- 手放せない会誌を目指して
- 広報・行政に関すること
- 出版等に関すること
- 工学会の活性化
- 「技術評価」等に関する課題について
- 工学会全般に関する現状の取り組み内容,今後の抱負
手放せない会誌を目指して
このコラムでは、昨年までの2年間(27巻・28巻)に、若手会員の方とベテラン会員の方から騒音制御工学会に対するご要望やご意見などを投稿いただき、紹介してきました。その中で、会誌に対するご意見も幾つかありました。それらに対する回答を兼ねて、会誌編集の現状や今後の方針などに関して、編集理事の立場から筆(?)を執ろうと思います。
会誌「騒音制御」の編集委員を2期(4年)連続して務めた後、前期から編集委員長を任せられて3年が過ぎます。15年ほど以前にも編集委員を1期務めましたので、もう既に、私は9年間も編集作業に関与したことになります。しかし、この作業に飽きたり、マンネリ化していると感じることがありません。これは、「静かな社会を実現したい」との趣旨から騒音制御工学会に入会されている会員の殆どの人が、「工学会が不要になるほど十分に静かな社会を実現できた」と感じられないことと、共通するものであろうと思います。会員の皆様にお伝えしたい騒音制御工学に関する情報が、まだ溢れるほどに存在していると考えます。この溢れるほどの情報の中から、如何にして読者に関心を持っていただき、判りやすくお伝えできるものを抽出するのかが、編集委員会の任務であると認識しています。私よりも長期に亘り連続して編集委員を務めている1名の委員は、「仕事に直ぐ役立つような特集の企画が最適である」と口癖にしておりますし、私もそのように考えています。
編集委員会には委員長の他に12名の委員が居り、2名が一組になって6組で次のような分野を分担して、特集記事の企画をしております。[騒音発生源],[騒音振動伝搬系],[音環境や感性評価],[規格と計測技術],[社会政策],[交通騒音]。もちろん、この分担に固執するものではなく、ある種の騒音に関する、発生源・伝搬経路・受音環境・計測評価方法という一環の中で騒音低減技術や関連情報を特集にする場合も有ります。過去に無かった特集、過去に発行されていても内容が大部分更新される特集等を、委員会の討議を経て選定して企画の詳細を詰めています。その場での編集の方針は、「手放せない会誌を目指して」です。学術研究をするために手放せないというよりは、騒音制御に関連する実務を進める時に、直ぐに役立つ解説や技術事例の報告および資料集等が詰った会誌が、手放せない一冊になると理解しています。編集委員の殆どが騒音制御を実務としていますので、自分が利用したくなるような内容の特集案が提案されますと、「良い企画である」、「関心を惹く特集である」等で委員会の討議が盛り上がることが多々有ります。しかし、企画した内容を執筆できる人がいるのか、という執筆候補者探しの段階で行き詰ってしまい、時期尚早として残念ながら見送る場合も時々有ります。これは、工学会の会員のニーズと同じ視点から特集を企画したいが、難解すぎる、あるいは冗長すぎる内容では会員のためにならないと判断するからです。
さて、幸いにして会誌の発行予算には最近余裕が有りますので、会員からマンネリ化した会誌であると思われないような魅力ある編集をすることを目的に、今後の会誌編集における抱負を紹介いたします。
現状の隔月発行は維持しますが、ページ数を現状の平均よりも約15%増加させ、そこへ会員からのご要望に基づく連載的な解説記事や技術資料を掲載しようと思います。例えば「技術自慢」のようなシリーズ企画を設け、世界に誇れるような国内の騒音制御技術を紹介したり、「国際会議短信」のようなジャンルを設け、会員がINTER-NOISEで発表した講演論文の概略を半ページ程度で紹介して頂こうと思います。また、図表をカラー刷りで判りやすく表現するツールも普及してきていますので、特集記事の中にはカラー刷りでないと理解できない図表も散見するようになりました。そこでこれらの図表を集めたカラー刷りの口絵ページを定常的に4ページ以内で設けることも予定しております。モノクロ印刷でも十分に理解できる図表を敢えてカラー刷りにすることは有りませんが、会誌も将来的には電子出版へと移行する流れは確実ですので、そうなればモノクロとカラーを区別することも不要です。ですからカラー図表の受け入れも必要に応じて進めようと思います。
