています。これにより翼の揚力を大きくすることがで きます。また事例1)のように球体の表面に乱流境界層が発生するようにすると 球体後面のはく離域が小さくなって、流体抵抗の低減につながります。但し、 ゴルフボールのディンプルははく離流れの低減ではなくて、回転するゴルフボー ルに伴う循環流を多くすることで揚力を増加させ、飛距離を延ばすという理解 が一般的です。

 物体周りの流れにおけるはく離流れの定義はかなり広いものですので、はく 離流れに伴う流体音と称する音にも各種あります。流れの中にある物体の後流 には反対回りの渦が交互に並んだカルマン渦列がしばしば発生します。これも はく離流れであり、この渦放出流れから発生する流体音をエオルス音と呼びま す。エオルス音を低減するためには2つの方法が代表的です。一つは干渉板を 後流中に設置してカルマン渦列の発生を抑制する方法です 。もう一つは渦の 相関長さを短くする方法です。渦列のそれぞれの渦は物体の軸方向(流れの幅 方向)に同時性を伴った或る長さを有しているので、同時性が保たれる渦の長 さ(渦の相関長さ)をより短くする(渦を崩す)と発生音の強度が低下するもので す。例えば、物体を流れ方向に傾斜させるとか、物体表面の粗さを局所的に変 えるとか、表面に微小突起を設けるなどで相関スケールを小さくします。渦列 流れではない一般的なはく離流れにおいても流れの乱れを様々な短い渦の流れ によって置き換えることができ、これらの様々な渦(乱れ)の同時性を有してい る領域が広いほどはく離流れから発生する流体音も大きくなる傾向があります。 したがってはく離流れを同時性が小さい(相関スケールが小さい)乱れの集まり にすることができれば、この流体音も低減可能です。しかし、相関がなくても 流れの乱れが存在しているのですから、発生する流体音を無にすることはでき ませんし、規則正しい渦流れを崩すことによって得られる流体音の低減効果の ような顕著な低減は期待できません。事例1)のように球体周りのはく離流れの 領域を縮小できるのであれば、強制的な乱流を与えることではく離流れ音を低 減可能と推察します。

 少し観点を変えると、「音源の密度」と「音源の広さ」の積が「発生音の強 さ」であると理解できます。「音源の密度」が流れの乱れの強さであり、「音 源の広さ」が流れの乱れの相関スケールに相当します。はく離流れの乱れを弱 めることが発生音低減のための主課題ですが、現実的な流れでははく離や乱流 を存在させないことは不可能ですので、流れの乱れの相関スケールを小さくす るように流体を制御する(乱れを強制的に与える)方法を考案するほうが、流体 音の低減には効果的であると考えます。但し、その制御のための装置が新たな 流体音の発生源になるのであれば、用いる意味がありませんので注意が必要で す。これらの定量的な関係は未解明ですが、詳細に関しては流体音と流れの乱 れとの関係を解説した、望月・丸田著「流体音工学入門」(朝倉書店)が参考に なると思います。

((株)荏原総合研究所 丸田芳幸)

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