会員から「手放せない会誌」と認められるようになることを目指して、今後も特集を中心にする編集を継続いたします。企画の対象には、「ニーズに応える特集」や「時節に適した特集」の観点から編集委員一同が、騒音制御工学に関する幅広い分野にアンテナを拡げて情報の収集に努力していきますが、会員の皆様からも企画して欲しい特集内容などをご提案いただけると嬉しいです。また、28巻6号の特集のように国際的な動向の紹介をすることも、ニーズに応える企画の一つとして、不定期ではあっても企画していきたいです。
なお、解説記事の特集が主体であっても、会員からの投稿論文の掲載も益々促進しようと考えます。特に有効性に関する査読に重みを付けることで、仕事に役立つ論文が載っている会誌として、独自性を示せるものと考えます。
(荏原総合研究所 丸田芳幸)
ページ先頭
広報・行政に関すること
この原稿では、2003〜2004年の学会誌の会員コラムに掲載させていただいたご意見、ご感想に対し担当者としての考えを述べさせていただくことにいたします。
会員コラムは、騒音制御誌の1ページを使わせて頂いておりますが、編集委員会とは別に、広報委員会がQ&Aと合わせ情報コーナーとして企画制作しています。広報委員会では、学会の広報に関すること、ホームページの運営に関すること、会員拡大に関することなどを内容とした事業を実施しています。
さて平成16年11月19日に「公益法人制度改革に関する有識者会議」から民間非営利部門による公益的な法人活動の発展を促進するための新たな仕組みについて、政府(行政改革担当大臣)に対し報告書が提出されました。
この報告書では、(1)現在の主務官庁が認可するという判断主体のあり方、(2)認可及び指導監督にあたっての判断要件のあり方、(3)組織目的をより確実に実現するために組織を方向付ける適正運営確保のあり方、(4)その他、公益性の判断に伴う主な効果、特定非営利活動法人制度との関係について述べています。
当日本騒音制御工学会におきましても特に上記(3)適正運営確保に関し、ガバナンス(適正運営)のあり方、情報開示のあり方について見直しを行い、近々予想される公益法人改革に対応しておく必要があると考えています。このような動きの中で、公益法人として事業及び財務内容を積極的に情報公開し、組織の透明性を確保する必要があることから広報委員会といたしましても積極的に関わっていくつもりです。
公益法人として対外的な情報公開につきましてはこれまで以上にいろいろな場面で実施していきたいと考えておりますが、会員相互の情報交換につきましてもっと積極的にシステム作りが必要であるとのご意見を頂いております。当学会での会員相互の情報交換の場としては、春秋に開催される研究発表会、研究部会に設置されている各分科会、4月に開催される懇談会などがあげられます。これら発表会や分科会活動につきましては当学会のHPにおきまして随時紹介しておりますが、現時点におきまして全ての活動状況を紹介するまでには至っていないのが現状です。今後は、各活動主体が積極的にHPに記事を掲載するよう働きかけていくつもりです。また、HPからメーリングサービスの申し込みができる仕組みもできあがり、当学会会員であればメーリングリストに登録することが可能です。会員の皆様へのお知らせなど学会からの情報発信に利用できます。皆様から当学会員に情報を伝えたい場合は、広報委員会宛にメーリングサービスへの情報提供のご依頼をいただければ、登録している会員の皆様へ広報、伝達することができます。
頂きましたご提言に、子供や市民向けに資料の提供や講習会を開催したらいかがというものがありました。公益法人として社会貢献が求められている現在、当学会からも積極的にそのような活動を行う必要があると考えます。かつて、環境騒音振動行政分科会では市民向け講座を開催した実績があります。この市民向け講座は単年度で終わってしまったと記憶しておりますが、今後は当学会の継続事業として会員以外の人々への普及啓発活動を考える必要があるものと考えます。
環境騒音を低減するためには、騒音に関わる知識をもつ行政担当者を育てなくてはならないとのご意見を頂きました。どのような事業を実施する場合でも言えることと思いますが、事業の立案、予算折衝、事業の実施、効果調査の過程では実施事業についての知識が必要になります。まず立案の段階で、事業の意義、必要性、予測される効果などにつき合理的な説明が求められます。いわゆる環境行政に携わっている行政担当者は、その多くを化学系の専門家が占めています。このため、環境騒音対策として立案される案件も少なくなりがちです。しかし、行政担当者も事業の必要性について団体等からの要望があれば、議会等への説明もしやすくなるという面もあり、地域が抱える問題解決のために技術協力を行うことも考えられます。現実に、ある自治体が解決に苦慮していた低周波音被害について、低周波音分科会では環境省と連携して現地調査を行い、解決への道を開いたという事例もあります。今後、問題を抱える自治体への技術支援も当学会が関わって行かなくてはならない活動と言えるでしょう。
(神奈川県環境科学センター 堀江侑史)
ページ先頭
出版等に関すること
学会誌の「会員コラム」に掲載された若手会員及びベテラン会員の方々から頂いたご意見ご希望の中から出版等に関する貴重な助言について考えてみたいと思います。
若手会員の執筆者からは,「子ども向けや一般市民向けの騒音についての啓発資料を作成する際に自由に使える資料集を作成し,学会ホームページを利用して広めることはできないだろうか。利用者からの声を基に,改訂を繰り返していけば,数年後には,素晴らしい資料集ができあがっていることであろう。」というご意見を頂きました。この中には二つのポイントがあります。一つは子供や一般市民向けとして利用者を絞った資料を編集するということ,もう一つは利用者からの声を基にフィードバックを繰り返して編集を進めるということです。
現在,審議が進められている日本騒音制御工学会のピアレビューの素案には,「出版を担当する者は,読者が求めている図書の把握に努め,適切な出版物を選択しなければならない」とあり,頂いたご意見を反映させることは,まさにこれを実践するものとなります。いきなり子供向けの出版物を作るというわけにはいきませんが,現在,一般向けの啓発書として「お話シリーズ」の編集を進めております。その一端をご紹介しますと,「バリアフリーにおける音のやくわり」,「航空機と飛行場周辺の騒音」,「低周波音とはなにか」,「不思議音のなぞ」(いずれも仮題)などです。優しく書くことほど難しいことはない,優しく書いていただくように依頼することはさらに難しい,その一方で役立つ専門書と売れる本とは違う など,念頭に置くべきことは多々ありますが,初心者の方に出来るだけ理解してもらうためのシリーズを目指しております。
これまで当学会からは多くの書籍が出版されておりますが,いずれも多数の執筆担当の方々の共著となっております。学会誌の特集号もそうですが,特集のテーマに基づく原稿の要旨を揃えることは非常に難しいといえます。書いている本人は担当の章で筆述すべきことに専念して,他章とのバランスまでは配慮しないものです。その意味でコンセプトが散漫にならないようにするためには,編集において強力なイニシアティブを発揮する,あるいは少人数による執筆をお願いすることになります。上記のお話シリーズは後者の場合に相当しています。また,これらの出版の際には,ホームページ等で紹介すると共に講習会を企画して広く説明する機会を増やすべく,広報委員会,事業部会と密接に連携をとって進めております。
事業部会では,春と秋に講習会を開催しております。ここで人気のQ&Aコーナーは,参加者から日頃疑問に思っていることや職務上課題となっていることについて質問が投げかけられます。これは,二つ目のポイントに関連しますが,この内の幾つかは,読者の共通の疑問に対する専門家による回答という形式で,学会誌及び学会ホームページの「Q&Aのページ」に掲載されています。この中で最も多く求められているのが,専門用語の解説です。
頂いたご提案のようにフィードバックを繰り返すとまではいきませんが,投げかけられた質問などを参考に,関連ある用語をまとめて一つの項で系統的に説明する「用語事典」(仮称)の出版を計画しております。近年,インターネットの検索サイトが充実しており,一般的な側面からの専門知識を敏速に探し出すことができます。しかし,その情報を基にして子引き孫引きしていく内に,画面に表示される範囲内の断片的な情報しか頭に残らないことにお気づきになるでしょう。
学生時代によく利用した専門書には,有形無形の情報サイトが張りめぐらされており,使い慣れた初版が第二版,三版と内容が更新されても買い換える気がしないものです。一つのことを調べるために,何ヵ所ものページに指を挟んで,あっちこっちと見返した経験があります。的確なキーワードさえ見いだせれば,一つの項目を見るだけで多くの知識が系統的に関連づけて得られるように関連検索を充実し,長く利用していただける専門書を提供していきたいと考えております。
ベテラン会員の方から頂いた「日本騒音制御工学会創立以来の足跡,30年の歴史資料を編纂し後世に遺して頂きたい」というご意見につきましては,すでに創立30周年記念事業企画委員会(主査: 安藤副会長)が設置されており,研究発表会に合わせ記念シンポジウム,記念出版,記念事業等の概要が検討されています。創立30周年記念歴史資料の編纂が,環境保全における音の重要性の社会的アピールに繋がるよう,編集を進めたいと考えております。
(財団法人 小林理学研究所 吉村純一)
ページ先頭
工学会の活性化
総会(平成17年5月24日)に先立って開催された評議員会の説明資料に、会員の年齢構成図がありました。正会員1256名の平均年齢は50歳で、20歳代の会員は25名、30歳代は256名、40歳代は304名、50歳代は436名です。88歳になる2名の長老を含めて60歳以上の会員は235名です。この年齢構成を見て愕然としました。来年は創立30周年を迎えますが、創立当初は20歳代の新進気鋭であった世代の会員が際立って多く、後継者が順調に育っているとは言い難い状況のようです。社会の騒音環境が依然として厳しい状況の中で、人々の環境に対する要求レベルは高くなる一方であり、今後も学術、技術、行政の3つの分野の会員がともに協力し、知恵を出し合うことが望まれています。本工学会の魅力を高め、若い会員を増やして活性化を図ることが重要と思います。
一昨年の会員コラムには、若手会員の方々、また昨年の会員コラムではベテラン会員の皆様から学会のあり方や運営方法などについて数々のご意見やご提案がありました。昨年の5月に鈴木陽一先生から研究部会長を引き継いでから1年が過ぎたところですが、これらの貴重なご意見やご提案を大いに参考にさせて頂いています。以下に研究部会での議論の一端を紹介します。
研究部会には現在14の分科会が設置されていますが、本号の研究部会報告にも記されているように、それぞれ活発な活動を行っています。ただし、冒頭に述べた高齢化の問題は各分科会の活動ではより深刻で、大学でも行政でも直接現場で手を動かせる若手の研究者や担当者が激減しており、今後の人材不足が懸念されています。この点については、「音は何故マイナーか」をテーマとする第2回の“環境騒音問題に関する懇談会”でも、種々のご意見がありましたが、研究部会では、今回、新たに分科会委員の公募を試みました。会員の皆様で、興味のある分科会がありましたら、是非、応募いただきたいと思います。また、新たな分科会の提案も大歓迎です。
「春季研究発表会」は今年の4月の発表会で第4回の開催になりました。現在、第5回の実行委員会が組織され準備が進められています。第1回の春季研究発表会は、平成14年に岩瀬昭雄研究部会長のもとに開催されています。当時は部会委員として発表会開催の議論に加わりましたが、この春季の発表会は分科会によるオーガナイズドセッション方式で行なうことが決まり、その方式は現在まで引き継がれています。これは、従来から年1回、秋に開催されていた通常の研究発表会との性格の違いを明確にすることや、分科会活動の活性化に繋がることを意図したものです。会員の皆様のご協力で、発表件数などは順調に推移しており、平成16年の発表件数は、春季が36件、秋季が84件であり、年間の発表件数が平成になって初めて100件を越えました。とはいえ、研究部会ではこの5年を一つの節目と捉え、発表会の実施運営方法の見直しの議論を始めました。現在の研究発表会については1)4つの分科会がオーガナイズを担当しており、一般の研究発表が難しい、2)4月の開催は年度初めであり参加しにくい、3)秋の研究発表会を2日ではなく3日にして、オーガナイズドセッションもそこで行うことにし、春季研究発表会は止める、4)これまで分科会ごとに行っていた分科会報告会や、技術レポートの発行が少なくなってしまった、などなどの意見があります。今年度の研究部会で春季研究発表会のあり方を検討していますので、会員の皆様からのご意見も頂ければ幸いです。
「環境騒音問題に関する懇談会」も春季研究発表会の前日に開催された今回の懇談会で第4回目を迎えました。橘秀樹前会長の提案で始められたこの懇談会は、「学会の活動方針や学会に課せられた役割などについて、自由に議論し、情報交換する場」であり、通常の研究発表会やシンポジウムとは異なる雰囲気の中でフロアからも数多くの忌憚の無い意見が述べられています。未だ出席されたことのない会員の皆様も、是非、次回は足をお運び頂きたいと思います。
第2号の会員コラムで広報委員会委員長の堀江侑史氏が学会ホームページによる情報発信の重要性を指摘されています。研究部会でもこれまでの研究発表会のプログラムなどに加えて、部会の活動内容や分科会の成果などの情報発信を積極的に進めるべく、検討を進めています。
以上、研究部会から話題提供をさせて頂きましたが、魅力ある工学会を目指して活動していますので、今後とも、お気付きの点やご提案などお寄せ頂ければ大変有難いと思います。
(名城大学 吉久光一)
ページ先頭
「技術評価」等に関する課題について
学会誌の「会員コラム」に掲載された若手会員並びにベテラン会員の方々から、貴重なご意見やご希望を頂き、その中から今回は「技術評価」等に関する課題について、現状の取り組み方や今後の抱負を述べさせていただきます。
◆認定技士
当工学会では日本騒音制御工学会認定技士(以下認定技士という)の制度を確立していて、現在,約100名の方々が認定を受け活躍しています。ところが、認定技士は国家資格ではないため、一般社会において認知度が低い点は否めません。この認知度を高めるためには種々の活動、すなわち、認定技士としてのPRをはじめ、名刺の肩書きにも認定技士である旨を記す等、認定技士としての自覚を持って活動する必要があろうことは言うまでもありません。環境省に働きかけて国家資格としての認定を望む向きの方もいらっしゃるのですが、現状の社会情勢ではなかなか難しいようです。
関連する国家資格の最たるものが、皆様良く御存知の技術士ですが、当工学会が包含している分野に関しては、適当な分野の細分化がなされておりません。対応としては重要な分野として技術士会に申し入れ,それ相応の位置付けを望むのか、独自に活躍するかということになりましょうが、いずれにしても一筋縄ではいかない問題です。地道な活動が当然必要ですが、現在,任意団体でもある認定技士の会と協力して展開する必要もあるといえましょう。
翻って考えてみますと、現在の日本では、技術や技術者が正しく評価される制度が確立しておらず、苦々しい思いをしたことは、枚挙の暇が無いほどといえます。日本的体質と言ってしまえばそれまでですが、技術者側も技術を使ってもらえばそれだけで満足といった姿勢も影響していることも事実でしょう。以下に紹介しますAPECエンジニアでは比較的しっかりこの技術評価が実現されており、今後の我々の鑑になると考えられます。
◆APECエンジニア
APEC(Asia-Pacific Economic Cooperation)エンジニア登録制度は、日本、オーストラリア、カナダ、香港、韓国、マレーシア、ニュージーランド、インドネシア、フィリピン、米国、タイの11エコノミー間で締結されました、国境を越えた技術者の自由な活動を支援する制度です。APECエンジニア相互承認プロジェクトにより、エンジニアとして承認されますと、加盟国内では同等水準の技術を有する技術者として扱われ、活動が促進されることになります。APECエンジニアとして登録できる分野は現在Civil、Structural、Mechanical、Electrical、Chemicalなど11分野がありますが、日本ではこのうち前記の5分野に関して、申請を受け付けております。但し、これらの申請に必要な国内の資格としては、今のところ技術士や一級建築士などです。
認定技士の該当分野としては“Structural”でありますが、現在のところ認定技師の資格を保有しているのみでは登録が出来ません。今後、APECエンジニア審査委員会に対して,工学会として働きかけをしていければと考えています。
◆今後の展開
今後の展開としては、工学会として地道に広報活動を展開していくことや、建築学会でも議論され、現在は多くの実績をあげている司法支援活動、さらには技術支援の保険制度なども重要な課題だと考えています。騒音振動の問題では単なる物理的な技術による解決に加え、人間感情のこじれから生ずる問題も少なくありません。そのため技術者以外に法曹界の協力も得られれば、更に強力な組織になりましょう。また保険制度とは、時には予想もしない事態により、対策効果が十分に発揮されなかったりして予想外に金銭が掛かる場合をバックアップする保険です。いずれにしても、まず認定技士が十分その任に堪えられるだけの知識、技能を保有していることを一般社会に認知してもらう事や、社会に向け多くの正確な情報を常に発信していくことなどが最優先課題と言えましょうか。
これらの問題解決には我々も真剣に考えてはおりますが、多くの方々の知恵とご尽力を期待するところも大であります。いかようなご意見でも結構ですので、お寄せいただければありがたく存じます。
(鹿島技研 安藤 啓)
ページ先頭
工学会全般に関する現状の取り組み内容,今後の抱負
3年間にわたり,騒音制御工学会の将来について様々な角度から御意見を頂戴しました。このコラム自身の役割が十分に発揮できているものと思います。学会を運営する側としてもこれらの貴重な意見を元にして学会の将来設計に反映させて行きたいと思います。今回は工学会全般に関する現状の取り組み内容,今後の抱負等を述べさせて頂きます。
◆公益法人改革に向けての準備状況
すでに広報委員長の堀江氏からこの欄で御紹介がありました通り,政府では公益法人改革を推進するための立法化が進んでいます。近い将来,新たな法律のもとで民間非営利法人として騒音制御工学会の存在が根拠付けられることになります。その際,非営利法人に要求されるのは,公益性の確保,自律性の向上,情報開示による透明性の向上,ガバナンスの強化です。平ったく言えば,規律正しく,公益性の高い事業を行いなさいということです。このような方針に対応するために,現在,運営のためのルールの整備を行っています。すなわち,実情にそぐわない規則をいくつか廃止すると共に,規律正しい運営をするための諸規則の新設を順次行っています。例えば公益性の高い法人である学会として,倫理に関する意思表示をするための「倫理綱領」,「ピアレビュー倫理綱領」の制定,工学会の運営組織の役割等を明確にする「組織および運営に関する規程」の改正,受託事業全般管理を定める「受託事業規程」の制定,事務局の運営に関する「事務処理規則」,「職員就業規則」,「会計規則」などの制定を行っています。まだ審議中のものもありますが,平成18年度が開始される頃には新たな法律に述べられる非営利法人としての要件をすべて満足出来るようになるよう鋭意努力を続けております。また,平成18年度より会計方式や財務諸表の作成方式が変わりますので,新たな税理士さんの指導のもとそれに対処すべく努力をしているところです。
◆工学会の社会貢献について
かねてより騒音制御工学会の社会的認知度が低いといわれていました。認知度を向上させるためには,社会貢献というものが必要です。また,公益性の確保,すなわち不特定多数の人々への利益を図る意味でも社会的貢献は必要です。好運なことに近年は環境省から数多くの委託調査を受けており,工学会として真剣に対処しています。特に最近は,将来の環境行政に対する意志決定のベースとなる科学的データの収集や検討をすることが増えており,この意味で学会としての社会的貢献が着実に行われていると考えています。
◆国際化が図られているか?
この5年間位にI-INCEやinternoiseではGlobal Noise Policyという考え方が盛んに議論されるようになりました。それは,「騒音を排出する機械や装置は一つの国で作られて,その国の中だけで使用されるのではなく,多くの国々で製作され,それらが輸出・輸入されて多くの国の騒音問題に結びついている。そうすると騒音を規制するには国境を超えて多国間の問題としてとらえなければならなくなる」ということです。既に一部の製造企業の方々は感じられていると思いますが,EU(欧州共同体)内に機械・装置を輸出するためには,一定の騒音基準以下でないとダメという規制がかかっています。これは裏返せばEUに貿易上の非関税障壁が発生していることにもなるのです。従って,今や騒音問題と言うのはローカルではなく世界的問題として考えなければならないということです。むろん,これは機械・装置だけの問題ではなく,環境騒音問題全体に対する取り組みに大きく関与することになります。
工学会が取り組むべき問題は,国内の騒音だけでなく国際的な騒音問題の取り組みということになります。しかし,現在,工学会内では国際的議論とはやや離れたローカル問題だけに集中しているように思われます。それはそれで意味のあることとしても,日本の産業の持続的発展を願うならば,工学会内にも国際情報の収集と分析,意見の提示を図る組織が必要であると考えています。特に,I-INCEの中の議論では,Global Noise Policyというものを策定するには,ヨーロッパ,アメリカ,日本の協力が必要であるとしていますので,海外における一層の協力が必要と思われます。
◆おわりに
このコラムは工学会の将来を考える上で非常に役立っていると思います。まだまだ工学会にはやるべき仕事がたくさん残っていますが,ものごとは一朝一夕にはなし得ないので,徐々に良い方向に進みたいと考えている次第です。会員の皆様の御協力を今後とも宜しくお願いしたいと思います。
(小林理研 山本貢平)
ページ先頭
情報コーナーでは,皆様の声をお待ちしています。会員コラム,Q&Aにご意見,ご質問をお寄せ下さい。
(社)日本騒音制御工学会 情報コーナー係
TEL. 03-5213-9797
FAX. 03-5213-9798